抄録
長期臥床患者の看護ケアーにおいて,褥瘡予防は最も重要な課題の一つである。褥瘡は皮膚の長時間圧迫により起こると言われ,その予防には,体位変換の検討が必要とされる。現在体位変換は,2時間おきに行なうべきであると報告されているが,それは科学的実験に基づくものではなく,単に臨床経験に基づくものであると考えられる。そこで体位変換時間の基礎的検討を,家兎耳翼を用いて次の3種の実験をもって行った。
ⅰ) 人体の体圧分布
ⅱ) 人体の高圧部位及び家兎耳翼での皮膚阻血の検索
ⅲ) 家兎耳翼における圧迫による組織障害
人体の体圧分布での加圧の中心は,褥瘡好発部位に一致して見られた。加圧の中心での皮膚脈流は約100~150g/cm2(70~110mmHg)で消失した。又家兎耳翼での皮膚脈流は,約70g/cm2(50mmHg)で消失した。家兎耳翼での45~50mmHg,4時間及び65~70mmHg,2時間~4時間において明らかな顕微鏡的変化が見られた。又1時間開放においてもその修復所見は見られなかった。