1984 年 7 巻 4 号 p. 4_17-4_22
タバコ主流煙が胎児の腎,肺細胞に及ぼす影響を知る為に,鶏胚の腎,肺細胞をタバコ主流煙抽出液(TS),ニコチン水溶液(NI)を含む培養液中で培養し,細胞数の変化を計測した結果,以下の知見を得た。
① 腎・肺細胞ともに,TS投与の方がNI投与より細胞増殖に対する抑制効果が大きい。
② 肺細胞に対するTS投与の与える抑制効果は,肺細胞のcell cycle上の特定の時期がTS投与に対して感受性を持つ結果として現われる可能性がある。また,TSに対して感受性を持つこの時期は,NIに対して感受性を持つ時期と異なると思われる。
③ 腎細胞に対するタバコ主流煙の増殖抑制効果は,ニコチン以外の成分によって起こると考えられる。
以上のことから,タバコ主流煙やニコチンの影響は細胞種によって異なり,タバコ主流煙中のニコチン以外の成分が細胞,そして胚に対する影響を検証するのには腎細胞を用いることが有効であると思われる。