2011 年 31 巻 1 号 p. 33-40
症例は58歳女性.胸部異常陰影を主訴に受診.胸部CTで左肺上葉上区に約40 mmの腫瘤状陰影と肺門・縦隔リンパ節腫脹を認めた.血中ACE・腫瘍マーカーは正常で,QFT陰性.経気管支肺生検で壊死を伴う類上皮細胞肉芽腫とわずかにZiehl-Neelsen染色陽性所見を認め,肺結核と診断しHREZ 4剤による治療を開始.しかし抗結核剤治療中及び治療終了後も腫瘤影は増大.肺癌を否定できないため初診から約1年2カ月後に左肺上葉切除術を施行.病理所見ではラングハンス型巨細胞の浸潤と高度な壊死を伴う肉芽腫病変で,肉芽腫内に巨細胞性血管炎の所見を認め,壊死性サルコイド肉芽腫症(Necrotizing Sarcoid Granulomatosis)と診断した.Propionibacterium acnes抗体(PAB抗体)による免疫染色では肉芽腫内に多数の陽性所見を認めた.アクネ菌はサルコイドーシスの原因菌候補と考えられており,このことはNSGがサルコイドーシスの一亜型であるとする考えを支持するものと考えられた.