日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
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千葉保之・本間日臣記念賞講演
心臓サルコイドーシスに合併した不整脈の臨床研究
草野 研吾
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2015 年 35 巻 Suppl1 号 p. 28

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抄録

サルコイドーシスは原因不明の非乾酪性の肉芽腫性疾患であり、組織の炎症と引き続いて生じる線維化 が疾患の主座である。これらの組織学的変化は、心臓にとってはいずれも催不整脈的に作用することか ら、致死的な不整脈発生にとって極めて重要な変化である。一方近年、不整脈への薬物・非薬物治療は 格段の進歩を遂げている。そこで、これらの内科的治療実態と新しい治療の効果について全国植込み型 除細動器認定施設を対象にアンケート調査を施行し最近の内科治療のトレンドと有効性・問題点を調査 した。さらに、房室ブロック・心室頻拍合併例の臨床的特徴について今まで単施設で行ってきた研究を 紹介する。1.全国実態調査 2008 年から2009 年にかけ43 施設から316例のアンケート結果を集め190 名の確定診断の症例を得た。 平均5.1年の follow期間で植込み型除細動器によって24 例(13%)の症例に除細動器作動が確認され救命 されていたが、8 例の突然死、4 例の心不全死を認めた。心機能の程度に応じて、心室細動/心室頻拍が 生じていることが明らかとなり、左室駆出率<35%は、2 次予防としてだけでなく、1 次予防としても心 室細動/心室頻拍の発生に関与していることが示唆された。カテーテルアブレーションは 20 例に施行さ れアブレーション困難例が多く存在することが明らかとなった。心室細動/心室頻拍に対する抗不整脈薬 の有効性に関してはアミオダロンの有用性が示された。2.房室ブロックに関する後ろ向き研究 ガリウム(Ga)シンチ陽性で表現される心臓サルコイドーシス活動期に房室ブロックの発生が多く (80%)、副腎皮質ホルモンの使用による Ga シンチの陰転化と平行して房室伝導性の回復が認められた (56%)が、副腎皮質ホルモン使用による心室性不整脈のエピソードに変化は認められなかった。心臓 サルコイドーシスの活動性が房室ブロックの発生に強く関連し、ステロイド治療への反応例が多く存在 すると考えられた。 また高度房室ブロック初発の心臓サルコイドーシス例を心室頻拍/心不全初発例と比較すると、心イベン ト全体では房室ブロック例の方が少なかったが、心室細動/持続性心室頻拍の発生だけをみると同等であ り、臨床的に高度房室ブロックのみの場合でも、ペースメーカよりも植込み型除細動器の選択を考慮す べきではないかと考察した。3.心室頻拍に関する後ろ向き研究 電気生理学的検査にて心室内の異常電位は左室のみならず右室にまで広範に存在すること、心室頻拍の 期限は異常電位の部位に一致したが、特に心室瘤の周囲に認められることが多いこと、加算平均心電図 では、より強い遅延電位が認められた。心機能低下例に有意に心室頻拍が多いことを考え合わせると、 障害心筋を介したリエントリーがその機序として考えられ、サルコイドーシスの活動期よりもむしろ線 維化を生じる慢性期(非活動期)に発生する可能性が高いことが示唆された。

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