抄録
ピロカルピン塩酸塩(サラジェン錠®)はシェーグレン症候群患者の口腔乾燥症に対してしばしば用いられるが,副作用のために服用が中断されることが少なくない。われわれはシェーグレン症候群患者26例(男性2例,女性24例,年齢40~85歳,平均年齢63.9歳)を対象として,本剤の漸増投与法によるコンプライアンスと臨床効果を検討した。まずピロカルピン塩酸塩を7.5mg/日(3分服)で開始し,4週間後から通常量15mg/日へ増量して12週までの完遂率を調べた。この結果,4週までに3例,4週以降に4例の計7例が副作用のために内服を中止した。本法による完遂率は全体で73.1%(19/26例),常用量に上がった23例に限ると82.6%(19/23例)であった。12週間の内服を完遂した患者では,88.9%の患者に唾液分泌量の増加を認め,さらに半数以上で口腔乾燥感,自覚症状,他覚所見が改善と判定された。漸増投与法では半量投与の段階で内服中止例がみられたものの,常用量まで上げることができれば十分なコンプライアンスが得られる。半量投与時の副作用対策により中止例を減らすことが今後の課題である。