日本口腔内科学会雑誌
Online ISSN : 2186-6155
Print ISSN : 2186-6147
ISSN-L : 2186-6147
原著
口腔に初発した粘膜類天疱瘡と尋常性天疱瘡の臨床的特徴
大島 麻耶遠藤 弘康田中 茂男丹羽 秀夫久山 佳代
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 30 巻 2 号 p. 49-58

詳細
抄録
自己免疫性水疱症である粘膜類天疱瘡(MMP)や尋常性天疱瘡(PV)は口腔が初発部位である場合が多く,歯科医が最初に遭遇することがしばしばある。両疾患は初期治療が遅れると重症化する場合があり,口腔内病変から迅速に診断する必要がある。しかし,疾患の稀少性から診断が遅れる傾向にある。そこで,本研究では初発と考えられる口腔症状から一早くMMPまたはPVを診断に導くことができるよう,口腔内所見に限定して臨床的特徴を検討した。2001年~2021年間で口腔内症状を主訴に当院を受診した59例(MMP 27例,PV 32例)を対象とした。その結果,すべての対象症例が口腔に初発したMMPとPVであった。病変は歯肉に55例(93%)と最も多く,病態は剥離性歯肉炎の症状を示した。歯肉以外の病変は27例(46%)に認められ,MMP 7例(26%),PV 20例(63%)であった。口腔内病変が歯肉1部位のみはMMP 20例(74%),PV 12例(38%),3部位以上はMMP 1例(4%),PV 11例(34%)であった。以上より,本研究では口腔に発症したMMPとPVでは歯肉病変が最も多く,剥離性歯肉炎の症状を示した。また,MMPでは口腔内病変が歯肉に限局し,歯肉以外の発症は少数であるのに対し,PVは歯肉に加えて他の口腔粘膜にも多発する傾向があり,広範囲の口腔粘膜に影響を及ぼしていることが示唆された。これらの臨床的特徴を活かし,剥離性歯肉炎の症状がみられる患者にはMMPあるいはPVを鑑別診断に挙げ,病理組織学的および免疫学的検査を行うことが推奨されると考える。
著者関連情報
© 2024 日本口腔内科学会
次の記事
feedback
Top