日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
報 告
指圧が筋の伸張性に及ぼす影響
―足関節固定時、非固定時での比較―
中村 研太郎内山 裕介中井 亮松永 孝治濱田 淳和田 恒彦宮本 俊和徳竹 忠司
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キーワード: 指圧, , 伸張性, 足関節固定
ジャーナル オープンアクセス

2015 年 40 巻 2 号 p. 121-126

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抄録

【目的】筋の柔軟性の改善に有効な方法としてストレッチがある。ストレッチは関節運動により筋を伸張させ、指圧は圧迫刺激により筋を局所的に伸張させる。つまりストレッチと指圧は筋を伸張させる点で共通するといえる。そこで我々は筋への指圧がストレッチと同等の効果を得ることができるのではないかと考えた。指圧で効率的に筋を伸張させるには、筋の起始・停止間距離をできるだけ遠ざける必要がある。本研究で我々は下腿三頭筋に圧刺激を加える際に足関節を固定した場合としなかった場合を比較し、筋の伸張性が向上するかを明らかにする。
【方法】健康成人男女33名(30.3±8.4歳)を介入群と無刺激群の2群に割り付け、介入群と無刺激群の比率は2対1とし、介入群はさらに足関節固定群と非固定群の2群に割り付けた。介入群の下腿三頭筋筋腱移行部に対し、あん摩マッサージ指圧師有資格者が手根圧迫にて1分間の介入を行った。筋柔軟性の指標として、足関節最大自動背屈によるROM、足関節最大他動背屈によるROM及び他動背屈時の伸張痛のVASを介入前後で記録した。
【結果】足関節固定群、足関節非固定群の両群間でROMの変化量及び下腿三頭筋の伸張痛のVASは統計上の有意な差は認められなかったが、固定群の他動背屈ROMの変化率に着目すると、固定群は非固定群に比較して2.6%の増加がみられた。
【考察】本研究で我々は研究対象者を健康成人のみとしたが、伸張性の変化を見ることを研究の目的とするならば、対象者を下腿三頭筋に伸張性の低下がみられる者とするのが適切である。また、足関節を固定する際、特別な固定器具を使用していなかった。そのため、十分に関節が固定されず、指圧と共に足関節が動いた可能性がある。足関節を確実に固定できる器具を使用することで変化量の違いを得られると考える。
【結語】健康成人の下腿三頭筋に指圧を加える際に足関節を固定し、固定しなかった場合よりも筋の伸張性を向上させるかについて検討したが、足関節のROM及び下腿三頭筋の伸張痛の VASに統計上の有意な差はみられなかった。足関節固定群、足関節非固定群の他動背屈 ROM の変化率を比較すると、固定群は非固定群に比べて2.6%増加した。

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© 2015 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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