日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
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急性腰痛に対する指圧療法の効果
木下 誠菅原 正秋坂井 友実
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2015 年 40 巻 2 号 p. 117-120

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抄録

【目的】我々は、これまで腰痛に対する指圧療法の効果を関連学会において報告してきた。今回は、腰痛が日常生活に与える影響を定量化する尺度である Roland-Morris Disability Questionnaire 日本語 JOA 版(以下、RDQ)を主な指標として急性腰痛に対する指圧療法の効果を検討したので報告する。
【方法】対象は、2005 年 1 月~ 2014 年 10 月までの約 10 年間に当治療院を訪れた下肢症状を有せず、発症から 4 週間未満の急性腰痛患者 56 名のうち、経過が追跡可能であった 29 症例(男性 17 名、女性 12 名、平均年齢 58.5 ± 13.8 歳)とした。指圧施術は週 1-2 回の頻度で腰下肢を中心に、一人あたり約 1 時間行った。治療効果の判定には、疼痛の Numerical Rating Scale(以下、NRS)とRDQ を用いた。
【結果】症例の平均罹病期間は 11.8 ± 10.7 日、平均施術回数は 4.4 ± 2.9 回であった。症例の平均RDQ スコアは、初診時 7.2 ± 4.4 点であったが、治療終了時点では 2.1 ± 2.5 点と有意な改善を示した(P<0.001)。症例の年齢と初診時 RDQ スコアの間には相関性はみられなかった(R2=0.019,P=0.474)。また、初診時 NRS は 5.1 ± 1.9 点であり、治療終了時点で 1.6 ± 1.4 点と有意な改善を示した(P<0.001)。
【考察】今回対象とした 29 名の腰痛患者の多くは医療機関での診察や検査を受けておらず、原因疾患の違いによる効果の検討はできなかった。RDQ スコアは、平均 4.4 回の施術で改善を示したが、治療間隔は統一できていなかった。しかし、NRS の値は、RDQ スコアと並行して改善の方向に推移を示した。以上のことから、指圧施術が疼痛に対して奏功し、RDQ スコアを改善したものと考えられた。

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© 2015 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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