【目的】機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia: FD)の有病率は高く、世界全体では20.8%とされ、QOL を低下させ、労働生産性にも影響を与える重要な疾患である。しかし本邦においてFD を対象とした鍼治療の臨床研究は極めて少ない。本研究では、FD に対する鍼治療に関する臨床研究の現状を調査し、今後の課題を検討することを目的に文献レビューを行った。
【方法】分析対象論文の包含基準は、FD に対する鍼治療の臨床研究であり、国内外において2006年の1 月1 日から2022 年12 月31 日に発表された原著論文とした。国内文献は医中誌Web、海外文献はPubMed を用いて検索した。
【結果】包含基準を満たす論文は国内0 編、海外26 編であった。内訳はFD 患者全体の研究が16 編、サブタイプ別患者の研究が10 編であった。後者の内9 編がサブタイプである食後愁訴症候群(Post‒prandial distress syndrome: PDS)のみを対象としており、1 編はPDS と心窩部痛症候群(Epigastricpain syndrome: EPS)に関する研究であった。また、海外26 編中、25 編で鍼治療の有効性が示されていた。使用経穴は、FD 患者全体の研究/PDS 患者のみの研究の別を問わず、足三里、内関、中脘、公孫が頻用されていた。
【考察】海外では鍼と薬剤の併用治療の有効性が報告されており、併用療法は本邦においても最も実臨床に即した治療法である。対象論文の内、PDS 患者のみを扱った論文は近年急増し、本邦、海外共に患者数はPDS が大半を占めている。過去の国内外の研究では、PDS は過敏性腸症候群との関連が深く、合併による消化不良症状の重症化傾向が指摘される一方、海外においてPDS に対する鍼治療の有効性を認める報告は多い。以上より、本邦においてもPDS を対象とした研究が望まれる。
【結語】今後は海外での知見が本邦にも適用し得るかを検証するため、本邦のPDS 患者を対象とした、鍼と薬剤の併用による質の高い臨床研究を推進しなければならない。
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