日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
文献レビュー
鍼臨床における皮膚疾患有害事象に関する文献レビュー
古瀬 暢達山下 仁
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ジャーナル オープンアクセス

2019 年 44 巻 2 号 p. 97-106

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抄録

【目的】鍼臨床における皮膚疾患有害事象に関する文献を調査し、鍼治療の安全性向上のための方 策を検討した。
【方法】医中誌Web およびPubMed を用いて、国内鍼臨床における皮膚疾患の有害事象(因果関係 を問わず治療中または治療後に発生した好ましくない医学的事象)症例報告を検索した(2019 年 6 月検索)。対象期間は1980 年以降とした。
【結果】33 文献44 症例が収集された。埋没鍼が原因のものは、局所性銀皮症17 文献22 症例、亜 急性痒疹1 文献1 症例、色素沈着1 文献1 症例であった。患者の体質(基礎疾患や金属アレルギー 等)が原因と考えられるものは10 文献12 症例であった。その他、直流鍼通電による色素沈着、 悪性黒色腫、不適切な治療(医師による注射針を用いた刺絡療法)によるアトピー性皮膚炎の悪 化、有棘細胞癌があった。年代別では、1980 年代が9 文献11 症例、1990 年代が12 文献18 症例、 2000 年代が10 文献13 症例、2010 年代が2 文献2 症例であった。
【考察】今日では禁止されているが、過去に行われた埋没鍼が原因の局所性銀皮症が約半数と大き な割合を占めていた。重篤な症例として、皮膚癌が2 例報告されていたが、常識の範囲外の長期間・ 過剰な治療によるものと、時系列の一致のみで因果関係に関する記載のないものであった。また、 患者の体質に由来する皮膚病変が少なからず報告されていた。金属を体内に刺入するという鍼治 療の性質上、金属アレルギー等の副作用を引き起こす可能性を完全に排除することはできない。 事前に皮膚疾患の既往がないかを確認するとともに、患者に皮膚症状が現れた場合は治療を中止 し専門医への受診を勧めるべきである。年代別では、2010 年代の症例報告数が特に少なかった。
【結語】近年、鍼治療後に発症した皮膚疾患の報告は減少していた。これらの症例から学び、卒前・ 卒後の安全教育に反映していくことが重要である。

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© 2019 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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