抄録
難治性のfailed back surgery syndrome(FBSS)に東洋医学的アプローチである遠絡療法が有効であった1症例を経験した.症例は39歳の男性で,腰椎椎間板ヘルニアに対し,計3回の手術を受けたが,腰痛と両側坐骨神経痛は次第に増強し,歩行困難となった.痛みは視覚的アナログ疼痛スケール(VAS)で9-10 cmであった.仙骨硬膜外ブロックは無効であり,オピオイド,抗うつ薬,抗けいれん薬,抗不整脈薬,プロスタグランジンE1,ケタミンなどの効果は乏しかった.坐骨神経ブロックと直流不変電流通電の鎮痛効果も2~3日程度で消失した.発症から6年2カ月後に遠絡療法を行った.遠絡療法の終了時,安静時痛が初めて消失し(VASで0 cm),歩行しても痛みはほとんど生じなかった(VASで0.5 cm).1回3~5分程度の遠絡療法を2回/月の頻度で,計9回施行した後に,痛みは次第に増強しなくなり,鎮痛薬を使用することなく,痛みは視覚的アナログ疼痛スケールで,0-2 cmで経過し,杖なしで歩行が可能となった.遠絡療法はFBSSに対して有効な治療となる可能性がある.