抄録
われわれは,脊髄くも膜下麻酔後に多彩な神経症状を訴えた症例に,転換性障害が考えられたので報告する.42歳女性で,脊髄くも膜下麻酔で子宮鏡下ポリープ切除術が予定された.しかし,脊髄くも膜下麻酔で十分な麻酔域が得られなかったので,全身麻酔に変更した.術後,離握手,膝関節の屈曲・伸展,右足関節の背屈・底屈は可能であったが,脊髄くも膜下麻酔4時間半後より手足に力が入らないとの訴えとともに,上下肢の運動神経障害,下肢のみの感覚神経障害を訴えた.一時,第3頸髄レベルまでの感覚神経障害を訴えたが,呼吸や循環動態の変動はなく,時間の経過とともに神経症状は消失した.