日本ペインクリニック学会誌
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総説
脊髄損傷後の神経障害痛の治療:現在と未来
Philip J. Siddall重松 研二比嘉 和夫
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2010 年 17 巻 2 号 p. 125-133

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抄録

目的:脊髄損傷後の神経障害痛の問題について現時点での理解と近い将来可能になると思われる治療法を紹介する.
資料:痛みと脊髄損傷に関する原著,総説,書籍の章.
資料の統合:脊髄損傷後の神経障害痛は,痛みがどのように起こるのかという従来の概念だけでなく,最近の痛みの概念にとっても,直面している問題である.脊髄損傷後の神経障害痛に共通する痛みの型の同定,有病率と痛みの特徴の特定,脊髄損傷後の神経障害痛に関与する神経系統の病態生理学的変化の研究,治療の研究は,確実に進歩している.しかし,大きな問題が残っている.脊髄損傷後の痛みの分類での見解の統一が必要である.末梢神経,脊髄,脳の変化の機序,痛みへの関与は完全に解明されていない.特に,脊髄損傷後の神経障害痛の有効な治療の研究はほとんどなく,痛みの生物学的,心理学的要因に対する治療は統合されていない.
結論:最近の研究は,選択的作用の薬物,神経刺激療法,痛みを修飾させる認知療法などで,痛みが軽減する可能性を示唆している.新しい治療法と問題の理解が深まっており,脊髄損傷後の神経障害痛の治療が近い将来発展することが期待されている.

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© 2010 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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