日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
Print ISSN : 1340-4903
ISSN-L : 1340-4903
症例
抑肝散加陳皮半夏が有効であった舌痛症の1症例
北島 美有紀境 徹也樋田 久美子澄川 耕二
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 17 巻 4 号 p. 491-493

詳細
抄録

明らかな原因を発見できない口腔内灼熱感のうち,痛みが舌に限られるものが舌痛症と定義されている.心理的要因が関与しているとされるが,発症の原因は不明である.今回,漢方薬の抑肝散加陳皮半夏(エキス製剤7.5 g中に半夏5 g,蒼朮4 g,茯苓4 g,川きゅう3 g,釣藤鈎3 g,陳皮3 g,当帰3 g,柴胡2 g,甘草1.5 gを含む)により痛みが軽減した舌痛症の1症例を報告する.患者は82歳の男性で,4年前に脳梗塞を発症し,その約1年後から舌の痛みが出現した.歯科で口腔内の器質的障害は否定されていた.脳梗塞の後遺症で歩行障害があり,患者はいらいら感や胃部不快感を訴えていた.また,舌に何か異常があるのではないかという不安を持っていた.漢方的診察により得られた証に随って,抑肝散加陳皮半夏7.5 g/日を開始した.内服開始7日後には,痛みの程度は数値評価スケールで8/10から4/10に軽減し,範囲も半減した.患者の証に沿った漢方薬の選択が,難治であった舌痛の緩和に繋がった.

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
前の記事 次の記事
feedback
Top