日本ペインクリニック学会誌
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症例
脊髄虚血が疑われた硬膜外ブロック後の下肢運動麻痺の1症例
米本 紀子森本 昌宏白井 達岩元 辰篤柴 麻由佳
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2012 年 19 巻 4 号 p. 531-534

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抄録
硬膜外ブロック施行後に,脊髄虚血,くも膜下出血,硬膜外血種の発症をみた.ブロック施行5時間後,突然の腹痛と進行する両下肢麻痺を自覚し救急外来を受診したが,MRI上硬膜外血腫による脊髄圧迫所見はなく,髄膜嚢胞内の血液貯留よりくも膜下出血が疑われた.腹痛発症5時間後には腹痛と下肢の脱力感は軽快し帰宅した.
2日後に両下垂足が残存していたため胸腰椎MRIを撮影したところ,複数箇所にわたる少量の硬膜外血腫とくも膜下出血,Th12~L1レベル脊髄内の虚血様変化を確認した.また頭部CTでも少量のくも膜下出血が疑われた.25日後,MRI上硬膜外血腫や脊髄の虚血様変化,くも膜下出血は消失したが下垂足は残存した.
本症例では脊柱管内の血流変化により出血性静脈梗塞を生じたと考える.発症早期の脊髄虚血はMRIでの診断は困難であるが,拡散強調像では陽性所見がみられるので脊髄虚血を疑う場合には必要と思われる.
頻度は少ないものの,硬膜外ブロック施行時にはこれらの合併症の出現に留意し,神経症状を慎重に評価すべきと考えられた.
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© 2012 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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