日本ペインクリニック学会誌
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総説
腕神経叢ブロック—局所麻酔薬の薬物動態と全身毒性,およびその治療法—
小田 裕
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2014 年 21 巻 2 号 p. 81-85

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抄録
腕神経叢ブロックには,ロピバカインやラセミ型ブピバカイン(ブピバカイン),レボブピバカインなどの長時間作用型局所麻酔薬が多用されるが,これらは毒性が強いため,その使用にあたっては基本的な薬物動態を理解するとともに,中毒症状の発現に注意する必要がある.健康成人に対してロピバカインまたはブピバカインを持続静脈投与すると,70~160 mg投与後に明らかな視覚・聴覚障害や構音障害などの中枢神経症状が生じ,その際の血中総分画・蛋白非結合分画濃度,蛋白結合率は両麻酔薬間で差がない.また中枢神経症状発現時には末梢血管抵抗の増加による血圧上昇および心拍数の増加が認められる.腕神経叢ブロック後15~30分間で局所麻酔薬の血中濃度はピークに達するが,斜角筋間アプローチの場合は腋窩・鎖骨下アプローチに比べて血中濃度の上昇がより速く,最高血中濃度も高い.アドレナリンの添加により血中濃度の上昇は抑制されるが,作用時間は必ずしも延長しない.局所麻酔薬投与後に,興奮や痙攣などの中枢神経症状,徐脈・頻脈・不整脈などの心血管症状が認められた際には,気道確保に加えて酸素や抗痙攣薬とともに,早期の脂肪乳剤の投与が有効である.
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© 2014 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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