日本ペインクリニック学会誌
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症例
斜角筋間ブロックにより右前腕打撲後の上肢CRPSの痛みが軽減した1症例
古谷 友則加藤 実鈴木 孝浩
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2015 年 22 巻 4 号 p. 525-528

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抄録

症例は38歳,男性.4年前転倒し打撲した左膝に複合性局所疼痛症候群(complex regionalpain syndrome:CRPS)を発症し,脊髄電気刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)により寛解中,転倒し右前腕の打撲により右上肢CRPSを新たに発症した.薬物療法のみでは痛みは軽減せず,超音波ガイド下右斜角筋間アプローチ腕神経叢ブロックを併用し治療を行った.自発痛の低下など即時効果に加えて,手関節と指関節の可動域改善と,持続的な鎮痛効果が得られた.2回施行後に理学療法を開始,4回施行後に持続痛とアロディニアの消失,筋力改善を認めた.握力と可動域が改善し,日常生活において右手を使えるようになり通院終了となった.当症例では,痛みのため早期の理学療法の介入が困難だったが,神経ブロックにより痛みの軽減が得られたことで理学療法の介入が可能となった.また,末梢神経ブロックにより持続的な前腕からの痛みによる一次侵害求心性入力を遮断することで,中枢感作の改善が得られ,持続的な痛みの軽減が得られたと考えられる.

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© 2015 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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