日本ペインクリニック学会誌
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症例
肘部管症候群に対する神経移行術後に生じた難治性瘢痕痛の1症例
中村 里依子行木 香寿代松井 美貴山本 悠介石川 貴洋子佐伯 茂
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電子付録

2016 年 23 巻 1 号 p. 49-52

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抄録
症例は28歳,男性.肘部管症候群に対する手術後10カ月が経過しても創部周囲の痛みが改善しないため,当科受診した.初診時,手術瘢痕部とその周囲にしびれるような鋭い動作時痛があり,日常生活や仕事にも支障をきたしていた.ジセステジア,アロディニアのため皮膚に触ることもできなかった.患者は強い医療不信を抱いていたため非侵襲的治療から段階的に治療を進めていくこととした.最初に,直線偏光近赤外線照射,プレガバリンの内服を開始したが効果はなかった.そこで,メキシレチンの内服を開始したところジセステジアが軽減した.末梢性過敏を抑制するため,9%リドカイン軟膏を塗布したところ症状はさらに軽減した.患者—治療者の信頼関係が得られた段階で,腕神経叢ブロックを0.25%レボブピバカインで施行したところ約24時間の無痛が得られた.2回目以降はブロックで無痛状態が得られた段階でアロディニアが最も強い瘢痕部に0.25%レボブピバカイン6 mlを浸潤した.これにより,ブロックの効果が消失した状態であっても,今まで触ることができなかった前腕尺側部に触ることが可能となり,衣類の着脱も容易となるなどADLの著明な改善が得られた.
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© 2016 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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