日本ペインクリニック学会誌
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症例
神経学的評価と神経ブロックの効果から梨状筋症候群と臨床診断し手術で確定診断を得た右臀部痛の1例
清水 雅子佐藤 八江中本 あい吉川 範子大平 直子立川 茂樹
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2016 年 23 巻 1 号 p. 45-48

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抄録
62歳,男性.自転車で転倒打撲後より体動時に右臀部痛が出現し,痛みで歩行困難になった.X線写真,CT,MRI,骨シンチグラフィで骨折や骨盤内腫瘍はなく,右L4/5椎間孔に軽度狭小があった.Freiberg testとPace testはともに陽性であった.冠動脈狭窄に対する抗血小板薬の内服継続が必要なため,消炎鎮痛薬内服やトリガーポイント注射で加療したが効果はなかった.梨状筋症候群の診断を目的に右坐骨神経ブロックを行ったところ,右臀部痛が著明に軽減した.右L4神経根ブロックでも同様の効果であったが右L4/5椎間孔に造影剤の通過障害はなく,梨状筋症候群と臨床診断した.抗血小板薬は周術期のみ休薬し,全身麻酔下に右梨状筋切離術を施行した.術直後から右臀部痛は軽減し,その後再出現することなく退院した.梨状筋症候群は坐骨神経が生理的狭窄部位である梨状筋部で圧迫を受けて生じるが,腰椎疾患や骨盤部腫瘤性疾患との鑑別が必要である.本症例は,身体所見と複数の神経ブロックによる評価で梨状筋症候群と臨床的に診断し,手術で痛みは軽快した.
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© 2016 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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