日本ペインクリニック学会誌
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症例
頸髄損傷患者の肩関節手術において超音波ガイド下持続肩甲上神経ブロックおよび腋窩神経ブロックが有用であった1症例
佐藤 慎笹川 智貴小野寺 美子国沢 卓之
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2016 年 23 巻 1 号 p. 37-40

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抄録

今回われわれは,頸髄損傷の既往を持つ患者の肩関節手術に対し,周術期の鎮痛法として超音波ガイド下持続肩甲上神経ブロックおよび腋窩神経ブロックを施行し,周術期管理を行った症例を経験した.患者は交通外傷による頸髄損傷のため両上肢の母指先端にしびれを訴え,両横隔膜の軽度拳上と拘束性換気障害を認めていた.この患者に関節鏡視下肩関節唇縫合術が予定され,全身麻酔に超音波ガイド下持続肩甲上神経ブロックおよび腋窩神経ブロックを併用した.薬液には0.5%ロピバカインを選択し各部位に15 ml投与した.全身麻酔は気管挿管を行い,セボフルラン,フェンタニル,レミフェンタニルで適宜維持した.術中の循環動態は安定し帰室直後のnumerical rating scale(NRS)は2で,術後著明な悪化を認めなかった.横隔神経麻痺は発生せず,上肢のしびれの増悪や運動制限も認めなかった.頸髄損傷患者の肩関節手術に対して超音波ガイド下持続肩甲上神経ブロックおよび腋窩神経ブロックは,他のアプローチのような合併症を認めず安全に施行可能であり,痛み管理に有用である.

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© 2016 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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