抄録
がんによる痛みの管理は,世界保健機関(WHO)方式がん疼痛治療法を根拠に主に緩和医療の領域で発展してきた.しかし近年がんと診断された後,治療や治療後の観察が長期にわたる患者(がん長期生存者)が増加しており,それらの人々の痛みの管理の重要性が増している.今回当科で対応した3症例を紹介し,がん長期生存者の痛みの管理について考察した.これらの患者の痛みでとくに問題になったのは,化学療法に関連した神経障害痛,遷延性の術後痛,再発の不安や治療に関連した意思決定などの心理社会面の因子,オピオイド鎮痛薬の使用であった.がん長期生存者の有する痛みは慢性痛の要素が大きく,進行がんによるがん性痛と異なる対応が必要で,ペインクリニック医が積極的に介入するべき領域と考えられる.