日本ペインクリニック学会誌
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症例
副甲状腺機能亢進症によって慢性難治性全身痛を呈した1症例
坂口 結夢塚田 妹子佐々木 大雅篠崎 未緒濱口 眞輔
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2017 年 24 巻 2 号 p. 126-129

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抄録
診断未確定のままで長期間経過した,難治性全身痛を呈する患者の治療を経験した.症例は57歳の女性で,既往は高カルシウム血症を指摘されたことがあるのみで,30年前から誘因なく全身痛を自覚し複数の医療機関を受診したが,異常は指摘されなかった.うつ病と線維筋痛症として抗うつ薬,抗不安薬や鎮痛薬が処方されていたが,痛みが増強したために当院を受診した.患者からは痛みの他に気分障害,抑うつ,罪悪妄想,不眠,不安の訴えがあった.患者の既往歴を重視して血液検査を行った結果,血清カルシウム値などの上昇を認め,さらにCT検査や核医学検査を施行したところ,副甲状腺腫瘍による副甲状腺機能亢進症の確定診断に至った.副甲状腺摘出術を施行した結果,血液検査の異常値は基準範囲内となり,痛みはアセトアミノフェン800 mg/日の内服で自制内となるまで軽減した.診断未確定のまま,長期の経過をたどっている難治性疼痛は心因性疼痛と診断されることが多いが,高カルシウム血症も原因の一つとして考慮すべきであると結論した.
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© 2017 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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