日本ペインクリニック学会誌
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症例
脊髄くも膜下麻酔後に神経障害を生じた2症例の検討
塚越 栄次富田 行成疋田 陽子岩田 美香安齋 健吉川 大輔
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2017 年 24 巻 2 号 p. 134-137

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抄録
高比重0.5%ブピバカインによる脊髄くも膜下麻酔後に神経障害を生じた2症例を経験した.症例1は36歳,女性.腹式帝王切開術のため,高比重0.5%ブピバカイン2.1 mlとフェンタニル10 μgの混合液を左側臥位にて注入.穿刺時および薬液注入中に放散痛などの神経刺激症状は認めなかった.術後に左下肢L5~S1領域にアロディニアを伴う知覚低下と左下肢の筋力低下を認めた.術後6日目より急速な回復が始まり術後7日目にはほぼ術前と同じ状態まで回復した.症例2は79歳,男性.経尿道的前立腺切除術のため,高比重0.5%ブピバカイン2.8 mlを注入した.術後より排便障害を認めた.腰椎MRIにてL3/4,L4/5レベルでの高度な脊柱管狭窄が判明した.直腸障害は現在も認める.脊髄くも膜下麻酔施行時の局所麻酔薬による神経障害はまれであるが,起こってしまうと重篤な場合もある.慎重な麻酔法の選択,慎重な麻酔手技とともに,麻酔合併症に対する十分な説明と患者の理解を得ることが重要である.
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© 2017 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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