日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
Print ISSN : 1340-4903
ISSN-L : 1340-4903
総説
炎症性疼痛―炎症は抑えたほうがよいのか―
長谷川 麻衣子
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2017 年 24 巻 4 号 p. 301-307

詳細
抄録

炎症は,生体侵襲が加わった際に恒常性を維持するための,防御反応である.一方,痛みはさらなる侵襲を回避し治癒のために安静を促す,警告的な感覚である.炎症性疼痛は,炎症によって組織の侵害受容器が刺激を受けて生じる痛みであり,痛みの神経学的分類では侵害受容性疼痛に含まれる.術後早期の創部痛のほか,筋膜や筋・骨格,内臓の炎症など,しばしば原因の除去が困難な慢性炎症を背景とする病態に伴うことが多い.このように“長期化する痛み”という前提で鎮痛の着地点を模索する場合,炎症性疼痛へのアプローチは,生体防御に不可欠な炎症反応と鎮痛を両立させるという,相反する介入を繰り返すことといえる.NSAIDs,オピオイド,局所麻酔薬などの鎮痛薬は抗炎症・免疫抑制作用を有するものが多く,鎮痛目的で炎症を抑えてしまうことにより炎症・治癒過程が遷延し,逆に痛みが慢性化する可能性が示唆されている.炎症性疼痛に用いる麻酔・鎮痛薬の作用機序と,鎮痛以外の薬理作用に関する最近の知見から,痛み以外のアウトカムについて概説する.

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
次の記事
feedback
Top