日本ペインクリニック学会誌
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総説
遷延性術後痛の対策
伊東 久勝服部 瑞樹堀川 英世竹村 佳記山崎 光章
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2018 年 25 巻 4 号 p. 231-237

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Abstract

遷延性術後痛(chronic postsurgical pain:CPSP)は,多くの患者のQOLを損失する深刻な手術合併症である.CPSPは侵襲の大きさなどの手術因子,精神・心理的因子や遺伝素因などの患者関連因子,環境因子を含んだ複合的なメカニズムによって発症し,その病態の理解は単純ではない.これまでにCPSP対策として薬物療法,神経ブロック,低侵襲手術の普及などさまざまな治療介入が行われており一定の効果は得られているが,より効果的な治療介入の開発のためにさらなる研究が望まれる.精神・心理的因子はCPSPの明らかな危険因子であり,これらの影響を評価し適切な治療介入を行うためには,痛みの有無や強度のみの単純な評価だけではなく,痛みの多面的評価が必要である.最近では,遺伝子解析やMRIなどの先進的な手法を用いてCPSPのリスクや病態を客観的に評価する試みがなされている.本稿ではCPSP対策の現状と今後の課題を中心に概説する.

I はじめに

遷延性術後痛(chronic postsurgical pain:CPSP)は国際疼痛学会によって“術後少なくとも3カ月持続する痛み”と定義されている.デンマークの研究者が中心となってまとめた欧州の疫学研究によると,CPSPは手術患者の10~50%に発症し,そのうち2~10%は日常生活に支障をきたす重症な痛みであると報告されている1).このデータをそのままわが国にあてはめると,年間約8万人が日常生活に支障をきたすCPSPを発症していると推計され,社会的損失は非常に大きいことがわかる2).このことから,CPSPの危険因子の探索と対策は周術期医療の最重要課題の一つである.

現在,術後痛に対する積極的かつ早期の治療介入の効果について多くの臨床研究が行われている.また,神経障害を最小限にするなどの手術的な工夫も試みられている.術後痛の遷延において精神・心理的因子は明らかな危険因子であり,これらが関わる複雑化した痛みの評価をいかに行っていくのか,あるいは遺伝的素因の影響などについての課題も残っている.本稿では,これらCPSP対策の現状と課題を中心に概説する.

II CPSPの発症メカニズムと危険因子

CPSPの発症には,①手術による神経障害,神経の異常発火,後根神経節や脊髄の機能変化などの神経障害性疼痛の発症に関わる因子,②下行性疼痛抑制経路の異常,③情動の交感神経の異常など大脳辺縁系の機能に関わる因子,④痛みの認知,情報処理,行動異常など痛みが高次脳機能と関わる因子,⑤遺伝的素因といった複数のメカニズムが関与している.なかでも,医原性の神経障害は痛みを遷延させる重要な要素である.手術により末梢神経を損傷すると,グリア細胞やマクロファージの浸潤により局所および全身性の炎症が惹起される.また損傷した神経の断端には神経腫が形成され異常な電気的興奮を発生させる.後根神経節では遺伝子発現が変化し,刺激に対する反応が過敏になり(末梢性感作),脊髄後角における炎症性細胞の活性化,遺伝子発現の変化,抑制性ニューロンの減少,さらには下行性疼痛抑制性経路の機能変化により求心性神経が易興奮状態となる(中枢性感作).大脳辺縁系や視床下部の変化は情動やそれに伴う行動,交感神経の緊張に関与している.大脳皮質においては,痛みの認知から情報処理,痛み行動を起こすまでの神経基盤が痛みの慢性化に関連している.また,同様の手術侵襲にもかかわらず痛みの個体差が大きいことから,遺伝的な要素が関与している可能性も示唆されている.

一方で臨床研究により,CPSPを発症する可能性が高い手術が指摘されており,具体的には開胸手術,胸骨正中切開を伴う心臓手術,人工関節置換術,四肢切断術,乳房手術,メッシュを用いた鼠径ヘルニア根治術,帝王切開などがあげられる.これらの手術は,先述のメカニズムを惹起させやすいといえよう.また,これらの調査のサブ解析により,CPSPの臨床的な危険因子が明らかになりつつある3)図1).患者関連因子として,若年,女性,肥満が代表的である.さらにうつや不安,痛みの破局化などの精神・心理的因子はCPSPの発症率を上昇させる重要な要素である.また,術前からの慢性痛もCPSPの明らかな危険因子である.手術に関連する因子として,手術手技や手術創の大きさ,手術時間,再手術などが危険因子としてあげられる.また,術後急性期の経過は痛みの慢性化との関連がみられ,術後の痛みの強さや必要な鎮痛薬の量はCPSPの危険因子と考えられる.術中のオピオイドの必要量がCPSPの発症と関連がみられるという報告もあり,オピオイドの必要量の個体差は遺伝的因子が関与している可能性がある.

図1

CPSPの危険因子

これまでの臨床研究によりCPSPを発症しやすい危険因子が明らかになってきた.CPSPの危険因子として,若年,女性,肥満,社会・文化的背景,遺伝的素因などの患者背景,術前からの慢性痛,精神的脆弱性,特定の手術(乳腺切除術,開胸術,四肢切断術,冠動脈バイパス術,鼠径ヘルニア手術など),侵襲が広範囲あるいは深部に及ぶ手術,再手術,術後急性痛の管理などがあげられる.

III 薬物療法

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)とオピオイドは,急性期の術後痛に対する基本的な鎮痛薬であるが,NSAIDsやオピオイドとCPSPの関連性について調査した報告はあまり多くない.NASIDsについては,過去に定期投与や長期間投与,術前投与(先行除痛)など,いくつかの方法を試みた調査があるが,CPSPの発生頻度および重症度には影響を与えなかった46).オピオイドについては,経静脈的患者自己調節鎮痛法(IV-PCA)を用いたフェンタニルによる先行除痛が下肢切断術後の幻肢痛を軽減するという報告がある7).また,術前から痛みが存在し,オピオイドを常用している患者はCPSPのリスクが高い.いずれにせよ,NSAIDsやオピオイドの投与方法や量など,CPSP対策としての有用性を示す強いエビデンスは存在しない.一方で,術後急性期に痛みのコントロールが不良であると,明らかにCPSPのリスクが上昇するため810),従来どおり適切なNSADIsやオピオイド投与による急性痛の管理をするべきである.

神経障害が痛みを遷延させる重要な要素であることから,神経障害性疼痛の治療薬であるガバペンチノイドに対するメタアナリシスがある.肢切断術,乳房手術,帝王切開,心臓手術,開胸手術で周術期にガバペンチンを投与し,術後3カ月におけるCPSPの有無が評価された.その結果,ガバペンチンの痛みの有無に対する相対危険度は0.99(95%信頼区間:0.80~1.21)であり,CPSPを予防しないと考えられた11).また,心臓手術,全人工膝関節置換術,脊椎手術,甲状腺手術の周術期にプレガバリンを投与し,術後3カ月の痛みの有無を調査したところ,プレガバリンの痛みの有無に対する相対危険度は0.70(95%信頼区間:0.51~0.95)であり,全体のCPSPの発生を低下させた.しかし各手術を個別でみると,心臓手術には効果的である傾向が認められたが,脊椎手術では相対危険度は1.07(95%信頼区間:0.63~1.81)と,ほとんど効果を示さなかった11).しかし,脊椎手術で痛みの強さを評価した別の臨床研究では,プレガバリンは術後3カ月の視覚的アナログスケール(visual analogue scale:VAS)値を有意に低下させたという報告があり,CPSPの痛みの強さを軽減する可能性がある12)

Naチャネル阻害薬としてのメキシレチンの内服は,術後3カ月の痛みを改善しなかったが,知覚過敏,知覚低下,灼熱感などの異常感覚を軽減することが報告されている13).また麻酔導入前にリドカイン1.5 mg/kgを静注し,さらに術後1時間までリドカイン1.5 mg/kg/hで持続静注したところ,CPSPの発生頻度および重症度を低下させ,痛覚過敏の範囲を減少させた14)

神経障害性疼痛の治療薬において抗うつ薬は非常に有用であるが,抗うつ薬がCPSPに与える影響を調査した臨床研究はほとんどない.セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(serotonin-noradrenaline reuptake inhibitor:SNRI)である日本では鎮痛薬として認可されていないベンラファキシンを用いて,乳房切除術後6カ月に評価を行ったランダム化比較試験(RCT)では,ベンラファキシンは乳房切除後のCPSPの発症頻度を低下させた15)

NMDA受容体は,脊髄の中枢性感作の形成に関与しており,痛みの慢性化において重要な役割を果たしている.このことから,NMDA受容体拮抗薬であるケタミンはCPSPの予防に有用である可能性が考えられる.Chaparroらは,一般的な腹部手術,四肢切断術,乳房手術,関節手術,開胸手術について,系統的レビューを施行し,周術期のケタミン投与が術後の痛みに与える影響を調査した.その結果,ケタミン投与の3カ月における痛みの有無に対する相対危険度は0.63(95%信頼区間:0.47~0.83)であり,中等度のCPSP予防効果が示された11)

過去の基礎研究から,神経炎症の抑制が痛みの慢性化に関与していることが示唆されている.ステロイドは強力な抗炎症作用を有しており,CPSP予防に有効である可能性が考えられ,いくつかの臨床研究が行われている.しかし,全人工股関節置換術や乳房切除術の術前にステロイドを投与したRCTでは16,17),CPSPの発生頻度は低下しなかった.一方で,心機能が低下している(左室駆出率<35%)患者の人工心肺を用いた心臓手術に際し,ヒドロコルチゾンを術前に100 mg,術後1日目240 mg,2日目120 mg,3日目60 mg,4日目30 mgという計画を立てて周術期投与を行ったRCTでは,術後6カ月での痛みの強さを低下させた18).ステロイドは免疫抑制により感染を増やす可能性があるため,周術期の投与は慎重に行う必要があるが,対象となる術式や患者によってCPSPを軽減させることが可能である.CPSPの発症頻度を評価項目とした大規模研究では統計学的な有意性を認めない薬物でも,症状を軽減させる効果を認める可能性があり,それぞれの術式について調査した臨床研究が必要である.

IV 神経ブロック

乳房切除術に対して超音波ガイド下傍脊椎ブロックを施行し,術後の痛みの有無について評価を行った有名なメタアナリシスがある19).その結果,術後3,6,12カ月において痛みの発症頻度が低い傾向を示した.しかし,超音波ガイド下傍脊椎ブロックは技術的にやや難しく,気胸などの合併症を生じやすい.このため合併症の少ない体表の神経ブロックとしてPecs I & IIブロックが注目されている20).4つの臨床研究を解析したメタアナリスでは,硬膜外麻酔は開胸術後6~12カ月のCPSPの有病率を低下させることが示されている21).また,小規模の臨床研究ではあるが,周術期のカテーテル留置による持続神経ブロックは下肢切断術の幻肢痛を減らすことが示されている22).局所麻酔を用いた神経ブロックが術後痛に与える影響について,長期の追跡を行っている臨床研究は意外にも少ない.神経ブロックのCPSPに対する効果を確立するためには,さらに質の良い大規模研究の計画が望まれる.

V 手術的アプローチ

近年,内視鏡手術の発達によって手術の低侵襲化が進み,手術患者の身体への負担を軽減する試みがなされてきた.これらの手術の低侵襲化はCPSPにどのような影響を与えただろうか.肺がん手術は,とくにCPSPの発症頻度が高い術式として知られているが,胸腔鏡補助によって手術が低侵襲化した.Bendixenらは胸腔鏡補助下手術のほうが,古典的な開胸手術と比較して,術後52週後にNRS 3以上の中等度~高度の痛みを訴える患者が明らかに少ないことを報告している.一方でNRS 7以上の強い痛みを訴える患者の割合は開胸手術と胸腔鏡補助下手術で差は認めなかった23).また,解剖的に手術の痛みの原因となる神経を,あらかじめ手術的に処理してしまうことで術後痛を軽減させるという試みがある.メッシュを用いた鼠径ヘルニア修復術中に腸骨鼠径神経切除を行って,痛みを訴える患者の割合を調査したメタアナリシスがある.その結果,鼠径ヘルニア修復術において腸骨鼠径神経切除を行った群は術後早期から痛みを訴える患者の割合が少なく,長期(3~12カ月以降まで)のCPSPの頻度を低下させた24)

VI 精神・心理的アプローチ

精神・心理的因子は,CPSPの発症や重症度を増加させる危険因子である25).とくに強い関連が示唆されている因子として,抑うつ,不安,手術に対する恐怖26),術後痛管理への満足度,精神的・身体的ストレス27)があげられる.

トロント大学はTransitional Pain Service(TPS)という痛み治療チームを組織し,CPSPハイリスク群に対し,術後6週間~3カ月のいわゆる亜急性期に積極的介入を行っている.TPSはおもな治療介入として,①麻酔科医による鎮痛薬の調節,②運動療法,③acceptance and commitment therapy(ACT)を行っている.ACTは1999年に米国で始まり,現在急速に普及している心理療法である.患者の行動変容を促す認知行動療法と違い,患者が苦痛や不安などの症状を受け入れ,欲求や気分にとらわれない価値ある選択と行動を促すことに重点をおいた第3世代の行動療法として位置づけられている28).Weinribらは,TPSの治療介入によって,患者の痛みとオピオイドの使用量が低下したことを示している.またACTを行った患者はさらにオピオイドの使用量が低下し,痛みへのこだわりや抑うつスコアが減少したことを報告している29).このことからCPSPに対して精神・心理的因子への介入が有効である可能性が示唆される.しかし,治療介入を開始するタイミングや,最も適切な心理・行動療法を検討するために,より質の高い臨床研究で評価する必要がある.

VII 遺伝的素因

まったく同じ術式の手術が施行されたとしても,CPSPの発症や重症度には大きな個人差がある.この個人差の原因は遺伝的素因と環境的素因の2つに大別される.遺伝的素因がCPSPに与える影響の大きさについては現在調査が進行中である.イオンチャネル,神経伝達物質,酵素,受容体,トランスポーター,転写因子に関わる遺伝子が痛みの慢性化に関連しており30),とくに,電位依存性カリウムチャネルのs1サブユニットをコードするKCNSIや,電位依存性カルシウムチャネルのγサブユニット2をコードするCACNG2による影響が質の高い基礎研究により証明され,注目されている31,32).さらに近年,一塩基多型(SNP)の頻度と疾患との関連性を検討するゲノムワイド関連解析(GWAS)が普及し,痛みの慢性化とSNPの関連性についても研究が進められている.Wieskopfらは椎間板ヘルニア切除術を受けた患者429名にGWASを施行し,SNPと術後6カ月の痛みとの関連を調査した.その結果ニコチン受容体のα6サブユニットをコードするCHRNA6の塩基多型と術後6カ月の痛みの有無に関連が認められた33).また,NishizawaらはCREB1遺伝子近傍のSNPと下顎枝矢状分割術や一般的な開腹手術後のフェンタニルの使用量に関連があることを示した34).またCYP2D6などシトクロームP450の遺伝子多型もオピオイド感受性と関連があることが示されている35).これらの結果から術後鎮痛薬の必要量にも遺伝的因子が関連していると考えられる.現在,CPSPの個体差を予想することはできないが,遺伝的素因とCPSPの関連性を明らかにすることによって,CPSPの発症を術前に予測し,積極的に治療介入するべき患者を選別できる可能性がある.

VIII 痛みの新しい評価法

前述のとおり,CPSPの病態には複雑な因子が関与しているため,痛みの有無やVASなどの簡便な主観的痛み評価だけでは,CPSPの評価として不十分である.

CPSP対策の目標は,患者が機能的に回復し,生活の質を向上させることにあるため,QOLの定量的評価は必須である.代表的なQOLの評価尺度に,①EQ-5D(英国),②SF-6D(米国),③Health Utilities Index(HUI,カナダ)などがあるが,正式な日本語版と変換表が存在するEQ-5Dが本邦での使用に推奨される36).“移動の程度”,“身の回りの管理”,“ふだんの生活”,“痛み/不快感”,“不安/ふさぎ込み”の5項目の健康状態をそれぞれ5水準で表現したEQ-5D-5Lが,妥当性が高く実用性との関連も深いため広く用いられている.

また,精神・心理的因子は明らかにCPSPの危険因子であり,患者の精神・心理的状態を把握することは,CPSPの予防および治療の両面において重要なポイントである.Zigmondらが開発した37),身体疾患を有する患者の不安と抑うつを評価するhospital anxiety and depression scale(HADS)尺度は,純粋な精神状態の把握に適していることと正式な日本語版が存在するという点で,使い勝手が良い.また痛みに関連した心理的尺度として,痛みをネガティブにとらえる破局的思考を評価するpain catastrophizing scale(PCS)や,自己効力感と痛みの関連を評価するpain self-efficacy questionnaire(PSEQ)も有用な評価尺度である.これらの評価尺度は自己記入式質問表であるため,外来診療の待ち時間に記入してもらえば診察時間を圧迫することがない.また,電話やインターネットによる回答も可能であり,医療者,患者の双方に負担が少ないという利点もある.

痛みの病態を把握し,適切な治療法を選択するためには,痛みの性質をとらえることが重要である.なかでも神経障害性疼痛は難治性の痛みであり,神経障害性疼痛の要素があるかを判定するために,いくつかの評価尺度(DN438),Pain-DETECT,LANSS Pain Scale)が開発されている.

DN4は医師による簡単な診察が必要ではあるが,項目が少なく簡便で神経障害性疼痛のスクリーニングに適している.問題が複雑化したCPSPの患者は訴えが多く問診のポイントがわかりづらいことが多いが,これらの評価尺度で数値化することで問題が明らかになりより適切な治療を選択できると考えられる.

痛みをより客観的に評価するために,いくつかの精力的な研究が行われている.その一つとしてfunctional magnetic resonance imaging(fMRI)があげられる.変形性股関節症による慢性痛患者を対象にfMRIを撮影した結果,健常人と比較して視床灰白質の萎縮が認められたという結果が報告されている39).この報告ではさらに,変形性股関節症に対して手術を行った後に痛みや活動性が改善した患者は,術前と比較して視床灰白質の体積の回復が認められた.このことからfMRIによる視床灰白質の解析がCPSPの客観的な評価として有用である可能性が示唆されている.またQST(定量的感覚試験)やバイオマーカー(IL-6,TNF-α,IL-10)など,痛みと連動する客観的な評価法が模索されている40)

患者の主観に左右されない客観的な情報は,痛みの治療を適正化するうえで非常に有益であるが,これらの方法がCPSPを予測する因子や重症度評価として有用かどうかは,いまだ確立していない.

IX おわりに

ここ数年で,CPSPに関する報告が急速に増えてきている.CPSPは侵襲の種類や程度などの手術関連因子と,精神・心理的因子や個人差などの患者関連因子が関連する複合的病態である.CPSPの病態を理解するためには痛みの有無や強度などの単純化した評価だけでは困難であり,多面的な評価が必要となる.これまでの研究から薬物療法,神経ブロック,低侵襲手術などの積極的な周術期の介入によってCPSPは軽減すること,また精神・心理的な介入の有効性が示されてきた.今後,臨床研究データが蓄積されることにより,手術別あるいは患者関連リスク別の解析や,治療の効果量(effect size)の分析が進み,さらに具体的なCPSP対策が得られるものと期待される.

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