2018 年 25 巻 4 号 p. 292-298
日 時:2018年4月28日(土)
会 場:愛知県産業労働センター(ウインクあいち)10階
会 長:五十嵐 寛(浜松医科大学医学部 臨床医学教育学講座・医学教育推進センター)
山口重樹
獨協医科大学医学部麻酔科学講座
慢性疼痛は患者の生活の質(QOL)や日常生活動作(ADL)を著しく低下させる.特に,長引く痛みは「痛みの悪循環(恐怖と回避のモデル)」を惹起し,さらなる痛みの悪化,QOLやADLの低下につながってしまう.そのため,早期になんらかの手段によって痛みの緩和を実現し,患者に安心感を与えなければならない.慢性疼痛治療に有効であるとされる認知行動療法においても,「認知」して「行動」に移すためには,なんらかの手段で痛みの緩和が必要である.
痛みの緩和の手段は多種多様である.16世紀のフランス人外科医であるAmbroise Paréが述べた「to cure sometimes, to relief often, to comfort always」という一節があるが,痛みの治療では「時々侵襲的な治療,しばしば薬物療法,常に患者の痛みの訴えへの傾聴を」と置き換えることができよう.薬物療法は必要不可欠な存在であることが理解できる.
痛みの薬物療法は,痛みの病態の理解,さまざまな薬理学的な特徴を持つ薬の開発,臨床応用により,近年,目まぐるしく躍進している.病態に応じた薬物療法が可能となっている.その一つの選択肢がオピオイド鎮痛薬である.オピオイド鎮痛薬の主たる薬理学的作用は,神経系広範囲に存在するオピオイド受容体を介した下行性抑制系の賦活,侵害受容伝達の抑制である.この両者の薬理学的作用が,慢性疼痛発症の機序に効果的に作用し,オピオイド鎮痛薬の適正使用によって痛みの悪循環を抑え,QOLやADLを改善させる.
しかし,がん性,非がん性を問わず,オピオイド鎮痛薬の不適切使用によって患者のQOLやADLが低下してしまうことも周知の事実である.慢性疼痛に対するオピオイド治療では,予想される問題点に対応しながら適切な治療計画を立て,実行し,常に観察と評価を繰り返すことが必要となる.慢性疼痛に対するオピオイド治療を見直す時期にきている.長期がんサバイバーにおいても同様のことが言えよう.オピオイド治療は,適切な患者,適切な期間,必要最小限の投与量で行うといった考え方が重要である.
また,何れの痛みにおいてもオピオイド治療の検討以前に,鎮痛補助薬などの他の薬物療法を的確に行う必要がある.鎮痛補助薬がオピオイド鎮痛薬と比べて有効であるいうエビデンスも乏しく,むしろ,オピオイド鎮痛薬は鎮痛補助薬と比べてさまざまな問題に直面するとの見解が一般的になりつつある.
本セミナーでは,演者のこれまでの臨床経験,国内外のガイドラン,エビデンスをふまえて,非がん性慢性疼痛のオピオイド治療のピットフォールについて,情報提供する予定である.
倉田二郎
東京医科歯科大学医学部附属病院麻酔・蘇生・ペインクリニック科
痛みは苦痛を伴う幻である.その幻が生活を支配し,人の幸せを妨げることがある.痛みを投影する最終臓器である脳に,その幻の影を見いだすことができる.私たちはペイン・イメージングを武器にその影をとらえ,幻を追い払うすべを模索する研究を行っている.
幻は一見,侵害受容という隠れみのをまとっており,私たちを幻惑する.ところが侵害受容を何度断っても,姿と形を変えながら繰り返し襲ってくる.患者は戦いに疲れ,あきらめ,幻の正体に怯えながらも日常をやり過ごすようになる.そして幻を見ないかつての自分を忘れてしまう.
このような幻=慢性痛は,魂の一部でありながら,物質的自己=脳に痕跡を残す.健康な脳は,痛みを抑え込む力を持っており,痛みの信号をたちどころに消し去ろうとする.機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使うと,痛みが現れるとすぐに姿を隠すのが分かる.痛みを抑え込む働きは,下行性疼痛修飾系と呼ばれ,いわゆるペイン・マトリックスのなかでも痛みの情動・認知を担当する領域が担っている.痛みに対するプラセボ効果も,この働きによる.
また,人の生命力とも言える,「喜ぶ力」も脳の働きによる.健康な脳は,痛みの幻を追い払うと喜びを覚える力を持っている.ところがこの力が弱ると,痛みからの快癒をあきらめるようになる.快癒を喜ぶ働きは報酬系と呼ばれ,慢性痛患者ではこの機能が弱くなることが分かってきた.
本講演では,このような幻を慢性痛患者の脳に見いだして,その正体をつまびらかにしようとする試みを紹介する.敵の正体を知れば,戦い方も分かるというもの.患者が痛みの幻を消し去る健康な脳を取り戻し,人生を謳歌するしなやかな人間性を取り戻すのを助けるのが,究極の目的である.
臼井要介
水谷痛みのクリニック
肩の痛みを主訴とする患者の肩関節可動域低下は腱板の断裂,関節包の狭窄,主動筋の筋力低下などだけでなく,筋性防御による拮抗筋の過緊張とそれに伴う痛みもその原因の一つになると考えられる.関節内注入は関節内の痛みに対しては有用であるが,筋肉の過緊張には効果がない.神経ブロックは交感神経ブロックによる血流改善,知覚神経ブロックによる鎮痛,運動神経ブロックによる筋弛緩を目的として行なっている.手術後や凍結肩への受動術のように強い痛みを伴う場合は腕神経叢ブロックにより痛みはとれるが,広範囲に効果のある通常の腕神経叢は上肢全体で自動運動ができなくなる.筋性防御により過緊張と痛みを生じている場合は拮抗筋の支配神経だけを選択的にブロックすれば主動筋は自動運動ができるため,過緊張状態の筋肉のストレッチを痛みなしに行える.今回,超音波ガイド下による選択的神経ブロックと運動療法併用の有用性の可能性を示したい.
三村真一郎 高田知季 金丸哲也 藤本久実子 加藤 茂 杉浦弥栄子 佐藤徳子
聖隷三方原病院麻酔科・ペインクリニック
症例は66歳,男性.X−10年以上前からアルコール多量摂取による慢性膵炎・膵石症に対し前医内科で加療中であった.同疾患によると思われる強い腹部痛を訴えており,X−2年に前医外科で除痛目的の開腹下主膵管開放術,膵石除去術を行われたが,奏功しなかった.トラマドール製剤を含めた鎮痛薬にも抵抗性であり,疼痛コントロール目的で当院当科紹介受診となった.
受診時,NRS 3~8/10.痛みは腹部全体に認め,持続痛と表現していたが,問診および身体的所見などからははっきりとした局在や性状などを確認できなかった.発熱,腹膜刺激症状,血液学的所見異常は認めず,画像所見でも器質的疾患は否定的であった.臨床経過および現症より膵石症による内臓痛と診断し,本人・家人にアルコールおよび食事管理についての厳重な指導と,定期的な前医内科通院を指示したうえで,内臓神経ブロックを施行した.
ブロック直後より腹部全体の痛みは軽減したが,上腹部正中付近に痛みが残存.NRS 7/10で,性状はズキズキ.特に仰臥位で頸部前屈位とし,腹直筋に負荷をかけることで痛みが増悪する所見を認めたため,腹直筋白線正中創部の術後遷延性疼痛を併発していたものと考えた.トラマドール製剤を含めた鎮痛剤が奏功しなかったため,診断および痛みの緩和目的で局所麻酔薬による両側腹直筋鞘ブロックを外来で施行.施行直後から痛みはほぼ消失し,その後,数カ月にわたって,NRSは1~2/10で推移した.現在も数カ月に1度,痛みの増悪時のみに腹直筋鞘ブロックを行い,前医内科と連携しながら診療を継続している.
今回は上腹部正中創の術後遷延性疼痛に対し,局所麻酔薬のみの腹直筋鞘ブロックにより一時的に痛みを緩和したことで,長期的な痛みの軽減につなげることが出来た症例を経験した.本症例について考察を付け加えたうえで,報告する.
妊娠中の好酸球性肉芽種血管炎による手指の難治性潰瘍に対して,星状神経節ブロックが有効であった症例長岡美彌子 五十嵐 寛 大橋雅彦 小林 充 鈴木祐二 鈴木興太 吉田香織 谷口みづき 御室総一郎 加藤孝澄 中島芳樹
浜松医科大学医学部附属病院麻酔科蘇生科
【症例】28歳女性.
【主訴】両手指の潰瘍,疼痛.
【既往歴】特記事項なし.
【現病歴】2016年夏に下腿腫脹と皮疹が出現したが,自然軽快していた.翌年8月に同様の症状が再燃した.同年11月(妊娠6週)に前医を受診し,下腿の皮膚生検から好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)と診断された.同年12月に下腿腫脹が増強したため,プレドニゾロン15 mg/日の内服を開始したが,右手示指に限局性壊疽が出現し,当院皮膚科へ紹介入院となった.本人が妊娠の維持を希望したため,胎児への影響が懸念される免疫抑制剤は使用せず,プレドニゾロンを1日50 mgまで増量した.末梢血好酸球数は低下傾向を認めたものの,手指の壊疽は増悪傾向であり,疼痛コントロールが困難であっため,当科紹介となった.
【身体所見】左手は薬指以外に潰瘍を認め,右手にも痂皮化した潰瘍が多発していた.
【治療経過】両側星状神経節近傍近赤外光照射,手指のキセノン光照射を行ったところ,若干の疼痛緩和を認めた.その後,疼痛の強い左側の星状神経節ブロックを行ったところ,疼痛の消失とサーモグラフィでの血流改善を認めた.右手指の疼痛はないものの,潰瘍が多発しており,血流改善を目的として連日両側の星状神経節ブロックを継続し,両手指の血流改善と良好な鎮痛を維持することができている.
【考察】EGPAは,ステロイド療法単独で症状が改善することが多いが,本症例ではステロイド療法のみで手指の虚血をコントロールできず,免疫抑制療法などを適応するべき病態であったが,胎児の催奇形性の問題から選択が難しく,星状神経節ブロックを行ったところ,良好な鎮痛を得られるとともに,潰瘍の進行をコントロールすることができた.使用できる薬剤が限られている妊婦のEGPAによる四肢壊疽に,星状神経節ブロックは良い適応であると考える.
末梢神経顔面神経麻痺の病的共同運動に対し,ボツリヌス毒素注射療法が効果的であった1例操 奈美 山口 忍 中村好美 長瀬 清 吉村文貴 杉山陽子 田辺久美子 飯田宏樹
岐阜大学医学部附属病院麻酔科・疼痛治療科
病的共同運動は末梢神経顔面神経麻痺の後遺症の一つで,患者のQOLを低下させる後遺症であり,特に会話・食事時の口運動に伴う閉瞼は不快感が強いといわれる.これに対する治療として,ボツリヌス毒素製剤の注射療法(以下,BT療法)が有効な手段の一つとされているが,その具体的な治療法は施設間で異なるのが現状である.今回,われわれは,顔面神経麻痺後の病的共同運動に対し,BT療法により症状の改善をみたので報告をする.
【症例】56歳,男性.170 cm,77 kg.併存症に特記すべきもの無し.1年7カ月前に右口角から水が漏れることに気付き,翌日からは右耳閉も出現,他院で顔面神経麻痺と診断され治療を受けた.顔面神経麻痺の程度は,発症3週間後では柳原法(40点)で2点,10カ月後には32点と改善がみられたが,発症後8カ月頃から口の動きに伴い閉瞼が生じる病的共同運動がみられるようになった.発症1年1カ月後に右眼瞼下垂に対し眉毛挙上術が施行され,一定の満足度が得られたが,病的共同運動による不快感が強かったため,当科紹介受診となった.初診時は,あくび・咀嚼などに伴ない右眼は完全に閉眼する状態で患者の不快感は強く,BT療法の適応と考えた.ボツリヌス毒素(ボトックス®)を1カ所につき1.25単位で,眼瞼痙攣の注射部位に準じて眼瞼周囲6カ所に投与した.投与後は開口に伴う閉瞼はなくなり,安静時の閉瞼不全などの有害事象はなく,患者の満足度は高く,その効果は約6カ月間継続した.
【考察】病的共同運動に対するBT療法は有効とされる一方,有害事象などにより期待した効果が得られない症例や,長期にわたる投与が必要となることも報告されている.また症例ごとに重症度や到達目標が異なり,治療は画一的ではないといわれている.今回の症例では初回BT療法による満足度は高く,有害事象は無かったが,今後の経過を観察し,投与間隔・量を調整してく必要があると考えている.
腰部脊柱管狭窄症による慢性腰痛に対してhigh dose刺激による脊髄刺激(EVOLE)が良好な結果をもたらした1例坂本 正 河西 稔 平塚寿恵
医療法人宏徳会安藤病院麻酔科・ペインクリニック科
【症例】71歳男性.2013年より腰痛を認め,2017年から両膝の疼痛も伴うようになった.近位整形外科にて腰部脊柱管狭窄症と診断され,2018年に痛み治療目的で当院ペイン外来を受診された.痛みの程度は腰部,膝ともにNRS(numerical rating scale)5/10,下肢筋力はMMT 4~5と軽度低下,間欠性跛行を認めた.MRIではL3/4からL4/5に脊柱管狭窄を認めた.脊髄刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)の希望があったため,2018年1月7日,脊髄刺激電極留置術を施行した.MRI対応型8極電極をTh9椎体上縁を先端として2本留置した.試行期間では,両膝に対してlow dose刺激で疼痛緩和を認めたが,腰痛に対しては効果を認めなかったため,high dose刺激(EVOLVE)を行った.このhigh dose刺激開始後より腰痛改善を認め,腰・膝の痛みは供にNRS 3/10と改善した.1月14日に左臀部に脊髄刺激電極電池の植込み術を施行した.周術期に大きな合併症は認めず,1月23日に退院となった.
【考察】SCSは脊髄に微弱な電流を流すことで慢性疼痛を和らげる治療法で30年以上の歴史がある.この間,MRI対応型のシステム開発,1本の電極リード線に4極,8極,16極と電極数の増加,電気刺激も電圧から電流刺激へ,刺激頻度も1秒間に1,000回まで可能になり,刺激法に対する研究が盛んに行われるようになってきた.近年,その刺激方法の一つとして,腰痛に対するhigh dose刺激(EVOLVE)が有効であると報告されている.今回われわれはhigh dose刺激を用いたことにより,良好な腰痛軽減効果を得たので若干の文献的考察を含めて報告する.
ワレンベルグ症候群に対する脊髄刺激療法平塚寿恵 坂本 正 河西 稔
医療法人宏徳会安藤病院ペインクリニックセンター
【はじめに】後下小脳動脈の脳血管障害による小脳性運動失調や交代性感覚解離症状を特徴とするワレンベルグ症候群は,神経内科では目新しい新患ではないが,麻酔科医が治療に関与することはまれと思われる.今回,痛み治療の目的で紹介受診され,脊髄刺激療法が奏功した症例を経験したので報告する.
【症例】48歳女性.左半身でも特に左下肢痛,左大腿筋拘縮で膝の曲げ伸ばしができないとの訴えであった.高血圧症,高コレステロール血症の治療中であった.
【経過】6年前,突然にめまいが出現して,立位保持ができなくなり,脳神経外科を受診した.ワレンベルグ症候群の診断で抗凝固薬投与とリハビリテーション治療にて,なんとか自力で動けるようになったが,左下肢痛が頻発すること,左大腿筋痙攣拘縮により膝関節の屈曲と進展ができない.歩行時には,手すりがないと右側に片寄ってしまうとの訴えであった.抗凝固薬が処方されていたので,主治医の了解の元に一時的に抗凝固薬を中止し,腰部硬膜外ブロックを施行した.ブロックにより,短期間であったが,痛みの頻度が減り,左膝関節の動きの改善などの効果が認められた.このため,脊髄刺激療法(SCS)を施行することとなった.ボストン社製8極電極を,正中の左側,T9椎体上縁になるように2本並行に留置した.この位置での通電刺激で,痛みの強さの程度は変わらないが,痛みの発生頻度が減少し,左膝関節の伸展,屈曲が可能となり,右側へ変異してしまう体幹失調も改善し,手すりがないと歩けなかった状態から,杖のみで歩行可能となった.本人の満足度は高く,こうした中枢性神経障害でも,SCSには痛みとともに体幹失調,筋硬縮への改善効果があることが確認できた.
頸椎の脊髄刺激療法が著効した腕神経叢引き抜き損傷の1症例岩井亮太 越川 桂 田中亜里沙 山田宏和
社会医療法人厚生会木沢記念病院麻酔科
腕神経叢引き抜き損傷は難治性であり,エビデンスレベルの高い治療方法は確立されていない.今回われわれは,頸椎の脊髄刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)で除痛できた症例を経験したので報告する.
【症例】40歳代の女性.7年前と5年前に交通事故にあった.2回目の事故で左上肢に強い痛みが残り,頸椎MRI検査で左C8偽性髄膜瘤を認めたことから,左腕神経叢引き抜き損傷と診断された.薬物療法で鎮痛効果が得られなかったため,2回目の事故から6カ月目に当科へ紹介となった.
【治療経過】初診時のNRSは10/10,左前腕部は強い痛みとアロディニア状態のため動かすことが困難であり,物をつかむことがまったくできなかった.また,頸部~両上腕にかけても痛みやこわばりがあり,日常生活に大きな支障をきたしていた.薬物療法では,抗痙攣薬,抗うつ薬,オピオイドなどを服用したが鎮痛効果は乏しかった.また神経ブロック療法では,頸部神経根ブロック,腕神経叢ブロック,星状神経節ブロックなどを実施したが,鎮痛効果は認めずブロック後に状況が悪化することもあった.2回目の事故から4年目に,SCSのトライアルを施行した.この時,2本のリードの先端をC2~3レベルまで進めた.10日間のトライアル中に,痛みが大きく軽減し左前腕部のアロディニア症状も消失したため,4カ月後に改めてリードとジェネレータを植え込んだ.術後は頸部や両上腕の症状も大きく軽減し,左手で物をつかむことができるようになった.左前腕の掻痒感の訴えはあるが,日常生活動作が大きく改善したため,患者のSCSに対する満足度は高かった.
【結語】頸椎のSCSはやや侵襲的な手技ではあるが,腕神経叢引き抜き損傷に対して効果的な治療方法であった.
疾病利得が影響したと思われる両側足底部痛の1症例御室総一郎*1 五十嵐 寛*2 鈴木興太*3 水野香織*3 鈴木祐二*3 長岡美彌子*3 小林 充*3 木村哲朗*4 谷口美づき*3 加藤孝澄*5 中島芳樹*5
*1浜松医科大学医学部附属病院集中治療部,*2浜松医科大学医学部臨床医学教育学講座,*3浜松医科大学医学部附属病院麻酔科蘇生科,*4 Department of Anesthesia, UC San Francisco/St. Joseph's Hospital & Medical Center,*5浜松医科大学医学部麻酔・蘇生学講座
熱中症は,高温多湿環境にて発生し筋や神経の障害が生じる病態であり,労働災害が原因となることが少なくない.われわれは就労中に熱中症を発症し2週間程度の臥床後,両側底部疼痛を生じたが,疾病利得が影響し,症状が誇張されたと思われる症例を報告する.20歳台の男性で,既往歴として交通外傷による右腕神経叢引き抜き損傷による身体障害者2級を受けていた.夏季閉鎖環境において作業後に意識障害から救急搬送され,熱中症,横紋筋融解症,腎不全の診断で前医に入院した.両側底部の強い痛み,筋力低下,立位不能を訴えていたが,神経伝導速度は問題なかった.前医にて硬膜外麻酔が一時的に有効であったとのことで当院へ紹介された.当科受診時,両足底部のしびれ感を伴った痛みがあり,痛みの程度はNRSで10/10,触れるのみで強い疼痛を訴えた.筋力低下関節可動域の制限および尖足があった.深部腱反射の異常,病的反射はなかった.診断的治療を目的とした坐骨神経ブロック,大腿神経ブロック,硬膜外ブロックを施行したが両足底部の疼痛は変化がなかった.頭部から下肢におけるMRI上の所見は特に認められなかった.しかし病棟ではベッド上ではあるが両下肢を支障なく動かしているように観察され,診察時と通常の行動では症状の乖離がみられた.また補償の獲得を示唆する発言があった.症状を誇張する背景に疾病利得の影響が考えられた.
勤労世代を対象とした短期集中型入院ペインマネジメントプログラム下 和弘*1,2 井上真輔*1 牧田 潔*3 土屋まり*4 平井裕一*4 若林淑子*2 宮川博文*2 新井健一*1,2 牛田享宏*1,2
*1愛知医科大学学際的痛みセンター,*2愛知医科大学運動療育センター,*3愛知学院大学心身科学部心理学科,*4愛知学院大学心理臨床センター
運動器に慢性の痛みを有している者は多く,わが国では,30歳から60歳までの勤労世代で特に多いことが知られている.このような慢性疼痛は個人の生活の質を損なうだけでなく,休職や生産性の低下から社会・経済的にも非常に損失が大きく,適切な対応が求められる.慢性疼痛のマネジメントには,集学的なリハビリテーションプログラムが有効であることが諸外国の報告から明らかになっている.しかし,わが国では現段階でそのような集学的リハビリテーションプログラムを提供できるシステムは十分に整備されていない.今回,われわれは勤労世代を対象とした短期集中型の入院ペインマネジメントプログラム(ペインキャンプ)を開発し,2017年8月より実施したので,現況を報告する.対象は運動器に慢性痛を有する勤労者(休職中を含む)とし,プログラムは8日間の入院(3泊4日×2回)と2日間のフォローアップの合計10日間で,理学療法士管理下での積極的な運動療法(筋力増強運動,全身持久力運動,ストレッチング,姿勢・動作指導)と,臨床心理士による認知行動療法,ヨガやマインドフルネスなどのリラクセーション技法の習得から構成される.プログラムの定員は2または3名とした.2018年2月現在で,プログラムに参加,修了した者は11名(平均年齢45.0歳,女性4名)で,プログラム前後で痛みの程度(numerical rating scale),痛みの破局化思考(pain catastrophizing scale),痛みに対する自己効力感(pain self-efficacy questionnaire),健康関連QOL(EuroQOL 5 demension),疼痛による生活障害(pain disability assessment scale),身体活動量(international physical activity questionnaire)の改善がみられた.また,プログラム参加前に休職していた6名のうち,2018年2月現在で4名が復職可能となった.今回の報告では,プログラムの詳細について紹介し,フォローアップを含めた患者の治療経過,今後の展望について検討,考察する.
子どもの痛み―愛知医科大学 痛みセンターにおける症例を通じて―尾張慶子 西原真理 西須大徳 池本竜則 井上真輔 新井健一 牧野 泉 佐藤 純 畠山 登 牛田享宏
愛知医科大学痛みセンター
【目的】慢性痛患者を診療対象とする当センターには10歳未満から90代まで幅広い年齢層の患者が来院する.どの年代であっても生物・社会・心理モデルを適応してアプローチしている.しかし,心身の発達過程である子どもの治療にあたっては,大人同等の治療計画が望ましいのか疑問に思うこともある.本研究では,2013年11月から2017年12月までに当センターを受診した患者のデータから,子どもの痛みの特徴と診察をしていくうえでの留意点などについて考察する.
【方法】2013年11月から2017年12月に愛知医科大学痛みセンターを受診した初診時8歳から18歳までの患者,平均14.5歳,延べ123人の患者群と,初診時が19歳以上93歳までの患者,平均年齢56.6歳,延べ2,205人の患者群間でNRS,PDAS,HADS,PCSなどの痛みを評価に関する指標についてt検定を用いて比較した.さらに,初診時の症状ならびに初診までの薬物の使用歴や治療内容,経過についても検討した.
【結果】19歳未満と19歳以上の2つの患者群での性別割合は,どちらもおおよそ女性が男性の2倍となっていた.痛み評価項目NRS,PDAS,HADS,PCSを比較した結果,2群間では全て19歳未満の若年層で優位に低く,若年層の訴える痛みとしては頭痛,膝関節痛の順で多かった.さらに,19歳未満の約1/4で抗精神病薬,抗うつ薬,抗不安薬,ベンゾジアゼピン系薬剤を使用し,約1割の患者で麻薬を使用し,頭痛において使用してきた薬物の種類は他の部位の痛みと比べて顕著に多かった.侵襲的な治療としては,腰痛に対してのレーザー治療や膝関節痛に対する関節注射も認められた.
【考察】当センターに紹介されてきた19歳未満の患者についての特徴を検討した結果,痛みの指標は優位に低いにもかかわらず,大人と同等に侵襲的な治療や麻薬,向精神薬を代表とする薬剤の使用など積極的な治療が行われていた.成長期における極端な運動不足や過多,習い事やスマートフォン依存による夜型の生活や睡眠負債などの生活習慣からくる痛みも多いと考えられることから,治療方針の見直しが必要であると考える.
8年間原因不明であった顎関節症による非歯原性歯痛の1例西須大徳 牧野 泉 西原真理 新井健一 井上真輔 尾張慶子 牛田享宏
愛知医科大学痛みセンター
【緒言】非歯原性歯痛(non-odontgenic toothache:NOT)は,歯に異常がなく歯痛を生じる疾患であり,よく知られたものに心臓性歯痛がある.NOTの49.6~85%は,咀嚼筋などの筋筋膜痛が原因であるといわれる.今回われわれは,原因不明の歯痛が咬筋の筋筋膜痛由来であり,ストレッチングにより劇的に症状が改善した1例を経験したので報告する.
【症例】62歳,女性.X−8年に下顎左側臼歯の痛みが出現し,抜歯術と骨掻爬術を受けたが改善しなかった.X−4年前より,骨髄炎および三叉神経痛の診断下に薬物療法,神経ブロックを実施するも明らかな改善を認めず,X年8月に当センター初診となった.
【経過】主訴は左側下顎の圧迫痛でNRS 6であった.悪化因子は冷え,緩和因子はお風呂で,夕方になると強くなるとのことであった.また心理社会的背景として,離婚歴があり前夫との息子が過労で逝去,発症1年ほど前にコンビニエンスストアをオープンし多忙であり,医療面接時には希死念慮を吐露していた.口腔内所見は,左側下顎歯肉の触覚および痛覚閾値の上昇を認める以外,画像を含めた異常所見は認めなかった.顎関節症の検査では,左側咬筋に圧痛があり主訴部への関連痛を認めた.これらのことから,左側顎関節症(咀嚼筋痛障害)による非歯原性歯痛と診断し,病態説明と咀嚼筋ストレッチを開始した.そうしたところ,1カ月後には症状がほぼ消失していた.しかしながら,感覚閾値には変化がなく,術後性感覚鈍麻が併発しているものと思われた.
【考察】一般歯科患者におけるNOTは1~6%と比較的まれな疾患であるが,不可逆的治療や不必要な治療が行われるケースは少なくない.そのため,原因が明らかでない歯痛などを訴えた場合にはNOTの可能性を考慮し,検査や治療に当たることが重要であると考えられた.
地域総活躍社会のための慢性疼痛医療者育成横地 歩*1 向井雄高*1 野瀬由圭里*1 上條史絵*1 高村光幸*1 鈴木 聡*2 丸山淳子*2 丸山一男*1
*1三重大学医学部附属病院麻酔科,*2鈴鹿医療科学大学
【はじめに】慢性疼痛による損失は甚大であり,その対策は重要である.他方,医療経済は厳しく,現場での生産性の向上が課題である.各種医療人材の養成こそが,対策の鍵であり,「心のこもった暖かな」生産性向上に寄与するものと考える.
【目的】地域総活躍社会実現の一環として,慢性疼痛治療にかかわる各種メディカルスタッフを養成する.
【方法】県内2大学(鈴鹿医療科学大学,三重大学)が協力し,早期から選択受講できる「慢性疼痛医療者育成プログラム」を新設・実施する.本プログラムは,平成28~33年度 文部科学省「課題解決型高度医療人材養成プログラム(慢性の痛みに関する領域)」に採択された事業であり,講義と,体験型実習で構成される.1年目は,2大学をインターネット回線で結び,遠隔授業を行う.専門性の異なる講義を相互に活用し,慢性疼痛の病態生理,診断,治療,ケア,各職種の知識や技能の特質などを,幅広く体系的に学ぶことができる.2年目は,1年目の学習を背景とし,数日間のワークショップを実施する.漢方や鍼灸,薬膳,理学療法を含む統合医療の実際に触れ,チーム医療に関するロールプレイを行う.最終的に事例を通して意見交換し,問題解決を目指す内容である.
【結果】初年度は,遠隔授業で479名,ワークショップで44名が履修した.初年度であり,講義履修後にワークショップに参加する形とは,なっていない.ワークショップで印象に残ったのは,学部学科の枠を超え,分け隔てなく取り組む姿勢が,日にちを追うごとに,あらわれてきた点である.
【考察】県下唯一の医学部を擁する三重大学と,医療福祉の総合大学である鈴鹿医療科学大学が,互いの専門性を活かし連携するプログラムは,慢性疼痛を抱える患者と家族を多角的な視点で捉え,全人的チーム医療を学ぶうえで有意義であると考える.初年度の課題を検討し,より質の高いプログラムへと改善したい.
アクセプタンス&コミットメント・セラピーが有効であった慢性疼痛をかかえ休職している中年女性の1症例酒井美枝 浅井明倫 太田晴子 近藤真前 杉浦健之 祖父江和哉
名古屋市立大学病院いたみセンター
【はじめに】中年期に休職を余儀なくされることは,これまでの人生を振り返り,今後を再考するきっかけとなる場合がある.今回そうした過程を支えるうえで,アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)が有効であった慢性疼痛の症例を経験した.
【症例】50代の女性.両下肢痛,休職中.X−5年より仕事の多忙をきっかけに頭痛が出現.X−2年には精神症状出現.精神科を受診し,休職となる.この頃より両下肢に疼痛が出現.X−1年に職場復帰したが症状が悪化し,精神科医の勧めにより再び休職となった.その後,専門的な疼痛治療を希望し,当科受診に至る.プレガバリン内服により疼痛は改善傾向(NRS:10→3)となった.X年5月より薬物療法に加えて心理療法を開始した.
【経過】心理士により1~2週間に1回(50分)×13回+2回のフォローアップの個別面接を行った.初回~#2:痛みの経過,環境変化,治療過程を整理した.生活記録表をもとに現状を確認し,大まかな治療目標を共有した.#3~6:これまでの人生を振り返りつつ,生活の充実につながる活動を明確化し,今後の人生で大切にしたい価値の言語化を行った.#7~12:これまで自分を縛ってきたルール(思考)を同定し,言葉と距離を取り,今この瞬間を味わうエクササイズ(マインドフルネス)を導入した.#13~15:全体の振り返りを行った.介入前と#14,#15を比較して,QOL(EQ5-D:0.572→0.724→1.000),痛みの程度(NRS:2→1→1),疼痛生活障害評価尺度(PDAS:16→2→2),痛みの破局化(PCS:18→18→0),自己効力感(PSEQ:28→38→45)が改善し,活動性の増加が報告された.また,言語報告から人生を見つめ直すうえでACTが有用であったと推測された.
【まとめ】本症例では疼痛関連の問題だけでなく人生を再考するうえでACTが有効であった.
漢方療法が有効であった後頭神経痛/大後頭神経三叉神経症候群の1症例黒川修二*1 藤原祥裕*2 畠山 登*2 小松 徹*2 佐藤祐子*2
*1 JA愛知厚生連江南厚生病院麻酔科,*2愛知医科大学病院麻酔科
【はじめに】国際頭痛学会の定義によると,大後頭神経または小後頭神経の皮膚領域に電気が走る,または刺すような発作的な痛みを後頭神経痛という.また,第2,第3頸神経と三叉神経の一次求心性ニューロンは三叉神経脊髄路核に収束し,後頭神経領域の病変などで上位頸神経が刺激され,後頭部痛の他に視覚障害,眼痛,耳鳴りなどの症状をきたし,大後頭神経三叉神経症候群(以下GOTS)と呼ばれている.GOTSの治療法としては三環系抗うつ薬や抗てんかん薬などの薬物療法,後頭神経ブロック,星状神経節ブロック(以下SGB)や眼窩上神経ブロックなどの神経ブロック療法がある.今回これらの治療では難渋したが,漢方療法により軽快した症例を経験したので報告する.
【症例】76歳,女性.2007年以前より後頭部痛あり,他院にて大後頭神経ブロック,SGB施行し軽快.その後2014年4月頃より痛み再燃し他院にて星状神経節直線偏光近赤外線照射,後頭神経ブロック施行するも改善せず,同年10月,後頭神経痛にて紹介受診となる.初診時VAS 60/100,後頭部痛認めた.再度SGB,後頭神経ブロック施行し,数回繰り返すも軽快と再燃を繰り返す.
なお,神経内科,脳神経外科的には器質的疾患は否定的とのこと.2016年7月より左眼より流涙,眼痛認め,神経内科にてGOTSと診断.その後もSGB,後頭神経ブロック繰り返すも軽快と再燃を繰り返す.2017年12月より内服として治打撲一方を開始.内服開始後2週間後より痛みが軽快してきて,副作用により内服中断となるも軽快のまま現在に至っている.
【考察・まとめ】後頭神経痛/GOTSは前述の治療により改善するが,時として,本症例のように難渋することもある.今回は痛みという症状と高齢につきお血の症状もあるということより,試しに処方した漢方が有効であった.西洋医学的治療で改善しない場合は漢方療法も試みる価値はあると考えられた.
帝王切開術後の硬膜穿刺後頭痛に対する五苓散の有用性の検討浅井明倫 永井 梓 加藤利奈 草間宣好 徐 民恵 杉浦健之 大堀 久 薊 隆文 祖父江和哉
名古屋市立大学病院いたみセンター
【はじめに】帝王切開術(CS)時の脊髄くも膜下麻酔(SA)後にまれに発生する硬膜穿刺後頭痛(PDPH)は離床や授乳の妨げになる.硬膜外自己血パッチの有効性は報告されているが,施行のタイミングや適応は施設ごとに異なり,侵襲もある.一方,薬物治療は,有効性についてさまざまな報告があり,一定の見解がない.前回の集会で,PDPHに対し,五苓散が有効な可能性があった1症例を報告した.
【目的】PDPHに対する五苓散の有効性について症例数を増やして明らかにすること.
【対象と方法】2014年5月から2017年7月にSAあるいは脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔(CESA)で管理したCSについて,診療録記載より後ろ向きに調査した.
【結果】対象のCSの540例のうち,PDPHと診断された症例は25例であり,そのうち五苓散を処方されたのは12例.発症までの平均期間は術後2.67日で,3.25日持続していた.離床できない重症例は2例であった.五苓散投与開始後48時間以内に10症例(83.3%)で改善を認め,1症例においては追加の薬剤を要した.頭痛による入院期間の延長はなく,退院後すべての症例で症状は消失していた.全症例において,硬膜外自己血パッチを必要とする症例はなかった.
【考察】五苓散は近年頭痛への効果に関するエビデンスが集積されつつある.特に水分代謝の異常に伴う頭痛に対して有効といわれており,慢性頭痛の診療ガイドライン2013でも使用が推奨されている.PDPHに対する硬膜外自己血パッチの48時間以内の有効率が8~9割程度といわれ,今回の結果からは五苓散は遜色ない結果であった.PDPHは東洋医学的に水分代謝の異常に伴う頭痛と考えることができ,正常妊婦の30~80%に浮腫があるといわれていることからも,五苓散はCS後のPDPHに対し有効である可能性がある.今後,前向き検討でのさらなる評価が必要と考える.
【まとめ】当院でのCS後PDPHに対して五苓散は有効であった.
舌痛症に対して立効散が有効であった1症例大橋雅彦*1 谷口美づき*2 五十嵐 寛*3
*1浜松医科大学医学部附属病院集中治療部,*2浜松医科大学医学部附属病院麻酔科蘇生科,*3浜松医科大学医学教育推進センター
【症例】70歳女性.
【既往歴】子宮内膜症,卵巣嚢腫,胃癌,緑内障.
【現病歴】4カ月前から舌の違和感が出現し,次第に舌根部の疼痛を自覚するようになったため,近医を受診し,咳嗽薬を処方されたが症状は改善しなかった.その後舌全体に灼熱感を伴う疼痛を自覚するようになったため,歯科口腔外科を紹介受診した.加味逍遥散5 g/日の内服を開始したが症状は軽快せず,次第に食思不振や腹部膨満感,悪心などの消化器症状を伴うようになったため当科へ紹介となった.
【臨床経過】舌の疼痛に対して立効散7.5 g/日を処方し,腹満感,食思不振などの消化器症状に対して大建中湯7.5 g/日を処方した.内服開始から数日で舌の疼痛は軽減した.また腹部腹満感も消失し,食事量も増加した.
【考察】舌痛症に対して漢方薬が有効であるとの症例報告は散見され,本症例でも立効散が非常に有効であった.また消化器症状に対しても大建中湯が著効し患者の満足度も非常に高かった.本症例に対する治療計画および臨床経過について文献的考察を交えて報告する.