日本ペインクリニック学会誌
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症例
ペンタゾシンおよびブプレノルフィン注射薬連用による偽依存から,フェンタニル貼付薬へのオピオイドスイッチングとミルタザピン内服薬併用により自宅退院に至った症例
竹村 佳記青木 優太伊東 久勝堀川 英世服部 瑞樹山崎 光章
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2019 年 26 巻 1 号 p. 48-52

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抄録

症例は1型糖尿病の42歳,女性.初診の11カ月前から右足虚血性壊疽の痛みに対してブプレノルフィン注射薬,3カ月前の術後からペンタゾシン注射薬を連用していた.初診時,胸部術後痛,右下腿幻肢痛,左足糖尿病性神経障害痛とともに,上記注射薬への強い期待感よりペンタゾシンおよびブプレノルフィン依存と診断した.注射薬を止め,トラマドールとプレガバリン定期内服,トラマドール頓用内服を始めた.注射薬中止の翌朝に現れた退薬症候に対してフェンタニル貼付薬を導入し,翌日からその症候は消失した.以後約6週間にわたるミルタザピン内服を含めた処方薬調整の末に自宅退院となった.本症例では,はじめオピオイド依存と考えられたが,治療経過を振り返ると痛みが十分にコントロールされていなかったと考えられることから,偽依存が最も疑われる.しかし,注射薬中止後に純粋なμ受容体作動薬であるフェンタニルを導入したことが退薬症候改善およびその後の円滑な痛み管理へとつながり,また血中濃度が安定しやすい貼付剤が依存への移行を防ぐ治療として有用であったと推測される.以上より,オピオイド依存に対する治療薬がないわが国では,依存の予防が大切であると考える.

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© 2019 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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