日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
Print ISSN : 1340-4903
ISSN-L : 1340-4903
医薬品・医療機器情報
ウォーターベッド型マッサージ装置アクアコンフォートスフィア®
水野 樹斎藤 由美子斎藤 安規
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2020 年 27 巻 1 号 p. 116-117

詳細

マッサージは,軟部組織に対して,徒手的に軽擦,揉捏,圧迫,叩打,振戦などの物理的刺激を加えることにより,結合組織の粘弾性の改善を図り,疼痛,筋緊張,筋疲労,浮腫などの症状を軽減し,運動機能を維持改善し,精神的リラクゼーション効果を促進する治療体系である.マッサージには,その他,循環の促進,新陳代謝の促進,免疫機能への作用などの生理学的,代謝学的,免疫学的効果がある.

ウォーターベッド型マッサージ装置(water bed type massage apparatus)は,ウォーター・スティミュレーション・ベッド(water stimulation bed)とも呼ばれ,水圧による機械的刺激を身体に与えることでマッサージ効果の獲得を目的に製作された理学療法用器具である.過去の報告では,ウォーターベッド型マッサージ装置を用いた水圧マッサージ後に長座位体前屈29.4 cmから33.7 cmへ増加した1)ことから,水圧マッサージによる筋緊張の緩和と柔軟性の改善効果が示唆されている.また,身体的ストレスを表す指標である状態–特性不安検査(state-trait anxiety inventory-from JYZ:STAI)が40.8点から32.3点へ減少したこと1),脳波計ではα-2波が減少しδ波とθ波が増加して徐波化が認められたこと2,3)から,水圧マッサージには傾眠傾向をもたらし心身をリラックスさせる効果があることが示唆されている.さらに,背筋力計を用いた運動課題継続時間と僧帽筋上部の筋電図の計測結果4)から,水圧マッサージには筋疲労回復を早める効果があることが示唆されている.また,水圧マッサージ開始直後の心拍センサーを用いた自律神経活動の解析から,リラックス度の増加量が大きいほど水圧マッサージに対する主観評価が高かった結果5)が得られている.

アクアコンフォートスフィア®(Aqua Comfort Sphere:ACS,PH-A8200,日本メディックス社,千葉)(図1)は,ダイレクト噴射方式による直接的な刺激を,「ナチュラル」,「押す」,「もみ・ほぐし」,「ビート」,「さすり」の5つのバリエーションの刺激パターンで,身長に合わせた的確な部位に自動配分可能なウォーターベッド型マッサージ装置である.表1に,アクアコンフォートスフィア®の特徴を記す.

図1

アクアコンフォートスフィア®

表1 アクアコンフォートスフィア®の特徴
電源 単相200 V
電源周波数 50/60 MHz
消費電力 約5 kVA
寸法 (W)840×(D)2,400×(H)830 mm
水槽容量 約225 ℓ
質量 約265 kg(水注入時約490 kg)
治療時間設定 1~99分
水温設定 低~高(5段階)
治療範囲 頭部~脚部

筆者らは,慢性腰背部痛を有する外来通院患者の背面全体にアクアコンフォートスフィア®を用いて水圧マッサージをしたところ,視覚的評価スケール(visual analogue scale:VAS)が低下した.慢性の腰背部痛に対して,アクアコンフォートスフィア®による水圧マッサージは疼痛軽減効果があることが示唆される.ウォーターベッド型マッサージ装置を用いた水圧マッサージは,筋緊張の緩和,柔軟性の改善効果,心身リラクゼーション効果,筋疲労回復効果などを有することから,慢性疼痛に対する軽減効果が期待される.

本論文の要旨は,日本ペインクリニック学会第53回大会(2019年7月,熊本)において発表した.

文献
 
© 2020 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
feedback
Top