日 時:2019年9月28日(土)
会 場:札幌医科大学教育研究施設Ⅰ
会 長:山蔭道明(札幌医科大学医学部麻酔科学講座)
髙雄由美子
兵庫医科大学病院ペインクリニック部臨床教授
痛みは侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛に分類される.侵害受容性疼痛は通常の鎮痛薬が有効であるのに対し,神経障害性疼痛は難治性である.2015年に発表されたLancet Neurolの「神経障害性疼痛への薬物療法のレビュー」を参考に,本邦で使える薬物をラインアップすると,1stラインはデュロキセチン,プレガバリン,三環系抗うつ薬で,2ndラインが弱オピオイド,3rdラインが強オピオイドの順となる.1stラインに選択されているデュロキセチンは,本邦では2010年にうつ病で保険適用となり,その後,慢性腰痛症と変形性関節症に伴う疼痛にも適用拡大となった.デュロキセチンの鎮痛メカニズムは「下行性抑制系」の賦活にある.痛みは危険を察知するための重要な信号であるが,強度の痛みは人体にとって有害であるため,疼痛時には脊髄後角でセロトニンやノルアドレナリンが放出され,これらは脊髄後角の受容体に結合し痛みを抑える.
2018年に「慢性疼痛治療ガイドライン」が,本年には「腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版」が刊行された.「慢性疼痛治療ガイドライン」におけるデュロキセチンの位置づけは,運動器疼痛,神経障害性疼痛,線維筋痛症に対して1Aと評価され,また「腰痛診療ガイドライン2019改訂第2版」では慢性腰痛に対して2Aと評価されている.神経障害性疼痛のみならず,運動器疼痛に対してもこのような高い評価を受けた理由は,繰り返す侵害刺激では中枢(性)感作が起こり,下行性疼痛抑制系の機能異常が発現することがわかっているが,デュロキセチンにより抑制された下行性疼痛抑制系を賦活されることにあると考えられる.また神経障害時には,脊髄後角におけるミクログリアの活性化がアロディニアの原因の一つであるが,デュロキセチンはミクログリアのP2X4受容体を抑制する効果があることもわかってきた.今回のセミナーでは,神経障害性疼痛に対する治療薬のこれまでの変遷,治療薬のなかでおもにデュロキセチンについて取り上げ,ガイドラインでの位置づけや最近の知見についてご紹介する.
石岡慶己 立花俊祐 井上 光
滝川市立病院麻酔科
【症例】38歳の女性.交通外傷後に持続する頭痛・めまいを主訴に当科を受診した.これまで薬物療法・理学療法などは無効であり,立位で悪化する頭痛・めまいのために日常生活が困難な状態であった.臨床所見から脳脊髄液減少症を疑い,五苓散7.5 g/日を開始したところ症状が半減した.精査のCT脊髄造影で硬膜外腔への髄液の漏出像を認めたため,硬膜外自家血パッチを施行した.施術後に頭痛・めまいは消失したものの,2カ月後に症状が再燃した.また,頸肩腕痛や冷えなど身体症状の訴えが多彩でやや過大な印象を受けた.五苓散5 g・加味逍遙散5 g・葛根湯5 g/日としたところ症状の改善が得られた.その後,春先の天候変化による頭痛・めまいの増悪を認めたため,五苓散7.5 g・加味逍遙散5 g/日に変更し症状は落ち着いて経過している.
【考察】脳脊髄液減少症では低髄圧による頭痛・めまいを呈するため,五苓散の有効性が期待できる.また,葛根湯は頸肩腕痛に,加味逍遙散は心気症傾向の患者の多彩な身体症状にそれぞれ有効性を示すとされる.硬膜外自家血パッチ後に症状が再燃するなど治療に難渋した症例であったが,漢方薬を組み合わせることで良好な経過をたどった.
高濃度ロピバカインによる硬膜外鎮痛を行った腎細胞がんの1症例浅野 真
社会医療法人平成醫塾苫小牧東病院麻酔科
【はじめに】腎細胞がんの痛みに対して,モルヒネ併用高濃度ロピバカインによる硬膜外鎮痛で良好な鎮痛を得られた症例を経験した.
【症例】29歳男性.2006年,根治的右腎摘出術.2018年7月,多発脳転移で全脳照射.8月,脳出血・血腫除去術.2019年1月,痙攣・意識障害.2月,腰痛増強しフェントステープ16 mg,レスキューとしてオキシコドン錠1日300 mg投与されていたが痛みのコントロール不良であった.2月26日,当院緩和ケア病棟入院.フェンタニル貼付薬を減量してメサドン40 mg/日とフェンタニル舌下錠を追加し,いったん痛みのコントロール良好となった.4月に入り,痛み増強し,痙攣で内服困難となったためオキシコドン持続静注に変更した.しかし,痛みのコントロール不良のため持続硬膜外ブロック開始.0.4%ロピバカイン2 ml/時で開始したが徐々に濃度と投与量を上げ,最終的には0.67%ロピバカインを6 ml/時,モルヒネを58 mg/日投与でコントロール可能となった.
【考察】術後痛に対する硬膜外鎮痛では比較的低濃度の局所麻酔薬が用いられているが,難治性のがん性疼痛に対してはより高濃度の局所麻酔薬が必要である.
モルヒネとブピバカインのくも膜下持続投与により良好な鎮痛が得られた婦人科がんの1例萩原綾希子 小田浩之 牧野 綾 合田由紀子
市立札幌病院緩和ケア内科
【症例】49歳女性.子宮頸がんに対し,手術や化学療法による集学的な治療を行っていた.仙骨への腫瘍の浸潤と骨盤内リンパ節への転移によると思われる臀部痛・下肢痛に対し,緩和ケアチームで疼痛コントロールを行った.トラマドール,タペンタドール,オキシコドン,メサドンと増強に応じてスイッチングを行った.介入開始7カ月後には疼痛悪化のためメサドン120 mg/日,プレガバリン450 mg/日,オキシコドン静注450 mg/日,ケタミン450 mg/日に増量してもコントロール不良となった.硬膜外カテーテルを挿入し,局所麻酔薬の注入を行うことで一時的に疼痛の改善をみたがボーラス投与が頻回となり,くも膜下チュービングを施行した.モルヒネ6 mgに加えメピバカイン55 mg/日と比較的多量の局所麻酔薬を併用したが,下肢の運動障害は軽度であった.その他の薬を漸減したが,痛みの訴えがみられた.せん妄を疑いさらに経口オピオイドを漸減・中止したところ,痛みの訴えはむしろ少なくなり良好な鎮痛が得られた.
【結語】オピオイドの全身投与で十分な鎮痛が得られなかったがん性疼痛にくも膜下モルヒネとブピバカインを併用し良好な鎮痛が得られた.
腰痛を伴う進行膵がんに対する透視下腹腔神経叢ブロックの際に,腰椎椎体骨折が発見された1例前田洋典 敦賀健吉 三浦基嗣 藤井知昭 長谷徹太郎 森本裕二
北海道大学病院麻酔科
【症例】50歳代女性.膵がんの診断で,X−1年7月より化学療法開始.X年1月には背部痛の増強あり,オキシコドン30 mg/日内服が開始となり,痛みはやや改善した.X年3月から3nd lineの放射線治療併用化学療法に移行したが原発巣の増大あり.X年6月の治験開始時には持続的な背部痛が増悪しており,オキシコドン70 mg/日内服でも軽減せず,緩和ケアチーム介入開始.
【経過】痛みの部位は腹部と背部,腰部であり,腹部にのみオキシコドンの鎮痛効果に実感あるとの訴え.腰痛は数カ月前に体幹を捻ってから自覚したと訴えあり.眠気のためフェンタニル貼付剤に変更したが痛みは残存.Th12/L1硬膜外持続ブロック0.5%リドカイン1 ml/hで腹痛,背部痛の軽減および腰痛の一部軽減が得られたため内臓痛の関与を推測し,腹腔神経叢ブロック施行.ブロック時に透視下で腰椎を観察した際に,第3腰椎椎体の圧潰を認めた.ブロック翌日にはレスキュー回数減少を認め,フェンタニル貼付剤を6 mgから2 mgへ減量できたが,MRI撮像し整形外科コンサルトしたところ,非がん性の第3腰椎圧迫骨折の診断であった.コルセット作成しタペンタドール200 mg/日を追加し退院.
【結語】がん患者の痛みの原因が,常にがんによる痛みとは限らない.
外傷後の難治性下肢痛に対する高頻度刺激による脊髄刺激療法の効果硲 光司 御村光子 佐々木英昭 高田幸昌 山澤 弦 宮本奈穂子 木村さおり 田村亜輝子 草階美佳子 堀江啓太
NTT東日本札幌病院麻酔科・ペインクリニックセンター
【はじめに】従来の脊髄刺激では症状改善が得られず,高頻度刺激が有用であった下肢複合性局所疼痛症候群の症例を経験した.
【症例】39歳男性.重量物運搬中に転倒し右下腿血腫を生じた.骨折,靱帯損傷はなかったが,右下腿~足部の強い痛みが続き歩行困難となった.近医で各種神経ブロックを施行されたが効果なく,受傷後1年半で当科紹介となった.複合性局所疼痛症候群と診断された.患肢への荷重は困難で痛みによる睡眠障害があった.サーモグラフィーでは両足尖部の温度低下が顕著であった.X線透視下の硬膜外造影所見よりL2以下の硬膜外腔癒着が推察された.腰部交感神経節ブロックで皮膚温は上昇したが痛みは不変であった.L1/2より硬膜外カテーテル挿入が可能であったため脊髄刺激trialを行った.従来のtonic刺激では患部への刺激が得られず,刺激感がむしろ不快と訴えた.1,000 Hzの高頻度刺激では皮膚温上昇と足関節可動域の拡大がみられ,歩行器歩行が可能となった.
【考察】脊髄刺激療法はその機器の進歩もあり治療適応は拡大しつつある.高頻度刺激はとくに血流改善効果が高いとされ,tonic刺激で効果がない症例においても治療効果が認められることがあり,試みる価値のある治療法と考えられる.
Raczカテーテル®による硬膜外腔癒着剥離術が奏効した脊椎手術後疼痛症候群の1症例佐々木英昭 御村光子 山澤 弦 宮本奈穂子 木村さおり 高田幸昌 堀江啓太 田村亜輝子 草階美佳子
NTT東日本札幌病院麻酔科・ペインクリニックセンター
【はじめに】Raczカテーテルによる硬膜外腔癒着剥離術は種々の脊椎疾患に適応があり,手術に比べはるかに低侵襲である.これが奏効した症例を経験した.
【症例】78歳男性.腰部脊柱管狭窄症の診断で,40歳より21年間で椎弓切除術など計5回の手術を受けたが,腰下肢痛の軽減は一過性であった.その後は他院で保存的治療を受けていたが,痛みのため歩行,臥床での就眠も困難になり当科を受診した.
右腰下肢痛が強く,その局在とMRI所見から右L5神経根がおもな責任部位と推測した.同部を目標に仙骨裂孔より硬膜外麻酔用カテーテルを挿入し硬膜外洗浄を試みたが,癒着のためかS1より頭側にカテーテルを進められず,洗浄後にも右下肢痛は残存した.後日,同様の手順でRaczカテーテルを用いたところ右L5神経根付近までカテーテルを誘導でき,生理食塩水による硬膜外腔癒着剥離後には右下肢痛の程度と範囲が縮小し,歩行も可能となった.
【考察】脊椎手術後に残存する腰下肢痛に対し,手術を重ねることにより症状が軽快する症例は少ない.高度な癒着が予想される脊椎手術後疼痛症候群に対しても,操作性に優れたRaczカテーテルによる硬膜外腔癒着剥離術は施行する価値がある.
当院ペインクリニック外来における治療概要の検証佐藤 紀
帯広協会病院ペインクリニック外来
5年に一度のペインクリニック専門医資格の更新ごとに治療概要を検証しています.2013年4月~2018年6月の当科治療概要について報告します.当科では火曜・金曜の午前を外来診察日として新患・再来患者の治療を行っています.再来患者については,患者都合に合わせて他曜日にも外来対応しています.同期間の受診患者実数187名,患者平均年齢62歳,最多治療回数は100回の患者が1名,平均治療回数は14.6回でした.主要症状は腰下肢痛30名,帯状疱疹後神経痛28名,頭痛9名などでした.主たる治療法は,神経ブロック治療16名,赤外線レーザー治療21名,イオントフォレーシス治療16名,鍼治療78名,灸治療10名などでした.予後は,改善終診に至った患者が32名,軽快が68名,不変が22名,不詳・受診中断が12名,他院・他科紹介が20名,死亡終了が15名,悪化・転院・分類不能が18名でした.過去5年間の傾向として,神経ブロックの施行数が減り,鍼治療,漢方湯液治療に主たる治療法が変化してきています.患者高齢化の影響を示唆しています.
直腸がんの腰椎骨盤内の転移再発時に麻痺を伴う難治性下肢痛を生じた1症例宮本奈穂子*1 御村光子*2 木村さおり*1 佐々木英昭*1 高田幸昌*1 田村亜輝子*1 山澤 弦*1
*1 NTT東日本札幌病院麻酔科,*2 NTT東日本札幌病院ペインクリニックセンター
悪性腸腰筋症候群(malignant psoas syndrome:MPS)は骨盤内腫瘍の腰仙部神経叢への浸潤によって下肢に強い痛みを生じる病態で,診断に難渋する場合がある.
【症例】54歳男性.直腸がんの術後経過中に腰背部痛から副腎,腰椎(L3,4,5)転移を認め治療を予定したが左大腿の痛みが増悪,ペインコントロール不良のため神経ブロックを含む加療目的に当科紹介となった.MRI上転移巣は椎体に限局し神経への浸潤圧迫を認めず,T2で両側腸腰筋に斑状の高信号域を認めた.左の大腿四頭筋,腸腰筋の麻痺と両腰神経領域の神経障害性と考えられる痛みから筋転移によるMPSと診断した.MRI拡散強調画像DWIを撮像したところ,両側腸腰筋大腰筋の広範囲に強調像がみられた.疼痛治療は脊髄くも膜下鎮痛を選択した.
【考察】MPSは画像もしくは病理学的に腸腰筋に腫瘍病変を認めることで診断されるが,本症例では筋転移でCT,MRIにおいて腸腰筋周囲に腫瘤性病変を認めず形状の変化も乏しかった.悪性腫瘍に合併する下肢神経障害では腰椎転移を疑いがちだが,MPSも念頭におき積極的にMRIのDWIを含め検索すべきである.
当施設のHIV感染患者における疼痛についてのアンケート調査佐藤 泉 神田 恵 小野寺美子 神田浩嗣 国沢卓之
旭川医科大学麻酔・蘇生学講座
【緒言】欧米ではHIV感染や抗HIV薬に起因する神経障害性疼痛がHIV感染患者の約30%に出現することが報告されている.しかし,本邦においてはHIV感染患者の疼痛についての報告は見当たらず,不明な点が多い.
【目的】当施設でのHIV感染患者における疼痛などの現状把握を目的とする.
【方法】本研究は旭川医科大学倫理委員会の承認を得て行われた.痛みやしびれの有無やこれまでのHIVに対する治療経過などの項目を含めたアンケートを作成し,当施設で加療中のHIV感染患者を対象に,アンケート調査を実施した.また,治療経過などの医療情報に関しては,診療に直接携わる医療従事者に症例報告書の記載を依頼した.
【結果】10名より回答を得た(回収率83%).「体のどこかに痛みがある」と回答したのは3名,「体のどこかにしびれがある」と回答したのは2名であった.
【考察】今回の結果では,HIV治療の進歩によりHIV-RNA量はすべての回答者でほぼ検出感度以下に抑えられていたが,痛みやしびれを自覚する患者も存在した.今後さらに症例数を増やし,HIV感染患者の疼痛についての現状把握に努めたい.
トラマドール塩酸塩(tramadol hydrochloride:TRM)・アセトアミノフェン内服により,セロトニン症候群を生じた1症例寺尾 基 原田修人 岡田華子 赤間保之 的場光昭
旭川ペインクリニック病院
【はじめに】TRM・アセトアミノフェン内服により,精神状態の変化を主体としたセロトニン症候群を経験したので報告する.
【症例】40歳代,女性.
【現病歴】患者は誘因なく左肩甲骨内側および左母趾に痛みが出現して,発症3カ月後に当院を受診した.痛みに対して仙骨硬膜外ブロックと傍脊髄神経ブロックを施行し,TRM,プロクロルペラジンマレイン酸塩3T/3×を処方した.内服は,受診当日夜より開始した.内服開始3日後より全身の違和感,17:00ごろよりめまい,錯乱が出現したことから,18:00当院に緊急入院となった.入院時は,両手の振戦,光に過敏反応が認められた.入院後2時間で20回以上排尿,飲水要求および窓から身を乗り出す危険行動がみられた.21:00にゾルピデム酒石酸塩錠5 mg内服すると,ベッド上安静が可能となり,翌日6:00起床時には症状は消失した.
【考察】今回の患者は特異性が高いHegerlらの診断基準でも陽性であり,TRMが原因薬物と考えられた.
【結語】セロトニン症候群は危険な精神症状および重篤な全身状態を生じる可能性があるため,早期発見,早期治療が重要である.
当院におけるペインクリニックの現状と課題其田 一
市立釧路総合病院麻酔科
当院は道東,釧路根室地域の急性期病院であり麻酔科医には手術麻酔,集中治療室,3次救急を担うことを優先させるという使命から2007年4月から麻酔科(ペインクリニック)外来を閉鎖し,院内外の医師からの紹介患者だけに対応している.しかし,今後は地域医療支援病院を目指すうえで疼痛管理に長じた施設であることも求められる.
電子カルテデータがある5年間の麻酔科での神経ブロック件数は約50件で,腰部交感神経節ブロック,腹腔神経叢ブロック,下腸間膜動脈神経叢ブロック,下腹神経叢ブロックなど内臓神経ブロックであった.とくに昨年から行われているフットケアカンファレンスでは院内他診療科との患者情報・診断の共有と治療法にかかる意見交換が行われ,麻酔科診療が有効に行われている.また本年度から当院に緩和ケア専門医が赴任し緩和ケア科が新設され,今後麻酔科医師として外来疼痛治療にも積極的にかかわるべき時期にきていると考えられる.今回は今後に向けて当院におけるペインクリニック診療の現状と問題点を提示したい.
東山巨樹
秋田県立循環器・脳脊髄センター脊髄脊椎外科診療部
failed back surgery syndrome(FBSS)による腰痛,下肢痛に対しての治療は,保存的治療や再手術に比べ,spinal cord stimulation(SCS)が有効であると報告されている.また近年,従来の低頻度刺激によるSCS(LFSCS)と比較して,高頻度刺激によるSCS(HFSCS)の有用性が報告されている.従来のparesthesiaが疼痛部位に一致するように電極を留置するLFSCSは煩雑であり,paresthesiaを確認することは高齢者,鎮静下で困難な場合が多い.これに対して,HFSCSはparesthesia freeであり,この欠点を解消できる.今回,簡便に行えるように,T9/10レベルを中心にleadを留置し,高頻度刺激,低頻度刺激を行うEvolveSM workflowを行い,従来のLFSCSとの比較を報告する.また,当科での簡便化を目指した取り組みを報告する.