2021 年 28 巻 6 号 p. 127-140
会 期:2021年3月8日(月)~3月22日(月)
会 場:Web開催
会 長:山口 忍(岐阜大学医学部附属病院麻酔科疼痛治療科)
黒澤大輔
JCHO仙台病院整形外科/腰痛・仙腸関節センター
腰臀部痛における仙腸関節障害の割合は15~30%を占める.仙腸関節は脊柱の基部で体幹と下肢の境界に存在し,衝撃吸収装置として機能しており,直立二足歩行のために不可欠な構造である.解剖学的に仙腸関節は前方の関節腔領域と後方の靭帯領域からなり,両方を含めて仙腸関節である.痛みを伝える神経終末は関節腔内よりも後方靭帯内に多く認められるため仙腸関節後方靭帯ブロックがより効果的であるという臨床の知見と一致している.肉眼解剖で仙腸関節面内には三角形ないし台形をなした凹凸形状が形成されており,関節面の形状と周囲靭帯により許容される関節の動きはあらかじめ規定されている.また,周囲靭帯付着部には衝撃に備えるための線維軟骨構造が組織学的に確認されている.不意の動きや繰り返しの動作,追突事故,高所からの転落を契機に関節に微小な不適合が生じると仙腸関節障害が発症する.one finger testで上後腸骨棘(PSIS)を指す腰殿部痛を生じ,約半数で鼠径部痛を伴い,椅子座位時に疼痛が増悪するという症状と,仙腸関節shearテスト陽性,PSIS,仙結節靭帯の圧痛所見といった腰椎疾患とは異なる特徴的な身体所見から仙腸関節障害を疑い,後方靭帯ブロックで容易に診断が可能である.関節後方の裂隙へ注射液を注入すると,局所麻酔薬の作用時間を超えて効果が持続することから,ブロックにより関節の不適合が改善されているものと考えられる.関節面の不適合が持続すると器械的刺激による関節腔内の炎症や周囲靭帯に持続的な牽引力がかかることで靭帯付着部症が生じ,難治性の病態を呈する.関節腔内の炎症に対しては仙腸関節腔内ブロック,周囲靭帯付着部症にはエコー下ブロックや体外衝撃波が有効である.多くの仙腸関節障害症例は保存療法で解決するが,中には仙腸関節固定術を要す例があるため,難治化する前の適切な診断と治療が重要である.
佐藤泰昌
岐阜県総合医療センター産婦人科・東洋医学科
漢方薬は長く飲まないと効果がないと思っていませんか? こむら返りに頻用される芍薬甘草湯は,通常の1回量の倍以上内服すると,遅くとも10分ほどで筋痙攣が治って痛みが改善します.芍薬甘草湯は即効性があるため,急性痛や慢性痛の突発痛の治療薬として活用可能です.
どんな痛みにも器質的(侵害受容性・神経障害性)要因と非器質的(心因性)要因があり,痛みの持続時間によって急性痛と慢性痛に分けられます.急性痛の原因の大部分を占める侵害受容性疼痛を可及的早期に軽減させるのが重要です.不幸にも慢性痛に至った場合は,神経障害性要素と心因性要素の割合が多くなると考えられ,後者は「過敏性」が一つのキーワードになります.
漢方(東洋)医学には心身一如(しんしんいちにょ)という概念があり,これは心と身体はつながっているため,心が原因となって身体症状を発現させたり,逆に身体の不調が心に影響するという考え方です.西洋薬の臓器別アプローチとは違い,漢方医学の場合は患者さんを全身からとらえることにより,心身両面に効果のある漢方薬を処方できることが多々あります.
西洋薬の副作用予防薬としても漢方薬は有用です.日本ペインクリニック学会神経障害性疼痛薬物療法ガイドラインでは,第一選択薬として三環系抗うつ薬やCaチャネルα2δリガンドが推奨されていますが,両者ともふらつきなどの副作用があります.有痛性糖尿病性ニューロパチーに用いられるデュロキセチンには,投薬初期の悪心・嘔吐対策が必須です.それらの副作用を軽減する漢方薬を,西洋薬を処方する際に同時に処方すると,服薬アドヒアランスを高めることができるでしょう.
本講演では,漢方医学の基本的な考え方や帯状疱疹後神経痛,有痛性糖尿病ニューロパチー,線維筋痛症,非特異的慢性腰痛などに対する漢方治療について,初心者でも理解できるよう分かりやすく解説したいと思っています.
住谷昌彦
東京大学医学部附属病院緩和ケア診療部/麻酔科・痛みセンター准教授・部長
中等度以上の運動器疼痛が6カ月以上持続する慢性疼痛患者は人口の15.4%を占め,これらの運動器慢性疼痛患者では身体的健康度だけでなく精神的健康度も著しく低く,痛みがQOLの重大な阻害因子となっている.なかでも,人口あたり約7%が神経障害性疼痛に罹患しているとされ,神経障害性疼痛患者のQOLはさらに悪化している.このような国民病といえる慢性疼痛は公衆衛生の視点での対策が必要である.公衆衛生の維持増進のためには,1次予防(疾患の発症予防)から2次予防(発症早期から適切な診療を開始し治癒を目指す),3次予防(重症化の防止)と段階的な対策が求められ,それぞれの予防フェーズを移行する手引きとなる臨床指標が求められる.これまでわれわれは,筋骨格系疼痛だけでなく頭痛やがん性疼痛などの全ての疼痛疾患の診療を担当するなかで,公衆衛生の視点に立った臨床指標の開発を行ってきた.2次予防のためには神経障害性疼痛に対する的確な治療が導入されることを目的にそのスクリーニングツールを開発し,さらに,3次予防のためにはとくにQOLの低下が著しい重症患者の特定指標を開発してきた.重症慢性疼痛患者では,神経障害性疼痛・痛みに対する誤った認知・睡眠障害が認められ,これらを集中的に治療する必要があり,このような患者の痛みが50%以上改善することに成功した場合を「劇的鎮痛」と定義している.このような劇的鎮痛を実現するためのわれわれの取り組みについて,薬物療法を中心に概説する.
臼井要介
水谷痛みのクリニック
凍結肩は肩甲上腕関節包の一次性拘縮であり多くの症例では自然に改善するが,肩関節の不動により痛みと可動域制限が長引く症例がある.関節包が完全に固くなる前に過緊張となっている拮抗筋に対する選択的神経ブロックとストレッチ,そして主動作筋の筋肉トレーニングが効果的である.
肩の運動(側方挙上・前方挙上・結帯運動)は肩甲上腕関節(屈曲・伸展・外旋・外転,内旋・内転)と肩甲胸郭関節(上方回旋・下方回旋・内転・外転・前傾・後傾)の複合運動からなり,側方挙上は肩甲上腕関節(外旋・外転)と肩甲胸郭関節(上方回旋・内転・後傾),前方挙上は肩甲上腕関節(屈曲)と肩甲胸郭関節(上方回旋・内転・後傾),結帯運動は肩甲上腕関節(伸展・内旋・内転)と肩甲胸郭関節(下方回旋・外転・前傾)からなる.
側方挙上時の肩甲上腕関節の外転と外旋の主動作筋は棘上筋・棘下筋(肩甲上神経)と三角筋中後部線維・小円筋(腋窩神経)であり,主な拮抗筋は大胸筋(胸筋神経叢),肩甲下筋上部線維(上肩甲下神経),肩甲下筋下部線維・大円筋(下肩甲下神経),広背筋(胸背神経),三角筋前部線維(腋窩神経)である.肩甲胸郭関節の上方回旋・内転・後傾の主動作筋は僧帽筋(副神経・頚神経叢),前鋸筋中下部線維(長胸神経)であり,主な拮抗筋は前鋸筋上部線維(長胸神経),肩甲挙筋・菱形筋(肩甲背神経),小胸筋(胸筋神経叢),三角筋中部線維(腋窩神経)である.
肩甲上腕関節包後方アプローチと前方アプローチ,肩甲下筋に対する肩甲下神経ブロック,肩甲挙筋に対する肩甲背神経ブロック,菱形筋に対する上後鋸筋面ブロック,前鋸筋上部線維に対する長胸神経ブロックについて,肩の痛みの病態ごとに超音波解剖学を用いた治療戦略を示す.今回は側方挙上時の痛みに対する選択的神経ブロックについて説明し,前方挙上と結帯運動時の痛みについては7月22日から富山で行われる日本ペインクリニック学会第55回学術集会の教育講演で続きを説明したい.
秋山治彦
岐阜大学大学院医学系研究科整形外科学教授
わが国は超高齢社会に突入し,高齢者の疾患が増加し,要支援・要介護者数も増加の一途をたどっている.運動器の障害は,ADLの低下をきたすのみでなく,全身合併症をきたし,死亡率の上昇の原因となる.骨粗鬆症を基盤とする脆弱骨折も,わが国では増加を続けている.骨粗鬆症治療では骨吸収抑制剤と骨形成促進剤,骨リモデリング調整剤などの導入によって治療機会は格段に増加したものの,骨粗鬆症治療の継続率は高くなく,また,骨折などに対し手術による早期治療・早期リハビリテーションを実施しているにもかかわらず,患者は治療前の活動性を獲得するまでにはなかなか至っていない.本講演では,近年silent diseaseといわれている骨粗鬆症の実臨床での多様化した病態と,患者の疼痛の訴えに対するピットフォールなどを紹介する.
三村真一郎*1 高田知季*2 山口智子*1 佐藤徳子*1 杉浦弥栄子*1 加藤 茂*1 金丸哲也*1
*1聖隷三方原病院麻酔科・ペインクリニック,*2新都市病院麻酔科
症例は51歳,男性.X−2年,交通外傷により第9胸椎椎体破裂骨折と後方脱臼による同レベルでの脊髄損傷をきたし,胸椎後方固定(第6胸椎から第12胸椎まで)が施行された.以降,下腹部より尾側は完全知覚脱出および対麻痺となり,さらに臍レベルの前腹部から背部にかけて両側環状にallodynia伴う有痛性知覚脱出を認めた.VAS 90~100 mm.前医で内服加療や肋間神経ブロック,肋間神経高周波熱凝固法など施行されたが,奏功せず.痛み管理目的で当院当科紹介受診.脊髄損傷部に起因する神経障害性疼痛と判断し,硬膜外脊髄刺激療法を計画した.
まずは後方固定術の影響ない第3,4胸椎椎弓間からの穿刺法による試験刺激を選択.硬膜外腔に下位頚椎レベルまで刺激電極リードを挿入後に高頻度刺激を含めた試験刺激を開始.これによりやや痛みは軽減したが,満足度は低かった.そこで当院整形外科と協議のうえで,後方固定具の抜釘術と同時に第6,7胸椎椎弓間より硬膜外腔にパドル型のリードを挿入.電極刺激による運動誘発電位で第9~10肋間筋への筋攣縮を確認後に留置した.術後の電極刺激開始後から VAS 30 mm程度まで改善.その後刺激を調節し,最終的に比較的満足度の高い痛み管理が可能となった.
脊髄損傷後の神経障害性疼痛は難治かつQOL低下が強いとされ,他の治療に抵抗性の場合は脊髄刺激療法も考慮される.通常,試験刺激で刺激部位と効果を確認してから,電極植込みを検討する.しかし当患者は後方固定後のために試験刺激が困難であり,かつ効果予測部位に刺激電極を留置するには後方固定部における全身麻酔下での外科的アプローチが必要であった.そこで,anatomicalな留置位置に関する文献確認に加えて,刺激電極からの運動誘発電位で留置部位を確認することで,良好な結果につなげることができた.これらのアプローチについて多少の考察を加えたうえで報告する.
A–2 金沢医療センターにおける脊髄刺激療法(SCS)への取り組み中島良夫 村松直樹 藤沢弘範
金沢医療センター脳神経外科
【目的】演者は前任地でSCSトライアルを53例,埋め込みを13例経験し,2019年4月より金沢医療センターへ赴任した.2019年4月~2020年12月の当院での取り組みについて報告する.
【方法】トライアルと埋め込みは,手術室にて局所麻酔下で施行.透視装置はCアームを使用した.メドトロニック社またはボストン社製の経皮的円筒型8極リードを,頚髄刺激の場合は上位胸椎(Th1/2またはTh2/3)より,胸髄刺激の場合は上位腰椎(Th12/L1またはL1/2)より刺入した.頚髄刺激は痛みの部位に一致したparesthesia領域を,胸髄刺激はTh9/10を中心に高頻度刺激1,000 HzまたはBurst刺激を用いて施行した.トライアルは1週間行い,埋め込みを希望した場合,1カ月以上の間隔を置いて埋め込みを施行した.同様に円筒型リードを刺入したのち,MRI対応充電式刺激装置を同一術野で背部または臀部に留置した.
【結果】トライアル11例に行い,8例に埋め込みを行った.内訳はトライアルが脳卒中後疼痛5例,頚椎術後疼痛1例,腰椎術後疼痛2例,腰部脊柱管狭窄症1例,腹部多数回手術後の腹痛1例,横断性脊髄炎1例で,11例中7例で痛みの改善を得た.脳卒中後疼痛3例と腰椎術後1例は無効であった.埋め込みは8例(以前にトライアルの既往2例を含む)に施行し,内訳は,脳卒中後疼痛2例,腰椎術後疼痛3例,頚椎術後疼痛1例,腰部脊柱管狭窄症1例,横断性脊髄炎1例であった.8例全例で痛みは改善している.合併症は3例に起こり,刺激装置部位の痛み(入れ替え施行)1例,リードの断裂(入れ替え施行)1例,感染(抗生剤で治療)1例であった.
【考察】FBSS,CRPS,難治性狭心症,虚血性疼痛に対するSCSの有効性が証明されているが,当科の経験では脳卒中後疼痛,腹部多数回手術後の疼痛に対してもSCSが有効な症例があり,今後適応が広がる可能性がある.
【結語】当院での脊髄刺激療法の現状につき報告した.
A–3 隣接椎間障害をきたした頚椎手術後症候群に対してL'DISQTM治療が奏功した1症例和泉有希乃 越川 桂 畑中奈津実 河田耕太郎 山田宏和 溝上真樹
社会医療法人厚生会木沢記念病院麻酔科
【はじめに】椎間板内治療の新たなデバイスとして,L'DISQTMが2019年3月に薬事承認され,本邦でも臨床使用が可能となった.現在のところL'DISQTM治療の主な適応疾患は椎間板ヘルニアであるが,その他の椎間板疾患においても治療効果が期待される.今回われわれは,隣接椎間障害をきたした頚椎手術後症候群に対してL'DISQTM治療が奏功した1症例を経験したので報告する.
【症例】70歳代の男性.16年前に他院でC6/7の頚椎前方固定術を受けた.数カ月前から両側頚部~右肩の痛みやだるさが生じ,薬物療法や理学療法を行うも症状の改善は得られなかったため,当科紹介となった.
【治療経過】初診時のNRSは7/10で,痛みのため睡眠障害を認めた.頚椎MRI検査でC4/5とC5/6に脊柱管の狭窄を認め,頚部~肩にかけての痛みはC6/7頚椎前方固定手術後の隣接椎間障害と考えられた.本人の希望でインターベンショナル治療を行う方針とし,C4/5とC5/6へのL'DISQTM治療を施行した.プラズマアブレーションは150秒間ずつ実施した.治療後から痛みはNRS 3/10まで軽減し,睡眠障害も改善した.治療後1カ月で痛みは消失し,有害事象は認めていない.
【考察】脊椎固定手術では固定椎間の可動性が低下するため,後にその前後の椎間に過度の圧力がかかり,隣接椎間障害としてさまざまな症状が出現する可能性がある.本症例では,画像検査で手術部位の隣接椎間に脊柱管狭窄を認め,それに関連した臨床症状を呈していたと考えられる.つまり,画像所見と一致した臨床症状を認め,L'DISQTM治療による椎間板内の除圧効果により症状改善が得られたものと推察された.
【結語】隣接椎間障害をきたした頚椎手術後症候群に対しL'DISQTM治療が奏功した1症例を経験した.L'DISQTM治療は椎間板ヘルニアのみでなく,隣接椎間障害による脊柱管狭窄症にも治療効果が期待できる可能性があると思われた.
A–4 鼻口蓋神経ブロックが著効した三叉神経痛の1例鷹津冬麿 角淵浩央 湯澤則子 川端真仁 伊藤恭史 奥村朋子
藤田医科大学ばんたね病院麻酔・疼痛制御学
眼窩下神経ブロックに加え,鼻口蓋神経ブロックを行ったことで疼痛管理ができた1例を経験した.
【症例】51歳女性,既往歴なし.右上顎痛で耳鼻科,歯科を受診したが異常所見なしと診断された.翌年5月に疼痛が増悪し,耳鼻科で右三叉神経痛診断,カルバマゼピン600 mg/日を処方された.7月にペインクリニックで右眼窩下神経ブロックが行われ,8月に再発した.当院初診時は右上顎から口腔内の疼痛に舌痛も伴っており,喋ることも困難な様子であった.右硬口蓋と右前歯の結合部周辺にトリガーを認めた.鼻口蓋神経ブロック(切歯孔神経ブロック)を行ったところ,口腔内の痛みの誘発が消失したため,無水エタノールによるブロックを行った.その後カルバマゼピンの内服を翌年6月に終了した.
【考察】第2枝の三叉神経痛に対し,眼窩下神経ブロックで鎮痛不能な場合には,上顎神経またはガッセル神経節ブロックが一般に行われる.ただし,この2つのブロックは手技が容易でなく,重篤な合併症もあり,透視装置を必要とする.鼻口蓋神経ブロックは手技が容易で,患者の負担も少なく,末梢枝ブロックの選択肢として有用と考える.
A–5 顎関節形成術後の続発性三叉神経痛に対してパルス高周波法が有効であった1症例松田修子 竹内健二 松木悠佳 重見研司
福井大学医学部附属病院麻酔科蘇生科
【症例】50歳,女性.身長147.5 cm,体重54 kg.
【主訴】右頬部痛.
【現病歴】X−1年9月,習慣性顎関節脱臼に対して両側顎関節形成術を受けた.術後より右頬部に引き裂かれるような痛みが出現し徐々に増悪傾向を示した.デュロキセチン60 mg/日,トラマドール200 mg/日,セレコックス200 mg/日内服にても疼痛改善なく,睡眠障害も持続していた.X年8月当科紹介受診された.
【既往歴】50歳:右乳房全摘術,内服薬:タモキシフェン.
【初診時理学所見】血圧125/68,心拍数48/分,体温36.3℃.右耳介下方に自発痛を認め,開口時や咀嚼時に疼痛の増強を認める.VAS 40 mm.右顎関節部に圧痛を認める.右咬筋に圧痛認めず.右下顎部知覚低下認めず.開口時の下顎の変位は目立たず.
【経過】臨床所見より疼痛責任神経は下顎神経と診断したが,下顎神経破壊に伴う咬筋神経麻痺により顎関節脱臼が誘発されることが予測された為,パルス高周波法による下顎神経ブロックを計画した.X年9月右下顎神経パルス高周波法を施行した.下顎神経パルス高周波法施行1週間後より徐々に疼痛軽減を認め内服薬も廃薬となった.
【結語】顎関節形成術後の続発性三叉神経痛に対してパルス高周波法が有効であった症例を経験した.パルス高周波法は神経機能を温存しつつ疼痛コントロールを行う場合に有用な治療法であると思われた.
木村哲朗*1 小林 充*1 鈴木興太*1 五十嵐 寛*2 加藤孝澄*1 中島芳樹*1
*1浜松医科大学医学部麻酔・蘇生学,*2浜松医科大学医学部臨床医学教育学
【症例】30代男性.20歳で就職したころから眉間~前額部の痛みを自覚するようになった.耳鼻科,脳外科,眼科などを受診したが器質的疾患は否定され,原因は不明であった.痛みは改善せず当科を紹介受診した.痛みは右側前額部のNRS 2~3程度の持続痛であり,日内変動はなかった.allodyniaや知覚低下などの知覚異常,流涙や鼻閉などの自律神経症状は認めなかった.症状への執拗なこだわりがあり,強いイライラ感を訴えた.
【東洋医学的所見】中肉中背,赤ら顔.四肢は温かく,脈は浮,実.腹力は中等度で全体に緊満あり.心下痞,胸脇苦満,臍傍部圧痛あり.小腹不仁なし.二便は正常.苦味のある薬は飲みたくないという.
【治療経過】原因不明の非器質的な顔面痛であり,持続性特発性顔面痛(以下PIFP)と診断した.眼窩上神経ブロックを行ったが,痛みはまったく変化しなかった.抑肝散,柴胡加竜骨牡蠣湯をそれぞれ4週間ずつ内服したが症状は変わらなかった.黄連解毒湯(7.5 g/日分2)を3週間処方したところ,痛みが気にならなくなった.6週間後の血液検査で肝酵素値上昇を認めたため黄連解毒湯を漸減,終了したが,痛みの改善は得られている.
【考察】PIFPは神経痛の特徴を持たない顔面痛であり,長期間痛みが変化せずに持続する.他の原因疾患を除外した後に診断される.疲労や情動の変化によって変動するなど心理社会的要因を含む場合が多く,本症例でも関連が強いと考えられた.黄連解毒湯は,いずれも清熱作用を有する黄連,黄芩,黄柏,山梔子で構成され,三焦の実火(実熱・熱盛)に対して用いられる.心下痞が著明で,赤ら顔,前額部の痛みを気血の上衝と捉え,黄連解毒湯を処方したところ奏功した.苦味のある処方に対して拒否的であったが,証があっていたためか内服することができた.
【結語】持続性特発性顔面痛に対して,黄連解毒湯が奏功した1例を経験した.
B–2 複合性局所疼痛症候群患者の骨髄炎手術に対し持続腕神経叢ブロックにて周術期疼痛管理を行った1例森田智教*1 鈴木規仁*1 岸川洋昭*1 坂本篤裕*2
*1日本医科大学付属病院麻酔科・ペインクリニック,*2日本医科大学麻酔科学教室
【背景】慢性疼痛患者は術前より痛み,不安,抑うつ症状を示していることが多く,長期オピオイドを使用している場合はオピオイド感受性の変容などの理由から周術期疼痛コントロールに難渋することがある.また,術後には遷延性術後痛の発生のリスクも懸念される.
今回,われわれは外傷を契機に複合性局所疼痛症候群を発症し神経刺激装置,オピオイドで加療された患者に対し骨髄炎の手術に対し全身麻酔,持続腕神経叢ブロックにて周術期疼痛管理を行った症例を経験したためここに報告する.
【症例】65歳男性.2008年に左前腕開放骨折に対し観血的骨整復術を行った.術後より複合性局所疼痛症候群と診断されフェンタニル経皮吸収型製剤,デュロキセチン,トラマドール,プレガバリンの投与で加療していた.2020年より創部からの排膿を認め骨髄炎の疑いで手術となった.術前診察時はNRS 8以上が持続しており患肢拘縮,運動障害,知覚障害を認めた.オピオイドに対し精神依存となった経緯もあり周術期の疼痛管理でオピオイド使用の増量を防ぐため腕神経叢ブロックを予定し,麻酔方法は全身麻酔と持続腕神経叢ブロックとした.手術時間は4時間33分,麻酔時間は6時間31分であり手術は特記事項なく終了した.手術中もレミフェンタニルの使用量は0.1 µg/kg/min程度とブロック効果はえられていた.しかし麻酔覚醒後,NRS 10/10の疼痛の訴えありアセトアミノフェンの静注投与,ジクロフェナクの挿肛などが必要であった.
【考察】本症例では術前より慢性疼痛を持つ患者に対し周術期疼痛管理をオピオイドの増量を行わず腕神経叢ブロックを主として行った.しかし術中効果的であったブロックのみでは術後疼痛管理は疼痛コントロールが不十分と考えられた.今回のような周術期疼痛管理でオピオイドの使用量に注意を払う必要のある症例では区域麻酔のみではなくアセトアミノフェンやNSAIDsなどの包括的な疼痛のコントロールが重要である.
B–3 頚部ジストニアに伴う頚髄症術後に残存する姿勢異常にボツリヌス治療が有効であった1例阪田耕治 山口 忍 吉村文貴 杉山陽子 長瀬 清 田辺久美子 飯田宏樹
岐阜大学医学部附属病院麻酔科疼痛治療科
【はじめに】頚部ジストニアは大脳基底核の機能異常が想定される局所ジストニアの一つである.頚部筋群の異常な収縮により頭部の随意運動や頭位に異常をきたし,頚椎症性変化を生じ頚髄症を発症する.手術療法が行われた場合,不随意運動のため術後の安静や頚椎の固定保持が困難で,術後のリハビリテーションが妨げられることも多い.今回,頚部ジストニアに伴う頚髄症の術後に施行したボツリヌス(BTX)治療が,神経症状の改善に有効であった症例を経験したので報告する.
【症例】77歳男性.主訴:頚部の左回旋固定,頚部痛.現病歴:30代より頭部の左回旋がみられ,時間経過とともに常時左を向く状態になった.X−2年に自転車で転倒し,徐々に四肢の痙性麻痺が進行し歩行困難となった.X−1年当院整形外科で頚部ジストニアに伴う頚椎症性脊髄症,外傷後脊髄不全損傷と診断され,椎弓形成術を施行した.術後C5麻痺と思われる両側肩の挙上不可および上肢の筋力低下および痛みがありリハビリが進まず,頚部の左回旋の影響が疑われ術後15日目にBTX治療の適応について当科紹介受診となった.初診時所見:ほぼ臥位で過ごしており,長時間の坐位は困難.膀胱直腸障害あり.頭位は左45°でほぼ固定されており,両胸鎖乳突筋の萎縮と僧帽筋・頭板状筋の筋硬直がみられた.治療経過:硬直のみられる頚部筋群への局所麻酔薬注入により頚部痛は改善したが,本人がBTX治療に不安があったため中止となった.10カ月後,リハビリは継続していたが神経症状,歩行障害の改善がなく再度治療を希望され当科受診.僧帽筋を中心にBTX各10単位×5カ所の注入を行ったところ,施注7日ごろより正面を向けるようになり,坐位での食事が可能となった.2回目からはBTXを合計100単位に増量し,現在までに3回の施注を行っている.治療開始から1年経過した現在では歩行器を使用し屋内を歩行できるまで改善している.
B–4 左脛骨高原骨折術後に疼痛が遷延化した1症例―QSTを用いた病態解析―桂 祐一*1 下 和弘*2 松原貴子*1
*1神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科,*2神戸学院大学総合リハビリテーション学部
【はじめに】疼痛の遷延化の一因として,末梢・中枢感作など疼痛調整機能の変調が指摘されており,それらは定量的感覚検査(QST)を用いて評価される.しかし,QSTは研究報告に留まっており実臨床での応用には至っていない.今回,左脛骨高原骨折術後患者の末梢・中枢感作を含む疼痛病態,身体機能の経時的変化についてQSTを用いて検討した.
【症例】患者は70歳代女性で左脛骨高原骨折に対し観血的整復固定術を施行され,術後より左下肢は完全免荷で,術後12日目に当院へ転院となった.当院入院時評価は,自覚的疼痛強度がNRS 1/10,膝関節可動域は屈曲100°,伸展−10°,末梢・中枢感作指標として両膝関節の圧痛閾値(PPT)45.7/25.1 N(健側/患側),時間的加重(TSP)17/30 mmであった.
【経過】術後43日目まで左下肢荷重完全免荷にて,両松葉杖歩行練習や患部以外の運動療法,膝関節可動域練習を中心とした理学療法を行った.術後44日目より左下肢部分荷重,術後61日目より左下肢全荷重となった.荷重増加に応じて松葉杖歩行から独歩練習へと段階的な負荷量増加とともに日常生活動作(ADL)練習を中心に行ったが,歩行時痛を認め疼痛を伴う活動が多く観察された.術後90日目の自宅退院時には,自覚的疼痛強度はNRS 5/10(歩行時),膝関節可動域屈曲150°,伸展0°,6分間歩行テスト540 m,PPT 47.2/16.8 N,TSP 14/45 mmとなった.
【考察】今回,左脛骨高原骨折術後患者に対して荷重制限に応じた歩行練習や運動療法等の理学療法により,身体機能やADL能力の改善は得られたが,自覚的疼痛強度や末梢・中枢感作の改善には至らなかった.自覚的疼痛強度や末梢・中枢感作などの改善には,疼痛局所だけでなく全身性の有酸素運動を快適強度でペーシングを徹底して行うことが推奨されているため,状態に合わせた運動処方にて漸増的運動療法の実施が必要と考える.
B–5 上肢切断患者の幻肢痛と運動イメージ能力の経時的変化と関連性上銘崚太*1 髙本友希*1 前田 創*1 高瀬 泉*1 戸田光紀*2 下 和弘*3 松原貴子*4
*1兵庫県立リハビリテーション中央病院リハビリ療法部,*2兵庫県立リハビリテーション中央病院診察部,*3神戸学院大学総合リハビリテーション学部,*4神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科
【緒言】上肢切断後に生じる幻肢痛(PLP)の慢性化には幻肢の運動イメージ(MI)能力の低下が関与する可能性が報告されているが,MI能力には鮮明度や心的回転などの多面性があり,どのMI能力がPLPに関与しているかは不明である.また,PLPの疼痛症状とともにMI能力を縦断的に検討したものがほとんどなく,両者の経時的変化と関連性は明らかでない.そこで今回,上肢切断患者2例を対象に,疼痛症状とMI能力を多面的かつ経時的に評価し,両者の関連性について検討した.
【方法】対象は,切断後3,5カ月経過した上腕切断患者A(男性,20歳代),B(男性,30歳代)の2例で,入院時から退院時まで1カ月ごとにPLPの主観的疼痛強度(VAS)と神経障害性疼痛の性質(SF-MPQ-2:MPQ),MI能力を評価した.MI能力は鮮明度評価をKVIQ,心的回転を手・足部のメンタルローテーション(MR),両手干渉課題をBCTで評価した.
【結果】入院時に症例A,BともにPLPを認め,症例AはVAS 78 mm,MPQ 24点,症例BはVAS 48 mm,MPQ 9点であった.症例A,BともにMI能力は,KVIQの一人称MIが低下,手部のMRが遅延し,BCTが低下していた.1カ月後のPLPは,症例AでVAS 64 mm,MPQ 8点,症例BでVAS 35 mm,MPQ 5点となった.症例A,Bともに手部のMRが改善し,KVIQ,BCTに変化はなかった.退院時PLPは,症例A(入院2カ月後)でVAS 7 mm,MPQ 5点,症例B(入院2カ月後)でVAS 22 mm,MPQ 4点とさらに改善した.MI能力は症例A,Bともにさらなる変化はなかった.
【考察】今回,症例A,BでPLPを認め,切断部位に関連するMI能力が多面的に障害されている傾向にあった.症例A,BともにPLPの疼痛症状は経過に伴い改善し,MI能力は1カ月後にMRのみ改善した.これらのことから,今回の上肢切断患者ではMI能力が多面的に障害されており,MI能力のうちMRの改善がPLPの疼痛症状の短期的な改善に関与している可能性が考えられた.
B–6 クロナゼパムによる薬疹が疑われた外傷後有痛性三叉神経ニューロパチーの治療経験藤田陽介*1 西山隆久*2 都築有美*1 前田亮二*1 富野美紀子*1 岩瀬直人*1 板橋俊雄*1
*1東京医科大学八王子医療センター麻酔科,*2西東京中央総合病院麻酔科
クロナゼパムによる薬疹が疑われた外傷後有痛性三叉神経ニューロパチー(PTTN)に薬物療法,眼窩下神経ブロック,高周波熱凝固法(RF),星状神経節ブロック(SGB)を併用した治療経験を報告する.50歳代,女性.既往に喘息とIgA腎症があった.歩行中に転倒し,顔面を受傷したため,当院形成外科を受診した.上顎骨骨折と左頬骨弓骨折の診断でプレート固定術が施行された.術後も痛みが軽快しないため当科受診した.口唇から左上顎に放散する強い痛み(VAS 90 mm)があり,痛みは摂食時に増強した.前医からのメコバラミンを継続し,プレガバリンを処方したが,強いふらつきが出現したため同薬を中止した.局所麻酔薬による眼窩下神経ブロックで一時的な鎮痛効果がみられ,同ブロックとSGBを隔週で施行した.鎮痛強化のため,プレガバリンからクロナゼパムに変更したが,内服開始から2週間後に嘔気と皮膚の発赤が出現した.クロナゼパムによる薬疹として同薬を中止し,ベタメタゾンとクロルフェニラミンマレイン酸塩を静注し,数日で嘔気と紅斑は消失した.左眼窩下神経RFを提案し,当科初診から3カ月後にRFを施行した.初回のRFで左上顎の痛みが軽快し(VAS 60 mm),麺類の摂食が可能となった.3回目のRFで左上顎の痛みはほぼ消失した.その後,痛みは自制内となり,終診となった.三叉神経ニューロパチーの最も多い原因は外傷である.傷害領域の持続的な灼熱痛や電撃痛が典型的な症状である.治療の主流は抗てんかん薬や抗うつ薬による薬物療法だが,国外ではPTTNに上頚神経節ブロックが有効だったとの報告もある.クロナゼパムは他の抗てんかん薬と比較して薬疹のリスクは低いとされるが,国内ではクロナゼパムによる苔癬型薬疹の報告がある.クロナゼパムの中止により紅斑が消失した経過から,薬疹であった可能性は高い.薬剤アレルギー歴を有する患者には,神経ブロックを主軸にした治療がより安全といえる.
太田志摩*1 田中智哉*1 三宅舞香*1 石山実花*1 川喜田美穂子*1 網谷 謙*1 松原貴子*2
*1厚生連松阪中央総合病院麻酔科,*2三重大学医学部附属病院緩和ケア科
【はじめに】ケタミンは皮膚,筋肉,骨など体性神経系の痛みに対し強い鎮痛作用を持ち,その作用はNMDA受容体に対する非競合的拮抗作用により説明されている.今回分子標的薬の副作用による皮膚症状増悪を合併した担がん患者の疼痛コントロールにケタミンを使用した症例を報告する.
【症例】30代女性.201X年大腸がんstageIVとの診断で原発巣にステント留置後XELOX 6コース施行,201X+2年レゴラフェニブ使用で有害事象出現し中止.同年右肝右葉転移に対しRT30Gy10Fr施行後バニツムマブ開始となったが,ざ瘡様皮疹が出現.湿布を張った後,かぶれ,表皮壊死,剥離から2次感染し背部痛が増悪し当院緩和ケアチーム紹介となった.
背部痛のため仰臥位になれず,睡眠障害,食思不振が続き,背部の接触時痛と消毒,洗浄時に多大な苦痛を訴えており痛覚過敏を伴うと考えられた.オキシコドン注射液でタイトレーションを開始し16 mg/日で,安静時痛がやや軽減し,精神的な落ち着きが図れたが眠気のため増量を中止した.処置時のレスキュー使用は効果なく,安静時の背部痛も残存しており仰臥位になれず過ごされていたためケタミン24 mg/日持続静注を開始した.背部の処置時に初回ケタミンレスキュー使用後,持続使用開始したところ安静時の背部痛が消失した.経口摂取量も増え,仰臥位で睡眠をとれるようになった.背部の処置時のレスキュー使用も効果が得られており0.5 ml(5 mg)を処置前後に使用することとした.その後,県内の医療資源の乏しい地域にある自宅への外泊希望がありオキシコドン注射液をヒドロモルフォンに変更,ケタミン持続静注は倫理委員会を通し同意書取得の後,内服に変更し,数日間外泊することができた.
【結語】背部痛は表皮剥離による侵害受容性疼痛が主因と考えたが,NSAIDS定期使用にて症状軽快せずオピオイドを開始.さらに少量のケタミン静注追加使用にて鎮痛効果が得られ,その後,内服に変更した症例を経験した.
C–2 脊柱起立筋膜面ブロックにより右胸背部のがん性疼痛緩和を試みた1症例加藤利奈 草間宣好 太田晴子 加古英介 徐 民恵 杉浦健之 祖父江和哉
名古屋市立大学大学院医学研究科麻酔科学・集中治療医学分野
【はじめに】脊柱起立筋膜面ブロック(erector spinae plane block:ESPB)は新たな鎮痛方法として注目されているが,緩和ケア領域での報告は少ない.今回,肺がんによるがん性疼痛に対してESPBを行った症例を経験したので報告する.
【症例】59歳の男性.慢性腎不全で約10年前に透析導入となった.X−6年,肺腺様嚢胞がんの多発転移(両肺,唾液腺)と診断された.化学療法の適応は乏しいと判断され,放射線治療が繰り返し施行されてきた.X年4月,右胸壁の転移巣拡大により右季肋部痛が出現した.放射線治療が予定されたが,痛みにより仰臥位で安静が保てないため当センターに紹介受診となった.T6~8の肋間神経ブロックを施行したところ痛みはNRS 10/10からNRS 7/10に軽減し,放射線治療を遂行できた.X年5月,右肩甲骨下部の背部から前胸部(T4~8領域)にかけて痛みが出現した.胸膜播種巣による痛みと考えられ,追加の放射線治療が予定された.痛みは臥位や上肢挙上で増強し,仰臥位で安静を保つことが困難であった.オキシコドン持続皮下投与が開始されたが効果不十分なため,当センターに再度受診となった.座位にてTh6横突起レベルでESPBを施行した(0.375%ロピバカイン20 mlを投与).冷覚はT2~L1で低下し,NRSは7/10に低下した.翌々日,再度ESPBを施行.冷覚はT1~12で低下し,NRS 0/10となった.痛みの軽減および消失によりESPB施行両日とも放射線治療を遂行することができた.放射線治療後,オピオイドで疼痛管理可能となり転院となった.
【結語】本症例ではESPBを2回施行したが,NRSの改善度が異なった.2回目のESPBでは局所麻酔薬が傍脊椎腔へ十分広がり,内臓痛も緩和された可能性が考えられた.ESPBは傍脊椎ブロックと比べて安全性が高く,坐位でも容易に施行可能であり,本症例では有用な方法であった.
C–3 経皮的椎体固定術が有用であった圧迫骨折を伴う転移性脊椎腫瘍の1症例杉浦志帆乃 西 孝幸 山田圭輔 谷口 巧
金沢大学附属病院麻酔科蘇生科
余命が3カ月前後と考えられた患者での転移性椎体腫瘍による疼痛に対しては,オピオイド鎮痛薬による薬物療法や放射線治療が行われることが多い.一方で,近年では最小侵襲脊椎安定術が行われるようになっている.今回,薬物療法や放射線治療が無効だったが,経皮的椎体固定術が有用であった症例を経験した.
【症例】79歳の男性.左腎盂がん,多発骨転移,脊髄転移,肝転移,副腎転移を指摘され,第11胸椎の転移性腫瘍による圧迫骨折のため,持続する腰痛と強い体動時痛を訴えた.悪性度の高い腫瘍と予想され,泌尿器科主治医からオキシコドン徐放薬(30 mg/日)と速放薬(5 mg)を処方され,放射線治療(20 Gy/5回分割)が行われたが軽減せず,頻回のレスキュー使用が続いた.全身麻酔下に,経皮的椎体固定術が行われ,上下5椎体を固定し,手術時間は2時間,術出血量50 gであった.術後早期より背部痛の著明な軽減を認め,オキシコドンの減量を進め,術後3週目に医療用麻薬を中止でき,リハビリテーションを続けている.
【考察】高齢者や余命が3カ月前後と考えられる患者では,転移性脊椎腫瘍による痛みに対して,外科治療の選択に躊躇することも多かった.しかし,近年の最小侵襲脊椎安定術は,切開範囲や出血は少なく,短時間で終えることができる.本例では,圧迫骨折が著明で,先行した放射線治療の効果は乏しく,最小侵襲脊椎安定術が有用であった.多発転移を有し,余命が数カ月と考えられる患者であっても,固定術の適応に関して,整形外科医も含めて検討すべきである.
C–4 がん治療中の痛みの原因が腰椎椎間板ヘルニアであった症例中村好美 吉村文貴 山口 忍 田辺久美子 飯田宏樹
岐阜大学医学部附属病院麻酔科疼痛治療科
【症例】33歳女性.
【主訴】左腰下肢痛.
【現病歴】2年前に他院にてS状結腸がん,多発肝転移に対して手術療法,多発リンパ節転移に対して化学療法が行われていた.傍大動脈周囲のリンパ節転移による腰部の痛みに対してオピオイド鎮痛薬が導入され,痛みの増悪とともにオピオイド鎮痛薬の増量で対応されていたが疼痛コントロール不良のため当科に紹介となった.
【経過】来院時,せん妄,呼吸抑制があり,オピオイド鎮痛薬(オキシコドン120 mg)による副作用と考えられ,オピオイド鎮痛薬の減量(オキシコンチン80 mg)を行った.1週間後の再診では,意識は清明となり,痛みの主訴は左腰殿部痛と下腿外側,母趾にかけての放散痛であった.左下肢伸展挙上テスト30度で陽性,左足関節の背屈は徒手筋力測定で2/5,左母趾の感覚低下7/10があった.MRI撮影を行い,L4/5レベルに後正中~左椎間孔内外側型椎間板ヘルニアがあったため神経ブロック療法を計画した.腰部硬膜外ブロックを計3回,L5神経根に対してパルス高周波法を行ったが,痛みが残存(NRS 8から4)したため,当科受診2カ月後に手術となった.後方に脱出した椎間板ヘルニアがL5神経根圧迫しており,ヘルニアを切除して除圧したところ,左腰下肢痛は消失した.
【考察】本症例は初診時,傍大動脈周囲のリンパ節転移によるがんに起因する痛み(がん疼痛)と考えられていたが,併存疾患(腰椎椎間板ヘルニア)に起因する痛みであった.がん患者の痛みにはがんに直接的に関連した痛み,がん治療に関連した痛み,併存疾患による痛みがあり,がん患者であっても非がん性の痛みの可能性を念頭に置いて対応することが必要である.
中楚友一朗*1,2 宮川博文*1 西須大徳*1,2 井上雅之*1,2 尾張慶子*1,2 新井健一*1,2 牛田享宏*1,2
*1愛知医科大学運動療育センター,*2愛知医科大学学際的痛みセンター
【はじめに】慢性膝痛に運動療法は有効だが,運動中の膝痛により継続を断念してしまう症例が少なくない.運動アドヒアランス(継続性)を高めるためには,補助手段の検討が必要である.今回,運動中に経皮的電気神経刺激(transcutaneou electrical nerve stimulation:以下,TENS)を併用することで,膝痛をコントロールしながら運動が継続でき,身体機能向上が得られた症例を経験したため報告する.
【症例】80代女性.主訴:膝痛.診断名:変形性膝関節症(Kellgren-Lawrence分類:Grade2),右人工股関節手術後(X−6年),糖尿病,高血圧.
【経過】50代より膝痛あり.X−6年より健康増進施設の利用を開始した.X−1年に膝痛が増悪し,薬物療法や侵襲的治療では改善せず,身体機能は低下し,転倒を繰り返すようになった.健康増進施設で実施していた自転車エルゴメータや歩行練習などの運動プログラムが膝痛のために困難になった.X年よりTENSを装着した状態での運動(以下,運動+TENS)を開始した.運動+TENS時は一時的な鎮痛,歩行可能距離延長などの反応があった.運動+TENSは約1カ月間健康増進施設にて実施し,その後は適宜補助的に利用した.X+1年後,膝痛numeric rating scale 6→1,Japanese knee osteoarthritis measure 43→70,timed up & go test 15秒→11秒に改善し,1年間の転倒エピソードはなく,運動を週2~3日継続できた.
【まとめ】痛みにより運動の導入・継続に難渋する慢性膝痛症例に対しては,TENSの補助利用の有用性が示唆された.
D–2 下肢運動発達の左右差が慢性膝痛に関与したと推察される自閉症スペクトラム女児の1症例城 由起子 松原貴子 尾張慶子 牛田享宏
愛知医科大学医学部学際的痛みセンター
小児の痛みでは,発達障害の関与や家族関係,学校での心理社会的な問題が影響していることは少なくない.一方,成長過程であることから運動機能の影響は無視できず,発育状況についても考慮が必要である.そのため,小児の痛みを正確に捉えるには集学的評価が欠かせない.今回,発達障害はあるものの痛みの原因は身体の発育遅延による運動機能の問題である可能性がうかがわれる女児を経験したので報告する.
【症例紹介】11歳女児.自閉症スペクトラム(ASD).5歳ごろに右膝関節が完全に伸展しないことに母親が気付き,小学校1年生の秋に右膝痛出現.整形外科受診し,レントゲンやMRI,末梢神経伝導検査等行うも明らかな所見はなく,症状持続したことからCRPS疑いで当院紹介受診となった.
理学的所見:右膝関節伸展時に膝前面に疼痛出現.右膝関節伸展可動域制限(−10度)とそれによる脚長差,大腿周径の左右差(右<左),右下肢軽度筋力低下を認めたが,その他,明らかな所見やCRPSの診断基準に該当する所見は認めなかった.
看護所見:家族関係は良好で問診時も母親は一歩引き,娘に対して自分の口で表現するように促している感じであった.学校生活にストレスはないと話しており,心理面の問題を抱えている印象は受けなかった.
乳幼児期からの経緯:定頚は生後5カ月,捕まり立ちは1歳半とわずかに発達の遅れを認めた.運動獲得は,スキップ動作が9歳,1足1段での階段昇降が10歳であった.
【アセスメント】上記の情報から,心理社会的因子の影響やASDの関与の可能性は低いと考えられた.一方で運動発達のわずかな遅れ,とくに下肢機能の発達に左右差があるのは明らかであった.さらに現在は,成長に伴う活動量や体重の増加,膝関節屈曲拘縮による右膝へのメカニカルストレス増大が痛みに関与している可能性を考え,筋力増強や膝関節可動域改善および運動の再学習を目的とした運動療法を行っており,その経過を報告する.
D–3 演題取り下げ D–4 慢性腰背部痛と運動恐怖を抱えながらも,自宅で運動療法を継続できた1例牛田健太*1 丸山一男*1 髙村光幸*2 野瀬由圭里*2
*1三重大学大学院医学系研究科麻酔集中治療学,*2三重大学麻酔科ペインクリニック外来
【目的】慢性疼痛患者には一過性ではなく継続的な運動が推奨されるが,運動恐怖を抱えた患者は運動を継続できない場合も多い.今回,慢性腰背部痛(CLBP)と運動恐怖を抱えながら,自宅で運動療法を継続できた症例を経験したので報告する.
【方法】症例は70歳代女性.X−16年にCLBP・頻尿出現,X−7年に両下肢痺れ出現.その後痛み悪化,痛みで動作が遅くなり,トイレに間に合わず失禁が増えた.X−4年にL5~S1脊髄脂肪腫終糸切断係留解除術施行,一時的な改善はあったが,元の状態に戻った.X−3年に当科漢方外来・鍼灸外来受診.漢方外来で八味丸,加工ブシ末,桂枝茯苓丸処方,鍼灸外来で通電と温灸施行.他,腎臓泌尿器科から過活動膀胱に対しコハク酸ソリフェナシン処方.X年5月,外来理学療法開始.初期評価では,安静座位の痛みがNRS 5.起き上がり動作の痛みはNRS 8で,運動恐怖が強く,動作に30秒程要した.他,指床間距離15.0 cm,PCS 33点(反芻11点,無力感15点,拡大視7点)だった.介入当初から起き上がり動作改善を目標に,運動療法(腹筋・起立筋群の筋力ex.,胸腰椎ROMex.等)を指導.運動による疼痛緩和や各運動の目的を詳しく説明し,患者教育にも重点を置いた.2週間ごとに理学療法評価.適宜,負荷量を調節し,運動恐怖を助長させないよう心掛けた.10月,漢方外来で八味丸を治打撲一方に変更,安静時の痛みが減少.
【結果】11月時点で運動を継続できていた.痛みは安静時NRS 3に,起き上がり時NRS 4に減少.起き上がりも20秒程で可能になり,指床間距離は9.0 cm,PCSは29点(反芻11点,無力感10点,拡大視8点)に改善.
【考察】継続的な運動は,痛みやADL・QOLを改善させる.本症例は,理学療法士の患者教育や運動処方が運動継続に繋がり,起き上がり動作やROM,破局的思考の改善に関与したと考える.運動恐怖を持つ慢性疼痛患者も,恐怖に考慮し運動処方を行えば改善が期待できる.
D–5 大腿骨頚部骨折術後の高齢患者2症例における痛みの多面的評価の経時的検討山田 良*1 下 和弘*2 松原貴子*1
*1神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科,*2神戸学院大学総合リハビリテーション学部
【緒言】高齢の大腿骨頚部骨折患者では約54%で痛みが慢性化すると報告されている.痛みの慢性化には認知・情動的側面や神経感作など多面的要素が関与すると考えられている.しかし,リハ領域の臨床場面において,これらの多面的要素が痛みにどのように影響するのかについてはほとんど調べられていない.そこで,高齢の大腿骨頚部骨折術後の2症例に対し入退院時の多面的評価にもとづき,痛みの慢性化に関与する因子について検討した.
【方法】症例は60歳代,80歳代の女性2名(症例A,B)で,大腿骨頚部骨折に対し,症例Aは観血的骨接合術,Bは人工骨頭置換術を施行され,当院へ転院となった.評価は,自覚的疼痛強度(NRS),機能障害(HOOS),破局的思考(PCS),痛みの自己効力感(PSEQ),運動恐怖(TSK),罹患部(大腿)および遠隔部(下腿)の圧痛閾値(PPT)を入退院時に測定した.
【結果】入院時のNRSは症例A/Bでそれぞれ5/7,HOOSは74.3/35.4点.PCSとPSEQは2症例とも正常範囲内,TSKはそれぞれ46/34点で,症例Aが高値であり運動療法に対して消極的な発言も多くみられた.PPTは2症例ともに大腿と下腿の両方で患側が低値を示した.退院時,NRSはA/Bでそれぞれ5/2となり,HOOSは70.8/72.2点で,TSKは症例Aで37点とカットオフ値を下回らなかった.PPTは症例Bで下腿のみ改善したが,Aは改善を示さなかった.
【考察】回復期リハによって症例Bは身体機能だけでなく神経感作を含めた疼痛症状の改善を認めたが,症例Aは入院時の運動恐怖が高値で,患側PPTは低値を示し,退院時にもそれらの改善がなく自覚的疼痛も変化しなかった.症例Aのような自覚的疼痛だけでなく運動恐怖や神経感作が強い場合には,罹患部以外の運動を実施し,患者教育も併用することで運動恐怖や神経感作を含めた疼痛調整機能の改善を図ることが必要であったと考える.今後は多面的評価結果にもとづくリハアルゴリズムについて検討する必要がある.
D–6 疼痛の多面的評価の結果に応じたリハ介入が奏効した膝OA症例金津篤志*1 服部貴文*2,3 丹羽祐斗*2 下 和弘*4 松原貴子*2,4
*1医療法人熊本桜十字桜十字八代リハビリテーション病院,*2神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科,*3前原整形外科リハビリテーションクリニック,*4神戸学院大学総合リハビリテーション学部
【緒言】今回,リハ介入時の言動から,疼痛認知・情動や身体イメージ異常など複雑な疼痛症状を呈する膝OA患者に対し,疼痛の多面的評価を行い,結果に応じたリハ介入を導入し奏効した経験について報告する.
【症例】患者は右膝OA,50歳代男性.右TKA後に疼痛が改善せず,術後2カ月に当院紹介,外来リハ開始となる.リハ開始当初より,膝関節固有感覚の異常,安静・他動時の筋緊張亢進,自動運動の制御困難などを認めた.また,リハ時の言動から,疾病に関する過剰な情報や消極的な感情により破局的思考に陥っていることがうかがえた.そのため,疼痛認知・情動や身体イメージ異常などの多面的な評価を行った.疼痛とADL,認知・情動について,主観的疼痛強度NRS 8,右膝屈曲/伸展ROM 110°/−25°,KOOS 13.7%,PCS 43点,TSK 49点,HADS-A 17点,HADS-D 13点であった.身体イメージについて,FreKAQ 22点で,健側と比較して“動かしにくい”,“右膝が腫れているようなイメージ(実寸よりも大きく感じる)”などneglect-like symptomの訴えもあった.以上の評価より,疼痛認知・情動に対する患者教育と身体知覚異常に対する神経リハビリテーション(識別課題)を併用した運動療法を行った.
【経過】介入開始1カ月後(術後3カ月)より疼痛と右膝ROMの改善がみられた.介入開始2カ月後(術後4カ月)には,疼痛NRS 4,右膝屈曲/伸展125°/−5°,KOOS 39.3%,PCS 20点,TSK 40点,HADS-A 6点,HADS-D 10点,FreKAQ 5点となり,また,右膝の身体イメージは実寸と同程度まで縮小した.
【考察】今回,膝局所の理学的検査に加え,患者の言動からうかがえた複雑な疼痛症状に対し疼痛認知・情動や身体イメージなど多面的評価を行い,それら結果に応じたリハ介入を選択,実践することで疼痛諸症状が改善した.よって,患者の言動を注意深く聞き取り,多面的評価を取り入れることの重要性が改めて示された.
城 由起子*1 伊藤百音*1 板本真準*1 松原貴子*2
*1名古屋学院大学リハビリテーション学部,*2神戸学院大学総合リハビリテーション学部
【目的】医療者と患者のコミュニケーションが患者の症状にさまざまな影響を与えることは臨床で経験する.とくに,痛みの診療においては共感的態度で患者に接することが必要とされており,適切な共感的声掛けが痛みそのものを軽減させることも報告されている.一方,昨年から拡大している新型コロナウイルス感染症の影響により,遠隔でのオンライン診療が急速に広がっている.しかし,オンラインによるバーチャル環境での共感的声掛けが鎮痛効果をもたらすかは明らかでない.本研究はバーチャル環境での共感的声掛けによっても対面と同等の鎮痛効果が得られるのかを調べた.
【方法】対象は健常者45名(男27,女18)とし,共感的声掛けを対面で行う対面群,別室からモニターを介してオンラインで行うバーチャル群,共感的声掛けを行わない対照群に振り分けた.なお,共感者は対象者と同世代の同性とした.全ての対象は,10℃の冷水に片側手部を1分間浸漬し,対面群とバーチャル群はその間15秒間隔で共感的声掛けを行った.評価は冷水刺激の疼痛強度(VAS),痛みに対する効力感(PSEQ)と破局的思考(PCS)とした.また,共感的声掛けの共感度を第三者の男女各1名により4段階のリッカート尺度で評価した.
【結果】疼痛強度は対照群と比べ対面群で有意に低値(p=0.034)であったが,バーチャル群では差がなかった(p=0.703).なお,3群間でPSEQ(p=0.426)とPCS(p=0.506)に差はなく,共感度も対面群とバーチャル群で差はなかった(p=0.653).
【考察】対面での共感的声掛けは鎮痛効果をもたらすが,バーチャル環境ではその効果が得られにくいことが明らかとなった.共感の鎮痛効果については,共感者と被共感者の関係性や共感時の距離,接触の有無などさまざまな条件で変化することは知られている.遠隔でのオンライン診療が必要とされる昨今において,対面診療と同等の効果を得るための方法,環境設定を引き続き検討していく必要がある.
E–2 慢性腰痛患者に対するペインマネジメントプログラムにおける痛みの自覚的改善度への影響因子井上雅之*1 井上真輔*2 西原真理*2 新井健一*2 尾張慶子*2 畠山 登*2 牛田享宏*2
*1愛知医科大学運動療育センター,*2愛知医科大学医学部学際的痛みセンター
【目的】慢性腰痛の病態には心理社会的要因や身体的要因が複雑に関与するため,痛みの除去を第一義とせず,精神心理・身体機能を改善し,QOLを向上させることが治療の主目的とされる.われわれは慢性腰痛を含む慢性疼痛患者を対象として,教育,認知行動療法などの講義と運動を組み合わせた外来型のペインマネジメントプログラムを実施している.今回,本プログラムに参加した慢性腰痛患者におけるプログラムの効果および痛みの自覚的改善度に影響する因子を検討した.
【方法】対象は,3カ月以上持続する慢性腰痛を有する本プログラム参加者83名(平均年齢67.3歳)とした.プログラムの定員を5~7名とし,教育(痛みの神経科学メカニズムペーシング,ゴールセッティングなど)と運動(ストレッチング,筋力増強運動,ヨガなど)を組み合わせ,週1日,全9回実施した.講義は医師,理学療法士が担当し,運動は理学療法士,ヨガインストラクターが担当した.プログラム前後に,痛みの強さ(VAS),生活障害度(PDAS),不安・抑うつ(HADS不安,HADS抑うつ),破局的思考(PCS),自己効力感(PSEQ),10 m歩行速度(10 m歩行),6分間歩行距離(6MD),等尺性体幹屈曲・伸展筋力などの評価を実施した.また,プログラム終了時に痛みの自覚的改善度を7段階(1:非常に悪化~7:非常に改善)で評価した.分析は,1)プログラム前後における各評価項目の比較,2)痛みの自覚的改善度を従属変数,他の評価項目の変化率を独立変数とする重回帰分析を実施した.
【成績】プログラム前後において,VAS,PDAS,HADS不安・抑うつ,PCS,PSEQ,10 m歩行,6MDの有意な改善を認めた(p<0.05).また,痛みの自覚的改善度に影響する因子として,PCS,6MDが選択された.
【結論】今回の結果より,慢性腰痛患者の痛みの自覚的改善度には,実際の痛みの強さの変化よりも,破局的思考や運動耐容能の変化が強く影響する可能性が示唆された.
E–3 高強度インターバルトレーニングによる鎮痛効果の検証堂北絢郁*1 丹羽祐斗*1 常盤雄地*1 下 和弘*2 松原貴子*1
*1神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科,*2神戸学院大学総合リハビリテーション学部
【緒言】運動誘発性鎮痛(EIH)を誘起するには,有酸素運動では中~高強度の運動を20分以上継続する必要があるとされている.一方,このような運動は,易疲労性のある慢性疼痛患者では実施困難なだけでなく,逆に疼痛を増悪させることが危惧されている.近年,高強度の有酸素運動を短時間かつ間欠的に行う高強度インターバルトレーニング(high-intensity interval training:HIIT)が身体機能や心肺機能の向上のための運動方法として注目されており,短時間かつ少ない疲労感で高い運動効果をもたらすことが報告されている.そのため,慢性疼痛治療にも応用され始めておりEIH効果を示す報告が散見されつつある.しかし,HIITによるEIHをもたらす最短の運動時間は明らかでなく,臨床応用に向けた具体的な運動処方内容は確立されていない.そこで,本研究では慢性疼痛治療としてのHIITプロトコルの確立を目指し,EIHが得られる最短運動時間についてまずは健常者を対象に検討した.
【方法】対象は若年健常者22名とした.HIITは4分間の高強度下肢ペダリング運動(70% HRR)と2分間の休息を1セッションとし,連続で4セッション(総運動時間は16分間)実施した.疼痛評価は僧帽筋と大腿四頭筋にて圧痛閾値(PPT)を,手背にて中枢感作の指標である時間的加重(TS)をHIIT前と各セッション後に評価した.
【結果】HIIT前と比較し,僧帽筋,大腿四頭筋において,PPTは1セッション後に有意に上昇し,4セッション後まで上昇を維持した.一方でTSは4セッション後に有意に減衰した.
【考察】今回,HIITにより1セッション目の4分間の高強度運動終了後から痛覚感受性の低下,4セッション(計16分間の運動)後に中枢感作の抑制といった疼痛調節機能改善が認められた.以上より,高強度運動開始後数分でEIH効果が得られるが,中枢性疼痛調節系を介した鎮痛応答が生じるには総運動時間16分以上の運動を行う必要があることが示唆された.
E–4 運動誘発性鎮痛のための運動処方の検討―運動強度別の全身波及効果について―丹羽祐斗*1 常盤雄地*1 下 和弘*2 松原貴子*1
*1神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科,*2神戸学院大学総合リハビリテーション学部
【緒言】運動によって痛みが緩和する現象は“運動誘発性鎮痛(exercise-induced hypoalgesia:EIH)”と称され,運動部局所だけでなく全身性に鎮痛効果が得られる.そのため,罹患部以外の運動で鎮痛効果が得られることから慢性疼痛患者の疼痛治療として有用性が非常に高い.ところが,EIHは運動強度や時間,様式の影響を受けるとされるものの,EIHの全身波及効果がそれらによって異なるかどうかは明らかでない.そこで今回,運動強度に着目し,3種類の異なる強度の有酸素運動を実施し,EIHの全身波及効果について定量的感覚検査を用いて神経学的に検討した.
【方法】対象は若年健常者71名とし,全員に安静座位と30,50,70% HRR(低・中・高強度)の下肢ペダリング運動を各30分間,無作為順に別日に実施した.各条件前後に運動部(大腿四頭筋),非運動部(上腕二頭筋,僧帽筋)の圧痛閾値(pressure pain threshold:PPT)と神経感作の指標である痛みの時間的加重(temporal summation of pain:TSP)を測定し,運動前後での変化について効果量を求めた.なお,効果量の指標にはr(0.1≦r<0.3:小,0.3≦r<0.5:中,0.5≦r:大)を用いた.
【結果】安静座位前後でPPT,TSPに変化を認めなかった.運動条件では,全運動強度でPPTは全部位とも上昇を認め,効果量は全て「大」であった.一方,運動部のTSPは全運動強度で減弱を認め,その効果量は低強度で「中」,中・高強度で「大」であった.非運動部のTSPは低・中強度運動で減弱を認め,その効果量はそれぞれ「小~中」「中~大」であったが,高強度運動では変化を認めなかった.
【考察】運動部では全運動強度でEIHを認めた一方,非運動部では低・中強度運動でのみ神経感作抑制によるEIHを認めた.このことから,中枢性疼痛調節系を介するEIHの全身波及効果を期待する場合,高強度ではなく低強度や中強度の運動が適している可能性が示唆された.
E–5 脊椎圧迫骨折後の急性腰痛に対するtranscutaneous electrical nerve stimulationの鎮痛効果に関する検討坂野裕洋*1 村田 淳*2 松原貴子*3
*1日本福祉大学健康科学部,*2医療法人宏和会リハビリテーション部門,*3神戸学院大学総合リハビリテーション学部
【緒言】transcutaneous electrical nerve stimulation(TENS)は,下行性疼痛抑制系や脊髄内の疼痛調節系の賦活による鎮痛を目的に用いられる物理療法であり,刺激部位の遠隔でも鎮痛効果が期待されている.一方,脊椎圧迫骨折(VCF)は椎体の圧壊に伴う腰背部痛を主症状とし,軽症例では受傷から約2週間のベッド上安静とベッドサイドでの運動療法が行われる.本研究では,VCF患者の安静期間に行われる運動療法の補助的手段としてTENSを併用した際の鎮痛効果や機能改善に及ぼす影響について検討した.
【方法】対象は,VCF後に保存的治療のため14日間のベッド上安静となった入院患者32名とし,性別で層別化した後に乱数表を用いて疑似TENSを行うsham群13名とTENSを行うTENS群に無作為割付を行った.なお,全ての被験者はNSAIDsやアセトアミノフェンを服用していた.TENSは,左右の僧帽部(非有痛部)に電極を貼付し,安静期間中に毎日行われる運動療法の前に20分間実施した.評価は,体動時の疼痛強度(VAS),抑うつ・不安(HADS),痛みに対する破局的思考(PCS),恐怖回避思考(TSK),機能障害(PDAS)について,治療者とは異なる盲検化された評価者によって安静期間の前後に行われた.
【結果】安静期間前の値は全評価項目で群間差を認めなかった.TENS群のVASは安静期間前後で有意な改善を認め,期間後の値はsham群と比較して有意に低値であった.一方,その他の評価項目については両群で安静期間前後に差を認めず,期間後の値も群間差を認めなかった.
【考察】VCF患者のベッド上安静期間に行う運動療法とTENSの併用は,疼痛管理の手段として有用である可能性が示唆される.しかしながら,痛みの情動・認知的側面および機能障害に対する改善効果は明らかでない.ただし,本研究の制限として対象者数が少ないこと,TENS部位が罹患部遠隔で罹患有痛部TENSについて未検討であることから,さらなる検討を要する.
畑中浩成*1 松川 隆*2 田中秀治*3
*1山梨大学麻酔科,*2山梨大学,*3国士舘大学
【目的】ストレスチェック制度を医療従事者について検討した.
【方法】厚生労働省の職業ストレス簡易調査票57項目―自身の仕事,症状や周りの支援,満足度合いについて検討した,後ろ向き調査である.
【結果】病棟の繁忙度合いが高いときに高ストレスとなった.
【考察】メンタルヘルスの問題はデリケートである.相談窓口は少ない.相談者や相談応対する方の両者に心理的敷居がある.制度はこの隙間を埋める.現代にマッチしている.情報通信機器が利用できる.個人が問題を抱えていても,他者が介入できず,放置されている.現代社会は多忙で他者にかかわりにくい現状がある.個人主義的である.ストレスチェック制度導入は突破口になるかもしれない.ただ普段の職場巡視が必要である.制度はストレスを点数化しているためストレスが見える化して,自分自身の気付きを促して,まずは自分で変化する.ストレス不調の未然防止になる.「一次予防」.メンタル不調は個人の問題でなく,組織の問題である.この気持ちが組織改革になる.メンタルヘルス不調は人間関係や長時間労働が要因だからだ.集団の分析が必要である.職場環境改善になる.ただ,犯人探しとなり,上司の責任追及となる可能性がある.COVID-19はさらに医療従事者のストレスを増大させた.感染予防対策が増えた.社会が変化した.ストレスにより離職者が増えた.少ない人数で業務をこなす.負のスパイラルになっている.身体の悪影響があれば,医師が介入して,管理者に事後措置を提案すべきである.業務遂行能力が発揮できないのは要注意である.
F–2 認知症高齢者における運動療法による日常生活活動の改善に疼痛がおよぼす影響中田健太*1 下 和弘*2 松原貴子*2
*1池田リハビリテーション病院リハビリテーション部,*2神戸学院大学総合リハビリテーション学部
【緒言】認知症高齢者の疼痛評価にはAbbey pain scale(APS)などの疼痛行動観察評価が推奨されている.しかし,臨床での報告は少なく,従来のVASのような主観的評価では適切に評価できない認知症高齢者の疼痛病態はいまだ明らかではない.一方,運動療法は疼痛症状や身体機能を向上させ日常生活活動(ADL)を改善することが期待されるが,疼痛評価が難しい認知症高齢者ではその効果は十分に検証されていない.そこで認知症高齢者に対して,行動観察評価を用いて,疼痛の有無による運動療法のADL改善効果について比較検討した.
【方法】対象は運動器疾患にて当院回復期病棟に入院した認知症高齢者43名とし,入院時のAPSによりAPS<3点を無痛群(22名,年齢86.0±6.2歳,MMSE 17.3±7.8点,APS 0.8±1.0点)と,APS≧3点を有痛群(21名,年齢85.1±7.5歳,MMSE 15.4±8.3点,APS 4.5±2.1点)の2群に分けた.評価項目はADL評価(functional independence measure:FIM)の運動項目(m-FIM)を入院,退院時に評価した.なお,運動療法は関節可動域練習や筋力増強練習,歩行を含めたADL練習など標準的なものを実施した.
【結果】在院日数は80.0±14.5日であり両群に差はなかった.入院時のm-FIMは両群で有意な差はなかった(無痛群:35.4±9.5点,有痛群:31.0±14.0点,p=0.10).退院時のm-FIMは両群ともに入院時と比べ有意な増加(無痛群:71.7±15.9点,p<0.01,有痛群:59.4±19.9点,p<0.01)を認めたが,無痛群に比べ有痛群で低い傾向(p=0.07)を示した.
【考察】今回,認知症高齢者に対して,標準的な運動療法を行うことで,疼痛の有無にかかわらずADLの改善を認めたが,その改善効果は入院時に疼痛行動を有しているもので低い可能性が示唆された.今回,認知症高齢者の治療効果に影響を及ぼす可能性のある疼痛について,行動観察により定量評価することの重要性がうかがえた.
F–3 高齢者の骨折術後痛の遷延化と運動イメージ能力との関係性山口修平*1 下 和弘*2 松原貴子*3
*1済衆館病院リハビリテーション科,*2神戸学院大学総合リハビリテーション学部,*3神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科
【緒言】人工膝関節置換術後痛や肩腱板修復術後痛はリハで対応する機会の多い術後遷延性疼痛である.近年,運動器疾患患者において運動イメージ(MI)能力の低下が報告されているが,運動器の術後痛の遷延化にMI能力低下が関与する可能性がある.高齢者に多い大腿骨近位部骨折も術後遷延性疼痛が生じやすい疾患だが,MI能力との関係性は明らかでない.そこで,大腿骨近位部骨折の術後痛の経過にMI能力が関与するかどうかを検討した.
【方法】対象は当院回復期リハ病棟に入院中の大腿骨近位部骨折術後患者10名(年齢81.3±7.7歳)とし,入院時から退院時(術後2~8週)まで1週ごとに疼痛,身体機能,MI能力を評価した.疼痛は歩行時痛(NRS),身体機能はTUG,MI能力は鮮明度(KVIQ),手・足部の心的回転(MR),上下肢の心的時間(MC)にて評価した.なお,MCは上下肢それぞれの課題に対する実運動とMIの遂行時間の差を指標とした.
【結果】入院時NRS 3.9±2.3,TUG 21.1±9.8秒,KVIQ 22.2±3.8点,手部/足部MR 2.9±1.0/2.6±1.5秒,上肢/下肢MC 20.8±22.3/77.5±29.5%であった.その後,NRS,TUG,下肢MCは徐々に改善し,退院時にはNRS 1.3±1.6,TUG 15.0±6.2秒,下肢MC 51.4±38.9%となったが,KVIQ,手部/足部MR,上肢MCは改善を認めなかった.また,退院時に疼痛が残存した1症例は入院時から退院時にかけてTUG(入院時/退院時:35.3/26.1秒)は高値,KVIQ(16/15点),足部MR(5.4/5.1秒),下肢MC(139.6/122.3%)は低値のままであった.
【考察】今回の大腿骨近位部骨折術後患者では術後痛の軽減とともに身体機能と下肢MCが改善した.一方,疼痛残存例では入院時から有痛下肢に関連したMI能力が低い傾向を示し,退院時においても改善がみられなかった.以上より,術後の回復過程においてMI能力の改善が見込めない術後痛患者では改善症例と比べ術後痛が遷延する可能性が示唆された.
F–4 電流刺激を用いた末梢神経線維別のconditioned pain modulationの検討下 和弘*1 小河 翔*2 松原貴子*3
*1神戸学院大学総合リハビリテーション学部,*2社会医療法人愛仁会尼崎だいもつ病院,*3神戸学院大学大学院総合リハビリテーション学研究科
【緒言】侵害刺激(条件刺激)が加わることで別の侵害刺激(テスト刺激)による痛みが抑制される現象は条件刺激性疼痛調整(conditioned pain modulation:CPM)と呼ばれる.CPMは下行性疼痛調整機能を反映する指標とされているが,そのメカニズムはいまだ不明な点が多い.今回,CPMのメカニズム解析の予備的研究として,テスト刺激に異なる周波数の電流刺激を用いてAβ,Aδ,C線維それぞれの閾値を測定することで,条件刺激による末梢神経応答の変化を神経線維種別に検討した.
【方法】対象は健常成人30名とした.条件刺激として,非利き側手部を6~8℃の冷水に30秒間浸漬した.テスト刺激として,2,000 Hz,250 Hz,5 Hzの周波数の電流刺激を用いてAβ,Aδ,C線維の電流閾値を条件刺激前および刺激中に測定した.
【結果】条件刺激前/中の各末梢神経の電流閾値はAβ線維1.28±0.52/1.41±0.51 mA,Aδ線維1.33±1.38/1.99±1.85 mA,C線維1.18±1.10/1.92±1.66 mAであり,条件刺激によってすべての神経線維で閾値が上昇した.
【考察】先行研究から,臨床的に意味のある電流閾値の変化量は0.5 mA程度とされており,Aβ線維では条件刺激によって閾値が増加したもののその変化量は小さく,生理学的な意味は乏しいと考える.一方,Aδ,C線維は変化量が十分かつ統計学的にも有意な変化を認めた.CPMでは条件刺激によって侵害刺激を伝えるAδ,C線維が選択的に抑制されることが示された.
F–5 口腔顔面痛患者におけるcentral sensitization inventoryの有用性の検討西須大徳*1 尾張慶子*1 牛田享宏*2 西原真理*2
*1愛知医科大学痛みセンター,*2愛知医科大学学際的痛みセンター
【目的】慢性疼痛では中枢感作が関与すると思われるケースも多い.そのなかでも口腔顔面領域の痛み(口腔顔面痛)は,三叉神経から情動性の痛み促通にかかわる腕傍核に直接投射していることが基礎研究で示されており,中枢性の影響を受けやすいことが推察される.したがって,臨床においては中枢神経機能の評価が重要視されている.中枢感作のスクリーニングはcentral sensitization inventory(CSI)の臨床的有用性が報告されているが口腔顔面痛における報告はほとんどない.したがって本研究では,口腔顔面痛患者のCSIを中心とした分析により,口腔顔面痛患者の特性を明らかにすることを目的とした.
【方法】愛知医科大学痛みセンターを受診した口腔顔面痛患者のうち,CSIを取得できた患者28名を後ろ向きに評価した.それらの患者情報より,痛みのnumerical rating scale(NRS),pain disability assessment scale(PDAS),hospital anxiety and depression scale(HADS),pain catastrophizing scale(PCS),pain self-efficacy questionnaire(PSEQ),athens insomnia scale(AIS),EuroQol 5 Dimension 5(EQ-5D)の質問紙結果を抽出し,CSIとの相関関係を分析した.また,機能的脳画像評価(fMRI)を実施した一部の患者においてはdefault mode network中心とした分析を併せて行った.
【結果】CSIとの単回帰分析では,PDAS,HADS,PCS,AIS,EQ-5Dに有意な相関関係がみられた.また,fMRIにおいても一定の傾向を示す結果であった.
【考察】CSIは種々の評価との関連が示されたことから,口腔顔面痛においてもCSIは有用であることが示唆された.