日本ペインクリニック学会誌
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原著
がん性疼痛治療におけるモルヒネくも膜下持続投与開始前後でのオピオイド総投与量の変化
岸本 佳矢岩本 奈穂子西出 和正篠村 徹太郎
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2023 年 30 巻 8 号 p. 189-193

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Abstract

目的:がん性疼痛において,オピオイド鎮痛薬の全身投与からくも膜下(IT)鎮痛に変更する前後のモルヒネ相当量を比較した.方法:2009年から2019年に当院でIT鎮痛を行った8例を後ろ向きに検討した.IT鎮痛開始直前のオピオイド一日投与量を経口モルヒネに換算し,投与量安定後のITモルヒネ一日投与量との比を求めた.結果:IT鎮痛は全例でモルヒネとブピバカインの混合液で行った.経口モルヒネ:ITモルヒネとし,ITモルヒネを1とした.結果は10:1,35:1,44.6:1,50:1,62.5:1,114.6:1,125:1,125:1だった.ITモルヒネの投与量が安定するまでの日数は2日から14日だった.ITモルヒネ投与量の安定後にモルヒネの減量が必要だった症例はなく,さらにモルヒネの増量を必要とする場合もあった.結論:モルヒネ必要量は個人差が大きい.経口モルヒネ:ITモルヒネの比は200:1または300:1と報告されているが,これらの換算比では十分な鎮痛が得られない可能性がある.患者それぞれを観察し個別に調整が必要となる.

Translated Abstract

Purpose: We reviewed our experience to see if the widely accepted ratio of oral to intrathecal morphine was appropriate. Methods: Eight patients who underwent intrathecal analgesia between 2009 and 2019 were retrospectively reviewed. The opioid dose before the start of intrathecal analgesia was converted to oral morphine. Results: Intrathecal analgesia was performed with morphine and bupivacaine. The ratio of oral:intrathecal was 10:1, 35:1, 44.6:1, 50:1, 62.5:1, 114.6:1, 125:1, 125:1. It took 2 to 14 days for the intrathecal morphine dose to stabilize. There were no cases that the morphine must reduce after stabilization, and there were cases that the morphine dose needed to be increased further. Conclusion: The ratio of oral to intrathecal morphine has been reported to be 200:1 or 300:1, however, this may not provide sufficient analgesia. Each patient needs to be adjusted individually.

I はじめに

がん性疼痛の症状緩和には基本的に薬物療法が行われ,その中でもオピオイド鎮痛薬の全身投与が主体となる.オピオイド鎮痛薬には,経口薬,坐薬,貼付薬,注射薬などの剤形があり,患者の状態や希望に添って投与経路を選択する.90%のがん性疼痛患者では,オピオイド鎮痛薬などの全身投与で痛みを軽減できるが,残り10%のがん性疼痛患者は通常の痛みの治療では痛みを軽減できないといわれている1,2).オピオイド鎮痛薬の全身投与で十分な鎮痛が得られないがん性疼痛患者には,くも膜下(IT)鎮痛が良い適応となる.IT鎮痛は,くも膜下腔にカテーテルを留置して,オピオイド鎮痛薬や局所麻酔薬などを持続的に投与することにより,有効な鎮痛効果を期待するものである.IT鎮痛で用いるオピオイド鎮痛薬はモルヒネが一般的である2).モルヒネをくも膜下腔に投与する場合,内服と比べて200倍から300倍の鎮痛効果があるとされているが2),これはあくまでも目安であり,実際に必要なモルヒネの投与量は,個人差があるものと推測される.本稿では,当院で行ったIT鎮痛において,モルヒネ換算オピオイド総投与量にどの程度の差があったのか,後ろ向きに検討する.

本研究は,大津赤十字病院倫理委員会の承認(承認番号659号)を得た.

II 対象と方法

当院で2009年から2019年に当院のペインクリニック外来に紹介され,ITカテーテルを留置し,皮下ポートを介して薬物を注入する皮下ポート法で,IT鎮痛を行った患者を対象とした.生命予後が1カ月以上見込める患者で,かつオピオイド鎮痛薬と鎮痛補助薬により十分疼痛緩和できない,またはオピオイドによる副作用がコントロールできない患者を適応として選択した2,3)

皮下ポート法は,ポーターカットII硬膜外ポートキットTM(スミスメディカル社)を使用した.皮下ポート法は全例で手術室で麻酔科医が行った.セファゾリンを予防投与してから,皮下ポート法を開始した.痛みの最も強い部位をデルマトームで確認し,ITカテーテルの先端を,その責任脊髄神経支配領域の近傍の高さに置くようにカテーテルを留置した.くも膜下腔にカテーテルを留置した後,X線透視でカテーテル先端位置を確認してから0.5%ブピバカインを投与して鎮痛効果を判定した.0.5%ブピバカインは症例によって7.5 mgから20 mgを投与した.その後,皮下にポケットを作成してポートを挿入した.最後に皮下ポートをヒューバー針で穿刺し,問題なく生理食塩水が注入できることを確認してから手術を終了した.IT鎮痛の携帯型精密輸液ポンプは,CADD-Legacy®PCA(スミスメディカル社)を用いた.

ITモルヒネの初期投与量は,IT鎮痛開始直前のオピオイド鎮痛薬の1日投与量と同程度もしくは少なくなるように設定した.オピオイドの換算比を,経口モルヒネ:フェンタニル貼付薬=100:1,経口モルヒネ:オキシコドン除放剤=3:2,経口モルヒネ:静注モルヒネ=2:1,経口モルヒネ:ヒドロモルフォン=5:1として計算した.ブピバカインの初期投与濃度は0.05%から0.1%になるように設定した2,3).しかし,使用した携帯型精密輸液ポンプの総充填量が100 mlだったため,ブピバカインの薬液を破棄せずに使い切るために,症例6のみブピバカインを0.04%から開始した.ITモルヒネは痛みの程度に合わせて,1日または2日ごとに増量していった.

皮下ポート法を行った8例の患者をカルテから抽出し,後ろ向きに検討した.IT鎮痛開始直前のオピオイド鎮痛薬の一日投与量を経口モルヒネに換算し,投与量が安定した時期のITモルヒネ一日投与量との比を求めた.患者の退院時もしくは転院時のモルヒネ投与量に達した日を安定した時期とした.IT鎮痛が安定した時期にもオピオイドの全身投与が行われていた症例においては,オピオイド総投与量から全身投与されていた投与量を減じた量を比較の対象とした.

III 結果

8例の患者は,年齢は43歳から80歳,男性4例,女性4例だった.原疾患は,乳がん,子宮頚がん,肺がん,膀胱がんだった.痛みの部位は,上肢や下肢,腰部や会陰部など症例ごとに異なった(表1).

表1 患者背景
  年齢 性別 原疾患 痛みの部位
症例1 59 女性 乳がん 両下肢
症例2 62 女性 子宮頚がん 両下肢
症例3 73 男性 肺がん 上腹部
症例4 65 男性 肺がん 両下肢,腰部
症例5 70 男性 膀胱がん 両下肢
症例6 80 男性 膀胱がん 会陰部
症例7 66 女性 肺がん 左腰部
症例8 43 女性 子宮頚がん 右側腹部,右大腿

IT鎮痛は全例でモルヒネとブピバカインの混合液で行った.経口モルヒネ:ITモルヒネとし,ITモルヒネを1とした.結果は10:1,35:1,44.6:1,50:1,62.5:1,114.6:1,125:1,125:1だった.ITモルヒネの投与量が安定するまでの日数は2日間から14日間だった.ITモルヒネ投与量の安定後にモルヒネの減量が必要だった症例はなく,さらにモルヒネの増量を必要とする場合もあった(表2).

表2 経口モルヒネとくも膜下モルヒネの比
  モルヒネ経口mg/日 モルヒネくも膜下mg/日 経口:くも膜下 安定時のブピバカイン濃度% 安定後も継続したオピオイド鎮痛薬
症例1 90 0.72 125:1 0.1 なし
症例2 60 6 10:1 0.05 あり
症例3 336 9.6 35:1 0.1 なし
症例4 180 2.88 62.5:1 0.1 なし
症例5 82.5 0.72 114.6:1 0.04 なし
症例6 21.42 0.48 44.6:1 0.04 なし
症例7 240 1.92 125:1 0.1 あり
症例8 240 4.8 50:1 0.1 なし

対象となった8例について,以下で詳細に述べる.

症例1:59歳,女性.身長152 cm,体重不明.乳がんの腰椎多発転移による両下肢痛を訴えていた.フェンタニル貼付薬0.9 mg/日,ケタミン20 mg/日,ガバペンチン400 mg/日,アセトアミノフェン1,500 mg/日を使用していたが,痛みのコントロールが不十分であり,眠気の副作用も強かったため,IT鎮痛を行うこととなった.ITカテーテル穿刺高位は第12胸椎/第1腰椎間,ITカテーテルの先端は第11胸椎として,ITカテーテルおよび皮下ポートを留置した.IT鎮痛の投与量が安定するまでに3日間を要した.安定時の投与薬液は,モルヒネ0.1 mg/ml,ブピバカイン0.1%となり,ITモルヒネは0.72 mg/日,ブピバカインは7.2 mg/日で鎮痛が得られた.フェンタニル貼付薬0.9 mg/日とケタミン20 mg/日は中止した.IT鎮痛開始6日後に患者は退院し,60日後に死亡した.

症例2:62歳,女性.身長162 cm,体重64 kg.子宮頚がんの腰椎多発転移による両下肢痛,膀胱直腸障害,左上肢の痛みと左上肢の運動障害,両下肢の運動障害を訴えていた.オキシコドン除放剤80 mg/日,フェンタニル貼付薬0.3 mg/日,プレガバリン225 mg/日,イミプラミン20 mg/日,メキシレチン300 mg/日,エトドラク600 mg/日を使用していたが,痛みのコントロールが不十分だったため,IT鎮痛を行うこととなった.ITカテーテル穿刺高位は第11胸椎/12胸椎間,ITカテーテルの先端は第3腰椎として,ITカテーテルおよび皮下ポートを留置した.IT鎮痛の投与量が安定するまでに12日間を要した.安定時の投与薬液は,モルヒネ0.5 mg/ml,ブピバカイン0.05%となり,ITモルヒネは6.0 mg/日,ブピバカインは6.0 mg/日で鎮痛が得られた.IT鎮痛開始前に使用していたオピオイド鎮痛薬のうち,フェンタニル貼付薬は中止ができたが,オキシコドン除放剤は60 mg/日に減量して併用が必要だった.IT鎮痛開始39日後に患者は転院し,56日後に死亡した.

症例3:73歳,男性.身長156 cm,体重52 kg.肺がんの多発骨転移と肝臓転移で上腹部痛を訴えていた.フェンタニル貼付薬2.4 mg/日,モルヒネ静注48 mg/日,プレガバリン150 mg/日,ロキソプロフェン180 mg/日を使用していたが,痛みのコントロールが不十分だったため,IT鎮痛を行うこととなった.ITカテーテル穿刺高位は第1腰椎/2腰椎間,ITカテーテルの先端は第10胸椎として,ITカテーテルおよび皮下ポートを留置した.IT鎮痛の投与量が安定するまでに10日間を要した.安定時の投与薬液は,モルヒネ1.0 mg/ml,ブピバカイン0.1%となり,ITモルヒネは9.6 mg/日,ブピバカインは9.6 mg/日で鎮痛が得られた.全身投与していたオピオイド鎮痛薬は中止となり,オピオイド鎮痛薬はレスキュー投与のみとなった.IT鎮痛開始68日後に患者は死亡退院となった.

症例4:65歳,男性.身長170 cm,体重62 kg.肺がんの仙骨転移による腰痛と両下肢痛を訴えていた.オキシコドン除放剤120 mg/日,プレガバリン450 mg/日,デュロキセチン20 mg/日,ナプロキセン300 mg/日を使用していたが,痛みのコントロールが不十分だったため,IT鎮痛を行うこととなった.ITカテーテル穿刺高位は第3腰椎/4腰椎間,ITカテーテルの先端は第11胸椎として,ITカテーテルおよび皮下ポートを留置した.IT鎮痛の投与量が安定するまでに4日間を要した.安定時の投与薬液は,モルヒネ0.3 mg/ml,ブピバカイン0.1%となり,ITモルヒネは2.88 mg/日,ブピバカインは9.6 mg/日で鎮痛が得られた.全身投与していたオピオイド鎮痛薬は中止となり,オピオイド鎮痛薬はレスキュー投与のみとなった.IT鎮痛開始22日後に患者は死亡した.

症例5:70歳,男性.身長170 cm,体重62 kg.膀胱がんの骨盤内リンパ節転移による腰神経叢圧迫による両下肢痛を訴えていた.オキシコドン除放剤55 mg/日,プレガバリン175 mg/日,デュロキセチン20 mg/日,エトドラク400 mg/日を使用していたが,痛みのコントロールが不十分だったため,IT鎮痛を行うこととなった.ITカテーテル穿刺高位は第12胸椎/第1腰椎間,ITカテーテルの先端は第2腰椎として,ITカテーテルおよび皮下ポートを留置した.IT鎮痛の投与量が安定するまでに14日間を要した.安定時の投与薬液は,モルヒネ0.1 mg/ml,ブピバカイン0.04%となり,ITモルヒネは0.72 mg/日,ブピバカインは2.88 mg/日で鎮痛が得られた.ブピバカインは0.1%で開始したが運動麻痺が出現したため濃度を下げていったところ,0.05%でも運動麻痺が残存したため,0.04%まで濃度を下げる必要があった.全身投与していたオピオイド鎮痛薬は中止となり,オピオイド鎮痛薬はレスキュー投与のみとなった.IT鎮痛開始31日後に患者は退院し,47日後に死亡した.

症例6:80歳,男性.身長156 cm,体重47 kg.膀胱がんの恥骨転移による会陰部痛を訴えていた.モルヒネ静注10.71 mg/日,ハロペリドール静注1 mg/日を使用していたが,痛みのコントロールが不十分だったため,IT鎮痛を行うこととなった.ITカテーテル穿刺高位は第4腰椎/5腰椎間,ITカテーテルの先端は第3腰椎として,ITカテーテルおよび皮下ポートを留置した.安定時の投与薬液は,モルヒネ0.1 mg/ml,ブピバカイン0.04%となり,IT鎮痛は,ITモルヒネは0.48 mg/日,ブピバカインは1.92 mg/日で鎮痛が得られた.モルヒネ静注は中止できた.IT鎮痛開始2日後に死亡した.

症例7:66歳,女性.身長155 cm,体重51 kg.肺がんの腰椎転移による左腰痛を訴えていた.オキシコドン徐放剤160 mg/日,フェンタニル貼付薬0.3 mg/日,ロキソプロフェン180 mg/日,プレガバリン150 mg/日,デュロキセチン20 mg/日を使用していたが,痛みのコントロールが不十分だったため,IT鎮痛を行うこととなった.ITカテーテル穿刺高位は第4腰椎/5腰椎間,ITカテーテルの先端は第10胸椎として,ITカテーテルおよび皮下ポートを留置した.IT鎮痛の投与量が安定するまでに7日間を要した.安定時の投与薬液は,モルヒネ0.2 mg/ml,ブピバカイン0.1%となり,IT鎮痛は,ITモルヒネは1.92 mg/日,ブピバカインは9.6 mg/日で鎮痛が得られた.オピオイド鎮痛薬は,オキシコドン徐放剤は20 mg/日に減量となり,フェンタニル貼付薬は中止できた.

症例8:43歳,女性.身長162 cm,体重55 kg.子宮頚がんの骨盤浸潤で右側腹部痛と右大腿痛を訴えていた.オキシコドン徐放剤80 mg/日,ヒドロモルフォン24 mg/日,アセトアミノフェン2,400 mg/日,プレガバリン300 mg/日,デュロキセチン20 mg/日を使用していたが,痛みのコントロールが不十分だったため,IT鎮痛を行うこととなった.ITカテーテル穿刺高位は第3腰椎/4腰椎間,ITカテーテルの先端は第12胸椎として,ITカテーテルおよび皮下ポートを留置した.IT鎮痛の投与量が安定するまでに12日間を要した.安定時の投与薬液は,モルヒネ0.5 mg/ml,ブピバカイン0.1%となり,IT鎮痛は,ITモルヒネは4.8 mg/日,ブピバカインは9.6 mg/日で鎮痛が得られた.全身投与していたオピオイド鎮痛薬は中止となり,オピオイド鎮痛薬はレスキュー投与のみとなった.IT鎮痛開始12日後に患者は退院し,134日後に死亡した.

IV 考察

IT鎮痛は,内服などの全身投与経路の鎮痛と比べると,強力な鎮痛効果を得られるために,必要となるオピオイド鎮痛薬を大幅に低減することができる.オピオイド鎮痛薬の全身投与量が減少するため,オピオイドによる副作用である眠気,吐気,便秘などの改善が期待できる4)

投与経路によるオピオイド鎮痛薬の鎮痛効果は,モルヒネ経口投与とモルヒネIT投与を比で表すと200:1または300:1といわれている.その上,IT鎮痛に局所麻酔薬を添加する場合は,オピオイド鎮痛薬はさらに減量できるといわれている1,5)

今回の8例の患者では,経口モルヒネとITモルヒネの比は10:1から125:1と非常に個人差が大きかった.症例2と症例7は,IT鎮痛安定時にもオピオイドの全身投与が行われていたため,この2例の経口モルヒネは,オピオイド総投与量からIT鎮痛安定時に全身投与されていた投与量を減じた量を比較の対象とした.

経口モルヒネとITモルヒネの比は200:1から300:1と報告されているが,計算どおりでは十分な鎮痛が得られない可能性がある.経口モルヒネとITモルヒネの比を100:1としてIT鎮痛を開始したところ,安全かつ良好な鎮痛が得られたという報告もある6,7).報告によっては,経口モルヒネとITモルヒネの比を12:1としているものもある8)

経口モルヒネとITモルヒネの比が理論どおりにならなかった理由として,次の2点が考えられる.1点目は,IT鎮痛では局所麻酔薬を併用しており,単純に経口モルヒネとITモルヒネの比を求められない.さらに,ブピバカインの濃度も0.04%から0.1%と症例ごとに異なり統一されていないため,経口モルヒネとITモルヒネの比の比較を困難にする要因となっている.2点目は,IT鎮痛を開始する直前の経口モルヒネの量が少なかった可能性がある.経口モルヒネが少なすぎる状態でIT鎮痛を開始したために,相対的にITモルヒネの投与量が多くなった可能性もある.これらの影響により,経口モルヒネとITモルヒネの比が200:1から300:1にならなかったのかもしれない.

以前からいわれている200:1から300:1という比をもとにしてIT鎮痛のオピオイドの初期投与量を計算すると,オピオイドの量が過少となり,十分な鎮痛が得られず,オピオイドの増量に時間がかかり,IT鎮痛が安定するまでに長時間を要する可能性がある.もちろん,オピオイドの副作用である鎮静や呼吸抑制には注意が必要であるが,患者それぞれを観察して個別に調整することが重要となる.

V 結論

今回の検討では,IT鎮痛安定時に必要なモルヒネの量は,10:1から125:1と非常に個人差が大きかった.経口モルヒネ:ITモルヒネの比は200:1または300:1と報告されているが,これらの換算比では十分な鎮痛が得られない可能性がある.患者それぞれを観察し,個別に調整が必要となる.

本論文の要旨は,日本ペインクリニック学会第56回大会(2022年7月,東京)において発表した.

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