日本ペインクリニック学会誌
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30 巻, 8 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
原著
  • 岸本 佳矢, 岩本 奈穂子, 西出 和正, 篠村 徹太郎
    原稿種別: 原著
    2023 年 30 巻 8 号 p. 189-193
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
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    目的:がん性疼痛において,オピオイド鎮痛薬の全身投与からくも膜下(IT)鎮痛に変更する前後のモルヒネ相当量を比較した.方法:2009年から2019年に当院でIT鎮痛を行った8例を後ろ向きに検討した.IT鎮痛開始直前のオピオイド一日投与量を経口モルヒネに換算し,投与量安定後のITモルヒネ一日投与量との比を求めた.結果:IT鎮痛は全例でモルヒネとブピバカインの混合液で行った.経口モルヒネ:ITモルヒネとし,ITモルヒネを1とした.結果は10:1,35:1,44.6:1,50:1,62.5:1,114.6:1,125:1,125:1だった.ITモルヒネの投与量が安定するまでの日数は2日から14日だった.ITモルヒネ投与量の安定後にモルヒネの減量が必要だった症例はなく,さらにモルヒネの増量を必要とする場合もあった.結論:モルヒネ必要量は個人差が大きい.経口モルヒネ:ITモルヒネの比は200:1または300:1と報告されているが,これらの換算比では十分な鎮痛が得られない可能性がある.患者それぞれを観察し個別に調整が必要となる.

症例
  • 平澤 由理, 岡田 寿郎, 富田 梨華子, 福井 秀公, 内野 博之, 大瀬戸 清茂
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 8 号 p. 194-197
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
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    Ramsay Hunt症候群を合併した三叉神経領域の帯状疱疹関連痛に対し,ガッセル神経節にパルス高周波法(pulsed radiofrequency:PRF)を施行し改善し得たので報告する.症例は51歳の男性,1カ月前より皮疹を伴う右頬部,下顎,頚部の痛みおよび右内耳の違和感・痛みを自覚し,近医で三叉神経領域の帯状疱疹と診断された.発症初期より右顔面神経麻痺と味覚障害がありRamsay Hunt症候群の合併の診断で,前医入院にてステロイド投与,末梢神経ブロック,内服治療が開始されたが,同部位の痛み,顔面神経麻痺および味覚障害が残存したため当院ペインセンターに紹介となった.超音波ガイド下に浅頚神経叢ブロックとオトガイ神経ブロックを施行したところ,痛みは半減したものの残存し,右内耳の違和感・痛みと味覚障害も持続したため,1週間後に透視下でガッセル神経節にPRFを施行した.施行後,痛みは消失し右頬部に軽度の痺れを残すのみとなり,顔面神経障害による症状も良好な経過をたどった.顔面の複数の神経支配領域に症状が及ぶ帯状疱疹関連痛において,内服治療や末梢神経ブロックで症状改善に難渋する場合には,早期のガッセル神経節ブロックが有効と考えられた.

  • 梅田 絢子, 田口 志麻, 仁井内 浩, 池尻 佑美, 中村 隆治, 堤 保夫
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 8 号 p. 198-202
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
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    CRPS患者が静脈路確保で新規にCRPSを発症し,治療介入に時間を要した.本症例を契機にCRPS患者に対する侵襲的医療行為時の対応策を検討したため報告する.29歳女性,左上肢のCRPS type IIに対して当科外来に通院していた.左上肢のCRPS発症後も,気管支喘息治療目的で右手背に静脈路確保を行うことが複数回あった.当科初診から3年後,喘息重責発作が出現したため,ステロイド投与目的で右手背に静脈路確保を行った.その際,穿刺部に強い痛みを訴え,改善しないため8日目に当科紹介となった.右手全体に浮腫とアロディニアを伴う痛みがあり,静脈路確保12日目にCRPSと診断,治療を開始した.専門家の介入が遅れた主因は,医療従事者間のCRPSの認識の低さと考えられた.そこで対応策として,当科受診中のCRPS患者は,電子診療録上に侵襲的医療行為を行う際の注意点を掲示し,院内情報共有体制を構築した.

  • 佐藤 史弥, 高雄 由美子, 石本 大輔, 橋本 和磨, 助永 憲比古, 廣瀬 宗孝
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 8 号 p. 203-206
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
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    こむら返りは腓腹筋に多くみられ,ほとんどは一時的なものだが,再発を繰り返す場合もあり,しばしば治療に難渋する.近年,深腓骨神経内側枝ブロックが有効であるとの報告が散見する.ペインクリニック外来では,こむら返りを併発する患者が多いため,当科でも深腓骨神経内側枝ブロックを治療に取り入れている.このたび,こむら返りに対して深腓骨神経内側枝ブロックを行った症例を4例報告する.痙攣を生じた筋肉の部位は3例が腓腹筋であり,1例は前脛骨筋であった.効果持続時間はおおむね2週間以上保てており,いずれも有用であった.深腓骨神経内側枝ブロックの機序ははっきり分かっていないが,低侵襲で簡便,かつ合併症もほとんどないことから,こむら返りに対する治療の選択肢であると思われる.

  • Kotaro HAMADA, Kuniaki MORIWAKI, Takafumi HORISHITA
    原稿種別: Clinical Report
    2023 年 30 巻 8 号 p. 207-211
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
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    Most of the population has been vaccinated against severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2). Here we describe the case of a 17-years-old girl who developed breakthrough pain in the left forearm following SARS-CoV-2 vaccination and was diagnosed with complex regional pain syndrome (CRPS) type II. The patient received several treatments including brachial plexus block, stellate ganglion block, xenon light irradiation, and Japanese Kampo medicine. At 22 weeks after the vaccination, the patient achieved a visual analog scale score of 0 for both pain at rest and breakthrough pain, illustrating the efficacy of the combined treatment for CRPS type II.

  • 丸山 智之, 小川 舜也, 山﨑 亮典, 栗山 俊之, 水本 一弘, 川股 知之
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 8 号 p. 212-214
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
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    脊髄刺激療法(spinal cord stimulation:SCS)は,難治性の神経障害性疼痛や虚血痛の鎮痛に対して有効であるが,下肢筋痙攣に有効であったという報告は見当たらない.今回,脊椎手術後の痛みと下肢筋痙攣に対してSCSが有効であった症例を経験したので報告する.症例は46歳,女性.脊柱管狭窄症による腰下肢痛に対して腰椎後方除圧術と後方固定術を施行したが,痛みは軽快せず,有痛性の下肢筋痙攣も出現した.投薬に加えて硬膜外ブロックや神経根ブロックを行うことで,一時的に下肢痛と下肢筋痙攣が軽減したため,症状緩和目的にSCSを施行した.施行後より,下肢痛が軽減するとともに筋痙攣も消失し,長期間の症状改善が得られた.

  • 佐藤 玲子, 加藤 利奈, 草間 宣好, 加古 英介, 杉浦 健之, 祖父江 和哉
    原稿種別: 症例
    2023 年 30 巻 8 号 p. 215-219
    発行日: 2023/08/25
    公開日: 2023/08/25
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    三叉神経痛をきたす疾患の一つに占拠性病変などによる二次性三叉神経痛がある.今回,三叉神経第1枝(V1)領域の痛みの原因として副鼻腔腫瘍性病変の眼窩内浸潤を疑い手術を行ったが症状は改善せず,最終的に特発性眼窩炎症と診断した症例を経験した.症例は65歳の男性.4カ月前に右上眼瞼から頭頂部に痛みが出現し,2週間前より疼痛悪化とともに右眼痛と複視とを伴発した.近医でのステロイド点眼治療により眼痛は消失したが,顔面痛と複視は継続し,当院いたみセンターを受診した.CT画像で右篩骨洞から眼窩内に骨破壊を伴う占拠性病変があり,悪性疾患が否定できないため腫瘍摘出術を施行した.病理診断では異型細胞や肉芽腫,真菌の所見はなく,炎症性細胞の浸潤がみられた.術後は,副鼻腔炎として抗菌薬治療を行ったが,顔面痛と複視が再燃した.このため特発性眼窩炎症を疑い,プレドニゾロンの内服を開始したところ,これらの症状はともに改善した.特発性眼窩炎症は眼窩部に生じる非特異的炎症性疾患であるが,まれに副鼻腔への浸潤をきたすことが報告されており,鑑別疾患として考慮する必要がある.

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