2024 年 31 巻 9 号 p. 189-194
【目的】慢性疼痛と性格特性に関する報告は少ない.性格特性を簡便に把握する方法としてエゴグラムがある.今回は慢性一次性疼痛患者と慢性二次性疼痛患者で性格特性に差異を認めるか,エゴグラムを用いて検討した.【方法】対象患者は2021年3月から2023年3月に当院ペインクリニック外来を受診した20~79歳の患者102名である.初診時にTokyo University Egogram Ver.3(TEG 3)を用いて評価を行った.ICD-11に準じて患者を慢性一次性疼痛および慢性二次性疼痛に分類し,各自我状態に関して統計解析を行った.非疼痛性疾患3例,TEG 3で妥当性なしと判断された患者3例,疼痛持続期間が3カ月未満の患者1例を除外した.【結果】自我状態に関しては,単変量解析,多変量解析ともに慢性一次性疼痛群でfree child(FC)が有意に低値であるという結果が得られた.【結論】慢性一次性疼痛患者に対しては,FCを高める介入として,患者が自分の思いを率直に意見できるような医師–患者関係を構築し,報酬系の強化や日常のストレス発散に役立つ娯楽や趣味を楽しめるように援助することが,痛みの治療として有用である可能性がある.