抄録
抗がん剤による末梢神経障害は,手足のしびれや痛みを伴い,著しい場合は手足が使いづらく日常生活動作に影響を及ぼすが,決定的な効果をもつ治療法がないのが現状である.今回われわれは,抗がん剤治療後に発症した手足のしびれを訴える9名に対し漢方薬や頭皮鍼治療を用い,そのうち7名に改善を認めた.改善しなかった2名は,しびれの原因となる化学療法を再開または継続していた.今回の症例では血虚証や血証と判断される場合が多く,補血剤や駆血剤が有効であった.また附子の追加や頭皮鍼治療が奏効する症例は,過去の研究などから推察して,中枢神経系への神経障害痛に対する効果によるものと思われた.抗がん剤による末梢神経障害に対しては,補血剤や駆血剤の使用に加えて附子内服や頭皮鍼治療など神経感作に影響を与える手段を用いることで,治療効果が高まる可能性がある.