日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌
Online ISSN : 2434-2254
Print ISSN : 1343-8441
原著
生体計測による食品のテクスチャー評価
櫻井 英樹西垣 壽人池田 三知男堀 一浩小野 高裕
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2018 年 22 巻 3 号 p. 193-204

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抄録

【目的】生体計測は,ヒトを対象として,咀嚼・嚥下運動を直接数値化することが可能な手法である.本研究では,生体計測の手法を用いて,介護現場で用いられるさまざまな食品のテクスチャーの特徴を客観的な数値データとして把握することを目的とした.【方法】被験者は健常有歯顎者を対象とした.水分含量が多く,舌で潰せる程度のかたさと考えられる食品として,市販品および手作り調製品計28品についてそれぞれ10 gの試料を提供し,舌圧(口蓋部に舌圧センサシートを貼付して測定),嚥下音(咽喉マイクを装着して測定)を解析した.舌圧測定では,食塊形成中においても複数回の嚥下を許可した.嚥下音測定では,全量を1回で嚥下するよう指示した.舌圧は,咀嚼(押し潰し)と嚥下に分けて解析した.このうち,9品については,別途官能評価を実施し,生体計測結果との相関性を確認した.【結果・考察】官能評価を実施した9品においては,その官能評価結果と,各生体計測のうち,嚥下音,咀嚼(押し潰し)時の舌圧,嚥下時の舌圧との相関が確認された.これらの3解析項目によってクラスター分析を行うと,その分類結果がそれぞれ各食品の特徴をよく表しており,「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」にも一部対応がみられた.また,3成分の主成分分析を行い,第1主成分と第2主成分にて2次元マッピングすると,それぞれのプロット位置が各食品の特徴をよく表していた.この生体計測とデータ解析により,各種食品のテクスチャーを,ヒトの咀嚼・嚥下運動をもとにした客観的なデータから把握することができた.

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© 2018 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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