抄録
メサドンは2013年に臨床使用が開始されたオピオイド鎮痛薬で,他のオピオイド鎮痛薬で十分な痛みの緩和が得られないがん性痛に対して使用される.大量のオピオイド鎮痛薬が必要であった難治性のがん性痛患者において,メサドンに切り替えることで痛みが緩和され,副次的に薬剤費が大幅に軽減できた症例を報告する.症例は55歳,女性.1997年から乳がんの診断にて手術,化学療法,放射線治療などの治療を受けていた.2004年から皮膚転移部の痛みが強くなり,経口モルヒネ720 mg/日,フェンタニル貼付剤200 µg/hなどを使用したにもかかわらず,痛みの軽減は不十分であった.2013年よりオピオイド鎮痛薬をメサドンへ段階的に切り替えた結果,6カ月後にメサドン120 mg/日とフェンタニル貼付剤100 µg/hにて良好な痛み緩和が得られるようになった.その結果,1カ月あたりのオピオイド鎮痛薬に関する費用は約62万円から約24万円に削減することができた.メサドンは大量のオピオイドを要する患者において,痛みの改善と薬剤費軽減の両面で有用と思われた.