抄録
2006年1月から2008年12月までの3年間に, 東京歯科大学千葉病院歯科麻酔科外来に来院した認知症患者を対象とし, 診療録および麻酔記録をもとに患者背景, 行動調整法, 使用薬物の種類と量, 歯科処置内容などについて調査した。その結果, 総患者数19名, 総症例数101例のうち診察を除いた88症例に対して, 静脈内鎮静法50例, 全身麻酔法1例が行われていた。静脈内鎮静法下の治療内容は, 抜歯, 消炎手術, 根管治療, 歯石除去などであった。鎮静法使用薬物の種類と総投与量は, ミダゾラム (M)単独例 (19例) では1.8±0.8 mg, Mとプロポフォール (P) 併用例 (14例) では1.8±0.7 mgおよび51.2±22.7 mg, P単独例 (17例) では173.1±47.6 mgであった。全身麻酔症例はPによる全静脈麻酔下に抜歯4本と充填処置14本が行われていた。当科では, 侵襲的な歯科治療時には静脈内鎮静法が多く行われていた。Mの使用量は, 過去の当院における高齢者に対する使用量に近かった。全身麻酔法は非協力性の強い患者に対して, 多数歯う蝕の一括治療のために選択されていた。静脈内鎮静法, 全身麻酔法ともに術中, 術後に大きな偶発症の発生はみられなかった。口腔清掃や摂食嚥下訓練は, 歯科麻酔科医の監視下に継続して行われていた。