論文ID: 19-0032
心臓ペースメーカ(PM)移植後では,脊髄刺激療法(SCS)による誤作動が懸念される.今回,PM移植後の患者で安静時疼痛を伴う閉塞性動脈硬化症に対して,安全性に留意してSCSを実施し,疼痛緩和が得られた症例を経験したので報告する.症例は70歳代の女性で,下肢動脈狭窄に対し7回の血行再建術を施行するも痛みが続くためSCSを希望された.初診時の両下肢痛は安静時NRSで7/10であった.PM移植後であり,SCSによる誤作動がないことを確認する必要があった.PMをVVIモードでオールペーシングとし,刺激電極の位置,刺激強度,刺激周波数,PMの感度を調整しながら,機器間の相互作用がないことを確認した後,刺激を開始した.下肢痛は徐々に改善したが,PMの誤作動は確認されなかった.電極留置後7日目に刺激装置を植込み,11日目に自宅退院とした.退院時の下肢痛は,NRSで4/10まで低下した.PMとSCSの機器相互作用の要因として,脊髄刺激の位置,強度,周波数やPMの感度,モノポーラーなどがあげられる.パラメーターを調整しながら注意深く刺激電極を留置することで,PM留置後でもSCSが実施可能であった.