抄録
脊髄電気刺激 (spinal cord stimulation: SCS) による疼痛治療は, 硬膜外ブロックや薬物療法等が無効な failed back surgery syndrome や complex regional pain syndrome (CRPS) に対して行われる. 脊椎手術後患者に対する電極留置は, 硬膜外腔癒着のため困難が予想される. 頸椎後方除圧術後の上肢CRPS type Iに対して頸椎レベルにSCS電極を経皮的に留置でき, 良好な終痛緩和が得られた症例を報告する, 症例は64歳, 男性. 第4・5頸髄髄内病変と頸椎脊柱管狭窄に対し第3-6頸椎椎弓形成術を施行後に, 左上肢痔痛とアロディニアが増強し, 硫酸モルヒネ内服でもコントロールできないため, 当院麻酔科を受診し, CRPS type Iと診断した. 薬物療法や神経ブロック療法等が無効であったため, SCSを施行したところアロディニアはただちに改善され, 硫酸モルヒネも漸減できた. また, 長期的効果も認められた. 頸椎手術後の上肢CRPS type Iに対し, 他の治療に反応が乏しい場合, 脊髄刺激電極留置は治療法の一つとして選択できると考える.