抄録
目的: 術後硬膜外鎮痛法による片側性知覚異常や筋力低下を主とした可逆的神経系合併症の発生頻度, 機序ならびに患者の受容度を検討する. 方法: 平成12年4月~9月の半年間に当院で, 手術のため硬膜外麻酔ならびに術後硬膜外鎮痛を受けた患者896名 (腰部482名, 胸部414名) を対象に, 術翌朝回診時, 腰部から下肢にかけての片側性知覚異常, 筋力低下の有無を調査した記録を解析した. 結果: 片側性下肢知覚異常を訴えたのは37名 (4.1%) で, うち4名は同側の膝立て困難等の筋力低下を合併していた. 硬膜外刺入部位は腰部34名, 胸部3名で, 手術別では産婦人科が29名と最も多かった. カテーテル抜去後, 1名で症状消失に12時間以上必要とした以外, 36名では抜去後3時間以内に消失していた. また症状の可逆性や本鎮痛法の利点を説明したうえでも, カテーテル抜去を希望した患者は37名のうち7名 (19%) であった. 結論: 本合併症はいずれもカテーテル留置に関連していた. 永久的神経損傷の危険性との鑑別に加え, 患者の不快感と不安への十分な配慮が必要である.