日本ペインクリニック学会誌
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神経ブロック療法中に硬膜外膿瘍・椎間板炎を発症した症例
池田 東美明鈴木 尚志野本 功一吉田 達也世良田 和幸
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2004 年 11 巻 1 号 p. 12-15

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抄録

星状神経節ブロック (以下, SGB) の合併症のひとつに硬膜外膿瘍があるが, 慢性的な経過をたどり重篤な後遺症を残す危険がある. 今回, 感染経路としてSGBが疑われ, 頸部と腰部の硬膜外膿瘍, 脳膿瘍さらに髄膜炎にまで発展した症例を経験した. 症例は63歳, 男性, 事故により右示指の挫滅外傷後切断術となり, 術後痛とともにアロディニア症状が生じた. 近医でカウザルギーと診断されSGBを開始し, 連日施行したが, 治療中に後頸部痛, 発熱, 右前腕橈側のしびれ感が出現したため当院へ紹介された. その間に腰椎椎間板ヘルニアに対して腰部硬膜外ブロックを47回受けている. 入院後MRIを施行したところ頸部と腰部の硬膜外膿瘍が発見された. 髄液検査でキサントクロミーも認められ髄膜炎と診断された. 入院して抗生物質の点滴投与とMRIによる膿瘍の経過観察を行い, 最終的には手術を行わずに保存療法で神経症状が改善した. SGB療法中に硬膜外膿瘍, 脳膿瘍さらに髄膜炎までに発展する危険があることを念頭に, 感染に気をつけてブロックを行うことの必要性を改めて痛感した.

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