日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
Print ISSN : 1340-4903
ISSN-L : 1340-4903
硬膜外ブロック後, 広範囲硬膜外膿瘍をきたした1症例
田澤 史恵塚越 裕中村 京一高橋 幸雄後藤 文夫
著者情報
ジャーナル フリー

2004 年 11 巻 4 号 p. 457-459

詳細
抄録

一回注入法での硬膜外ブロックにより広範囲の硬膜外膿瘍を形成した症例を経験した. 症例は54歳女性. 頸椎椎間板ヘルニアと一過性脳虚血発作の既往があり, 塩酸チクロピジンを内服していた, 平成14年夏, L4の腰椎すべり症による腰痛の治療目的で近医整形外科にて硬膜外ブロックを受けた. 3回目のブロックの2時間後に頸部痛, その夜に歩行困難, 翌朝には起立不能となり当院救急外来を受診した. MRIでC2-L4の硬膜外膿瘍と診断され, 緊急手術を受けた. その後, つかまり立ちができるまでに回復した. 本症例では, 硬膜外ブロック施行後に神経症状が出現したこと, 血液と硬膜外組織培養において皮膚常在菌である黄色ブドウ球菌が検出されたことから, 硬膜外穿刺に伴う感染が強く疑われた. 局所の感染巣がその後のブロックにより拡大したか, あるいは皮下膿瘍が血行性に拡大し, 広範の膿瘍が形成された可能性が考えられる. 塩酸チクロピジンによる血液凝固障害で形成された血腫が感染を助長した可能性もあり, 抗血小板薬の使用中の患者では硬膜外ブロックの適応には慎重であるべきである. また, 一回注入法でも皮膚消毒には十分な注意が必要である.

著者関連情報
© 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
前の記事 次の記事
feedback
Top