日本ペインクリニック学会誌
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有効率比較における統計学的検出力と必要症例数について
矢船 明史
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1997 年 4 巻 1 号 p. 31-37

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抄録
ペインクリニックの分野では, 2種類の薬剤あるいは処置の有効率を比較する場合, 実際に得られた有効率の差が, ある有意水準のもとで統計学的に有意であるか否かを検討する. このようなアプローチにおいては, 有意水準に加えて, 統計学的検出力および必要症例数に関しても考慮しない限り, 有効率を適切に比較することはできないが, ほとんどの臨床報告では, 検出力や必要症例数についてはまったく考慮されていない. 本論文では, 薬剤を含めたなんらかの2種類の処置の有効率の比較における, 検出力および必要症例数の推定方法を示すとともに, 実際の臨床報告例に関して, 検出力および必要症例数についての検討を行なった. その結果, 各処置に割り当てられる症例数が必要症例数に比べてかなり不足している場合には, 検出力もきわめて低くなるため, 各処置の有効率の差を統計学的有意差として検出できず, 症例数が必要症例数を上回る場合には, 同じ程度の有効率の差を統計学的有意差として検出できることが示された. 今回の結果は, 2種類の処置の有効率を比較する場合, 有意水準のみならず, 検出力および必要症例数に関する考慮も必要であることを具体的に示すものである.
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© 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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