1998 年 5 巻 4 号 p. 495-497
脊髄の硬膜動静脈奇形による腰痛および両下肢痛をきたした1症例を報告する. 患者は53歳の男性で, 腰痛, 両下肢痛を伴う間欠性跛行, 排尿障害のため当院整形外科に入院した. 整形外科にて, Th7~Th8を中心とした硬膜動静脈奇形と診断し, 動静脈奇形に対して人工塞栓術を施行, 動静脈奇形は消失した. いったん腰痛, 両下肢痛も徐々に軽快していたものの, 術10日後に激しい下肢痛が再発したため, 当科に紹介された. 仙骨麻酔を施行する一方で内服治療を行ない, 症状の軽減を得た. 脊髄の硬膜動静脈奇形はまれな疾患であるが, 難治性の腰痛および下肢痛をみた際には疑ってみる必要があり, また塞栓術後も神経ブロックや内服治療を要することを考慮すべきと考えられた.