日本ペインクリニック学会誌
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難治性突発性難聴に対するウログラフィン®の効果の検討
大森 英哉小林 巌高橋 広巳金井 直樹岩崎 寛並木 昭義
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1998 年 5 巻 4 号 p. 491-494

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抄録

陰イオン性血管造影剤である amidotrizoate (商品名ウログラフィン) は厚生省特定疾患突発性難聴調査研究班の治療効果検討の対象薬に採用されている. 今回重症難治性症例にウログラフィン療法を追加し, その有効性について検討した. 対象・方法: 平成7年から2年間で当院耳鼻咽喉科にて突発性難聴と診断され入院治療し約1週間のステロイド剤, 低分子デキストラン, ビタミン剤, 代謝改善剤の薬物療法に加え星状神経節ブロック, 高圧酸素療法でも自覚症状の改善が少なかった23例 (男:女=10:13), 平均年齢51.6歳 (14~91歳)とした. ウログラフィン®は患者の同意を得たのちに60%ウログラフィン®20mlを連日退院時まで静注した. なお, 前記治療は継続した. ウログラフィン®の治療効果は初診時とウログラフィン®静注前, 退院時で純音聴力検査の聴力改善度および耳鳴, めまい, 耳閉感の自覚症状の改善度によって比較判定した. 結果: 聴力改善度はウログラフィン療法前で軽度回復6例, 不変17例であったがウログラフィン療法後では全治1例, 著明回復4例, 軽度回復8例, 不変10例と有意な改善を認めた. 耳鳴, 聴こえの自覚症状もウログラフィン療法前で不変が8例であったがウログラフィン療法後は不変1例のみの有意な改善を認めた. なお, ウログラフィン®による副作用は1例もみられなかった. 結語: 難治性突発性難聴に対してウログラフィン療法の有効性が示唆された.

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