日本ペインクリニック学会誌
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慢性痛の機序
横田 敏勝
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2001 年 8 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

急性痛を遷延させて慢性痛への移行を促進する因子の一つとして神経成長因子 (NGF) が考えられている. NGFは炎症部位で産生され, 侵害受容線維を直接過敏化する. また侵害受容線維終末部細胞膜の TrkA と結合してこの線維のなかに取り込まれ, 後根神経節に運ばれて細胞体の遺伝子発現を変化させる. この機序によりバニロイド受容体1, TTX抵抗性Na+チャネル, 脳由来神経栄養因子 (BDNF), カルシトニン遺伝子関連ペプチド (CGRP), P物質などの遺伝子の発現が上昇する. BDNFは侵害受容線維の脊髄内終末部から放出されて, 脊髄後角侵害受容ニューロンを過敏化する. これらの結果, 痛みが強まり慢性痛に移行しやすくなる. 帯状疱疹後神経痛 (PHN) では, 定常な痛み, 発作性の痛み, アロディニアがある. これらのメカニズムとしては (1) 求心路遮断, (2) 残存したC侵害受容線維の異常興奮, (3) 脊髄内シナプス結合の変化が考えられる. 求心路遮断を主とする症例と, C侵害受容線維の異常興奮を主とする症例とがあると考えて, 対応すべきであろう. 触刺激によるアロディニアは, windup の現象を示す. この現象がみられたら, 急性帯状疱疹がPHNに移行したと考えて対応すべきであろう.

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