日本ペインクリニック学会誌
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片側顔面痙攣に対するボツリヌス毒素治療
高宮 清之
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2001 年 8 巻 2 号 p. 59-63

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抄録

片側顔面痙攣 (hemifacial spasm) は顔面神経支配筋の発作的, 反復的な収縮であり, 顔面神経根部が脳底血管に接触・圧迫され, 顔面神経が異所性に興奮して生じると考えられている. ボツリヌスA型毒素治療は本症に対してきわめて有効かつ安全性も高く, 本邦では2000年1月に保険承認された. 投与対象筋は眼輪筋, 皺眉筋, 大頬骨筋, 小頬骨筋, 笑筋, 口輪筋, オトガイ筋, 広頸筋などであり, 1投与部位当たりおおよそ2.5~5単位の毒素を筋注するが, 眼輪筋には26Gツベルクリン針を用いて皮内注の要領で分割投与を行うと副作用が少ない. ボツリヌスA型毒素は神経筋接合部の末梢神経終末に取り込まれ, アセチルコリン放出を阻害し, 筋の麻痺を起こすが, おもな作用は傷害された神経末端の求心性の脱神経であり, 近傍の神経分枝による麻痺筋の再支配が起こるまでの3~5カ月間効果が持続する. 効果減弱後, 反復投与を行う. 本治療の有効率は90%以上である. 副作用はほとんどが一過性のものであるが, 閉瞼不全による乾燥性角結膜炎には注意が必要である. ボツリヌス毒素治療は他のジストニアや種々の病態に対しても有用であり, 今後の臨床的検討が望まれる.

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