日本ペインクリニック学会誌
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脊髄電気刺激療法が有効であった有痛性感覚脱失症の1例
諏訪 英行花北 順哉塩川 和彦斉木 雅章織田 雅梶原 基弘
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2002 年 9 巻 4 号 p. 438-442

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抄録

三叉神経痛の治療として半月神経節ブロックは有用であるが, まれに有痛性感覚脱失症となることがある. このような例に対し脊髄電気刺激が有効であったので報告する. 症例は48歳の女性. 2年前に左三叉神経痛に対し, 無水グリセロールによる半月神経節ブロックを行ったところ有痛性感覚脱失症となった. 以後鎮痛薬投与, 星状神経節ブロックなどを行ったが効果は不十分であった. 1998年8月上位頸髄レベルにPISCES Quad®硬膜外カテーテル電極を留置した. 試験刺激開始直後に左眼裂の開大, 口腔内のこわばり感が消失した. 永久植え込み術後, 左顔面の不快な疼痛は軽減し, 鎮痛剤も減量しており, 高い満足度が得られている. 髄液中の神経伝達物質を術前後に測定しているが, ノルエピネフリン, グリシンなどの抑制系の神経伝達物質の変動がみられることから後側索などの下行性抑制路の活性化による可能性が考えられた. 上位頸部脊髄電気刺激は治療困難な有痛性感覚脱失症例に試みるべき治療法と考えられた.

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