精密機械
Print ISSN : 0374-3543
すくい角の切削温度に及ぼす影響について
切削熱の影響(その8)
山本 明
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1955 年 21 巻 249 号 p. 467-472

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抄録

すくい角を減ずるとき,刃先温度の高くなることはよく知られているが,さらに切削温度の理論計算を行うことによつて,すくい角の変化がどのように切削の場における熱状態に影響を与えるかを調べた。
まず,一般的に切削の状態がすくい角α,勢断角φで表わされることに注目して,仮定されたφのもとでαの切削温度に対する影響を考え,ついでこの計算で一定とおいた加工常数C,剪断応力Ss変化の影響についても考えた。勿論これらは切削実験によつてφが与えられたとき,その切削温度を推定するのに利用出来る。
つぎに,αを変化した実験結果に基いて切削温度を計算した。この結果によれば,αを減少すると次のようになる。
1.切削仕事量即ち発熱量は増加し,このうち勇断仕事によるものが大部分を占めるようになる。
2.剪断面温度θsは高くなるが,切取厚さt1を増加すると大きく減少する。
3.刃先温度θtは高く速度に対する増加率も大きくなる。またt1の影響は小さくなる。
4.工具,加工物とくに後者への流入熱は大きく,加工物の温度上昇も大ききい。
5.結局,負すくい角は良い特長をもつが熱的にはすぐれない。しかし切取厚さをましても悪い方へは余り影響しないから,その特長と相挨つて〓切削には有利となる。

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© 社団法人 精密工学会
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