精密機械
Print ISSN : 0374-3543
プレス機械の国産化について
柳内 善治郎
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1959 年 25 巻 299 号 p. 525-531

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抄録

プレス機械国産化の問題点を種々述べたが,これを総括するならば,問題点はわが国のプレス機械進歩(意識的発展)の歴史の浅いこと,従つて経験,資料の少いことに基因していると言える.
これの解決策としては,先づメーカの強化が挙げられる.メーカは単にプレス機械だけを作るのでなく,プレス加工をマスターして,型の製作はもとより,より能率的な作業法(新しい装置,設備による),新しい加工法等を開発できる位の力を持たなくてはならない.これらのことに対しては,ユ一ザ側の協力がもちろん必要であるが,加工の面においてもメーカ側がリーダシップをとる力を持つことが必要である.現在のメーカはこの点で極めて弱体であると言わざるを得ない.ユーザからの設備の相談を受けた場合,メーカは最適の加工法,最適の設備の提示を自信をもつて行うことができることと,生産に必要な一切の設備を提供できる能力を持つことが必要である.
わが国プレスメーカの技術水準がここ数年間に急激な向上を見せていることを初めに書いたが,現在の実力は外国で完成されている機械の再現,またはそれと類似の形式で同性能の機械の製作を,僅かの関係資料(場合にょつてはアイディアだけ)で遂行できるというところである.世界のプレス界に対して,独創的なものの発表とか,主導権をとるとかいう点になるとまだまだである.このため国産化を追うという発展過程にあるのであるが,こうした状態からできるだけ早く脱却して,世界プレス界のリーダの一員となりたいものである.それには世界の一流メーカがそうであるように,技術開発の強い力を持たなくてはならない.上に述べたメーカの強化と関連して,メーカが技術開発の力を持つことの緊急な必要が痛感される次第である.

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